shinsotsu-risyoku-kaizen1厚生労働省の調査では入社後3年以内に辞めてしまう社員の離職率は、全体の30%以上という結果が出ています。新卒社員を採用しても、働く側と雇う側の認識にズレが生じていると、人材の定着率は低くなりがちです。採用や教育にかけたコストが失われるだけでなく、円滑な事業運営にも支障が生じる恐れがあります。

この記事では、新卒社員の離職理由を探るとともに、定着率を高めるための改善策を解説します。

新卒社員の離職率の高さと企業に与える影響

新卒社員の離職率の高さと企業に与える影響

新卒社員の離職状況は、厚生労働省の統計などから明らかになっています。まずは、新卒社員を取り巻く状況を正しく把握して、人事が抱える問題を理解することが大切です。

●新卒社員の30%以上が早期離職

離職率とは、特定の期間において退職した人の割合を示す指標です。企業によって入社後1年目や3年目など、目的に合わせてさまざまな期間で算出します。

厚生労働省の定義によれば、「常用労働者数に対する離職者の割合」のことを指し、1月1日現在において在籍している社員数と離職者数を用いて次の式に当てはめて計算します。

「離職率=離職者数÷常用労働者数(1月1日現在)×100」

辞めていく社員の数が多ければ、離職率は高まります。人材不足は企業の競争力の低下を引き起こし、何も対策をしないままでいると、ますます人材が流出する悪循環に陥る恐れがあるので注意が必要です。

厚生労働省が令和2年10月に公表している「新規学卒就職者の離職状況(平成29年3月卒業者の状況)」によれば、平成29年における新規大卒就職者の3年以内の離職率は32.8%となっています。また、平成29年以前も離職率は30%前後で推移しており、継続して高い水準にあります。

●業種によって離職率は異なる

離職率は業種によって傾向に違いがあります。電気や水道など比較的業績が安定しているインフラ関連では離職率が低い傾向ですが、宿泊業・飲食業・教育・医療・福祉・小売業などでは離職率が高い傾向が見られます。

業種によって離職率は異なるため、自社の離職率と業界の平均を比較して離職者が多いのか少ないのか確認することができます。

●大学新卒と高校新卒の離職率の違い

先述の「新規学卒就職者の離職状況(平成29年3月卒業者の状況)」によれば、平成29年卒における大学新卒の入社3年以内の離職率は32.8%、高校新卒は39.5%となっています。

大学新卒よりも高校新卒のほうが離職率は高い傾向があり、入社1年目の離職率を比べても、高校新卒のほうが高い傾向にあります。

 

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離職率の高い会社が受けるデメリット

離職率の高い会社が受けるデメリット

離職率の高さは、企業活動に少なからず影響を及ぼします。ここでは、どのような悪影響があるのかを解説します。

●余分なコストがかかってしまう

企業は新卒社員を採用するまでに、求人広告の出稿や面接、内定後の研修など多くのコストを負担しています。そのため、せっかく採用した人材が早期に辞めてしまうと、企業にとってはマイナスになってしまう面もあります。

また、新たな人材を採用するために追加のコストも発生してしまいます。人材が定着しやすい環境を整えることが、結果的に余分なコストの負担を減らすことにつながるので、企業側には人材の定着率を高める取り組みが求められます。

●ほかの社員のモチベーション低下につながる

一緒に働いてきた仲間が離職してしまうと、残されたメンバーのモチベーションが低下してしまう恐れがあります。前向きな離職の場合でも、仕事の引継ぎや精神面のためにもメンバーとはきちんと話をしておくほうが無難です。

また、企業側にとっては離職率を下げるために労働環境を改善するなどの対応策を取らないまま放置していると、大量離職を招いてしまうリスクも抱えてしまいます。

●新たな人材を確保しづらくなってしまう

離職率が高い企業というイメージが定着すると、新たな人材を確保しづらくなります。

たとえば採用活動に悪影響が出てしまう原因として、離職した社員がインターネットを通じて、企業への不満を情報発信することがあげられます。また、SNSや口コミサイトなどで、企業のマイナスな部分を書き込んでしまうケースもあるので注意が必要です。

事情を知らないユーザーが書き込まれた内容を閲覧すると、誤解が生じやすくなります。思いがけないところで企業のイメージ低下を招き、採用活動に支障が出てしまう懸念もあるのです。

企業に対して何らかの不満を抱えたまま離職に至ると、ネガティブな情報発信につながる恐れがあります。社員がやむを得ない事情で離職する場合でも、きちんとコミュニケーションを取り、円満な形で離職できる環境を整えましょう。

新卒社員が離職を考えるおもな理由

新卒社員が離職を考えるおもな理由

仕事を辞める理由は人それぞれですが、新卒社員が離職する理由には一定の傾向が見られます。

ここでは、新卒社員が離職するがおもな理由をご紹介します。

●1. 職場の人間関係や社風になじめない

上司や先輩社員とうまくコミュニケーションが取れない状態では、人間関係に対するストレスを感じやすいものです。また、同期の社員が少ない場合も、仕事の悩みを思うように相談できず、新卒社員は孤立感を抱きやすくなります。

さらに、入社前にイメージしていた職場の雰囲気と異なり、思うようになじめないといった点もストレスを感じてしまう理由としてあげられます。

●2. 人材育成に力を入れていない

新卒社員は当然ながら社会人としての経験が浅いため、仕事に不慣れで不安を抱えやすい状態にあります。そのため、社内に新卒社員を育成するプログラムが整っていないと、思うようにスキルを高められないといった悩みにつながることも。

加えて、現場主義を重視する社風の場合、先輩社員の教え方によって新卒社員同士の能力開発にバラつきが出てくるなど、離職を誘発しがちです。

●3. 業務量が多い・労働時間が長い

仕事に不慣れな新卒社員に過剰な業務量を割り当てると、モチベーションの低下につながります。人手不足だからといって、新卒社員にいきなり現場を任せても、ストレスやプレッシャーを与えてしまうだけです。

また、仕事とプライベートのバランスがとりづらい、労働時間が長すぎる、などのマイナス面がある場合、「もっと働きやすい職場に転職したい」と考えたくなるかもしれません。

●4. 相談できる上司や同僚がいない

会社に入ったばかりの新卒社員は、仕事に関する悩みを抱えがちです。しかし、仕事の悩みを相談できる場が与えられていないとひとりで思い詰めてしまい、早期離職につながる恐れがあります。

●5. 仕事がつまらない

入社前にイメージしていた仕事内容と実際の業務に大きなギャップがあると、仕事に対してやりがいを見出しづらいものです。また、いくら新卒社員だからといって誰にでもできるような仕事ばかりを任せてしまっても、モチベーションの低下を招く原因となります。

意欲のある新卒社員ほど、自分の能力を発揮する機会を与えられないと不満が溜まりやすいという点をおさえておきましょう。

●6. 与えられた業務が自分に合っていない

業務の向き・不向きは誰にでもあります。自分の適性とあまりにかけ離れた業務を任せられると達成感を抱きにくいものです。

業務のミスマッチが起こらないように、人員配置に気を配る必要があります。

●7. 会社や事業の将来性に期待が持てない

新卒社員は長く働き続けることを前提としているため、会社や事業の将来性に期待が持てなければ、早期離職につながりやすくなります。

会社や事業の現状について認識のズレが起こらないように、採用面接時やその後の研修などを通じてきちんと擦り合わせを行うことが大切です。

●8. ノルマや成果の達成に厳しい

新卒社員は自分で完結できる仕事が少ない状態なので、与えられているノルマや成果が過大なものであれば、プレッシャーを感じやすくなります。

単にノルマ管理を行うだけでは人材育成につながらないので注意が必要です。

●9. 労働条件に対する不満

給与が低かったり、休みが思うように取れなかったりすると不満が溜まりやすくなります。限界を超えてしまえば早期離職にもつながるものです。

労働条件に対する不満が生じないように、採用面接時にきちんと伝えておくことが重要です。

●10. キャリアアップのため

キャリアアップを図るために離職するという理由は、一見してポジティブに思えるものの、裏を返せば自社ではキャリアアップが望めないということでもあります。

長く勤めてもキャリアを高められないと感じれば、離職につながりやすくなります。

新卒社員の定着率を高めるための改善策

新卒社員の定着率を高めるための改善策

新卒社員の離職率を下げるためには、離職につながりやすいポイントをおさえたうえで、継続的な取り組みが必要です。どのような改善策があるのかをご紹介します。

●1. 採用のミスマッチを防ぐ

人材確保に熱心な企業ほど、自社の良い部分ばかりを強調してしまいがちですが、採用時には就業条件などについてもきちんと説明しておきましょう。実際に新卒社員が働き始めてからのミスマッチを防ぐために重要です。

企業にとって都合の悪い情報もあえてオープンにすることで、誠実に向き合ってみましょう。

●2. 離職のサインをキャッチする

会社に対して多少の不満があったとしても、社員はすぐに離職するわけではありません。新卒社員が発している危険信号をきちんとキャッチすることで、離職防止につなげることができます。

何でも質問しやすい雰囲気をつくり、上司や先輩社員のほうから積極的にコミュニケーションを図りましょう。また、定期的な面談やミーティングを行い、新卒社員が自分の意見を言うことができる機会をつくることも大切です。その機会を設け、業務の不満やキャリアプランの悩みなど、率直な相談がキャッチアップできるようにしましょう。

そして、部署内で相談しづらい内容に対しては、人事部などに相談窓口を設けましょう。新卒社員が仕事上の悩みを溜め込むことなく、気になったことを何でも発言できるような環境を整えることを心がけてみてください。

●3. メンター制度を設ける

新卒社員は社会人経験が浅いことから、仕事に不慣れであり、単独では業務課題を解決しづらいものです。仕事の悩みを誰に相談すればいいのかわからない状態や、どこにも相談できない状態では、ストレスを抱え込んでしまいます。

そういった問題の解決策として、先輩社員や別の部署の管理職にメンターになってもらう仕組みをつくるという方法があります。直属の上司とは違い客観的なアドバイスを受け取る機会ができるので、新人教育につなげていけるはずです。

社員とメンター、上司を交えた意見交換の場を設ければ、多角的な視点からスキルアップを図ることもできます。はじめから大きな目標を掲げるのではなく、本人のスキルや適性と照らし合わせたうえで、達成すべき課題を設定することが重要です。

●4. 働き方や待遇面を見直す

労働条件に対する不満を解消するためには、企業側から積極的に社員に対してアプローチをしていく必要があります。過剰な業務負担や残業の多さなどは早期離職の原因となるので注意しなければなりません。

属する業界において給与面や休みの取りやすさなどが適正な水準を保っているかを定期的に見直してみましょう。社員の働きに対して、公平な評価を下すことで不満の解消につながるはずです。

また、仕事とプライベートの両立できるよう、テレワークや裁量労働制、短時間勤務の導入など、多様な働き方を提示してみましょう。

育児や介護など、社員のライフプランに変化が生じても、さまざまな働き方を提示おくことが大切です。やむを得ない事情で離職してしまうことを可能なかぎり防ぎ、離職をせずに働き続けられる方法を見出すことにもつながります。

福利厚生を充実させるためには、カフェテリアプランの導入を検討してみるのも一つの手です。企業側があらかじめ利用可能な福利厚生のメニューを提示する仕組みなので、社員の好みに合わせて自由に選択ができ、満足度を高めることにつながります。

新卒社員が抱えている課題を洗い出してきちんと解決しよう

大卒の新卒社員が3年以内に離職してしまう割合は30%を超えており、どの企業にとっても新卒社員をどのように定着させるかは大きな課題です。

定着率を高めるために有効な施策を講じるには、社員の離職理由を踏まえることが肝心です。特に新卒社員は上司や先輩社員に相談しづらいところがあるため、率直な意見を伝えられる場を設けておく必要があります。

しかし、社員にとっては転職で新たなチャンスをつかむこともあります。最終的には、その社員にとって何が最善なのか一緒に考え、選ぶ道を尊重することも大切なことです。そのためにも、事前に社員の悩みや不満をキャッチするのが肝要です。

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