カテゴリー: 人材科学

近年様々な場面で耳にする機会が増えた「AI」という言葉。少し前までフィクションの世界の概念でしたが、最近ではAIで業務を自動化するサービスが増えてきています。このような流れは、企業の「ヒト」に関わる情報を取り扱う人事領域も例外ではありません。

今回は人事領域のAI活用について、AI自体の歴史や実際に提供されているサービスの事例、そして、AI活用の今後のあり方について、まとめていきます。

AIの人事への応用

①AI進化の歴史

まずは近年目覚ましい進歩を遂げているAIの進化の歴史を辿っていきたいと思います。一般的に、AIは次の3つのフェーズを経て進化してきたといわれています。


▼第1フェーズ/1950年~1960年代
▼第2フェーズ/1980年代
▼第3フェーズ/2000年代から現在

それぞれのフェーズでAIができるようになったことや、AIの発展によってもたらされた恩恵について見ていきましょう。


●第1フェーズ/1950年~1960年代

第1フェーズが訪れた時、社会には「コンピュータを使って行うのは計算が中心」という認識がありました。そのようななか、探索や推論といった知的活動ができるAI(人工知能)が開発されたのです。
また、初の人工対話システムが開発されたのもこの時期で、AI誕生とともに注目を集めます。さらに同時期にはアメリカで自然言語処理ができる翻訳機能も発展しました。しかしこの時点では、実用性は薄く、は大きなムーブメントにはなりませんでした。
※「AI(Artificial Intelligence)」という言葉が初めて定義されたのは1956年にアメリカ・ダートマスで開催されたダートマス会議だといわれています。


●第2フェーズ/1980年代

第2フェーズでは、コンピュータの進化に伴い、情報処理能力を持つAIが生まれました。この時期のAIは、専門分野に特化し、情報を扱うことができるエキスパートシステムという位置づけで、実用性を持ち始めます。 しかし当時は、コンピュータが自ら情報を集めることはできませんでした。企業や個人へのコンピュータの普及が進む一方でインターネット網が未だ発展途上だったためです。


そのため、AIが情報を処理するために必要なベースとなる情報や知識は、人の手によってインプットしていました。ハードウェアの性能にも限界があった時代です。導入コスト・維持コストもかさみ、1990年代になると再び下火になっていきます。


●第3フェーズ/2000年代から

現在 第3フェーズは2000年代に起こり、今なお発展中の段階です。第3フェーズにおいてAIが大きな進化を遂げた背景には、ビッグデータの活用があります。ビッグデータによって、AIは自ら知識を収集・集積する機械学習機能を備えたのです。
さらに近年はAIが自ら学習能力を深め、精度を高めるディープラーニングが登場し、AI活用の領域を広げました。ハードウェア・ソフトウェアの性能が飛躍的に向上したことや、コスト面のハードルが下がったことも発展の要因です。
今回の第3フェーズはこれまでの段階とは異なり、一過性のものではなく、社会を支える技術として、定着するのではないかという見方が強くなっています。今後もさらなる発展によって、多くの分野でイノベーションを起こすことでしょう。


▼AIの歴史についての詳しい情報は下記をご覧ください。

総務省 人工知能(AI)研究の歴史http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h28/html/nc142120.html

 

パルスサーベイによって人事課題の可視化を実現!
社員のコンディション発見ツール「Geppo(ゲッポウ)」をお役立てください

Geppoの紹介ページを見る


②人事領域において、いち早くAIが活用された分野

2000年以降、ビッグデータ活用によって飛躍的に多くの情報を収集できるようになったAI。その後はパターン分析や機械翻訳など、「蓄積した情報を使った処理」ができるようになりました。


やがてディープラーニングをはじめとする機械学習機能を備えたAIは次第に各専門領域に特化した発展を遂げます。「人事×AI」という領域においては2013年頃から具体的なサービスが世の中に出始めました。


その際にいち早く有用性が認められたのは、採用活動や人材配置の分野でした。


●活躍人材像をトレースし、AIが人を判断する

採用や人材配置の分野でAI活用が進んだのは、正解を判断しやすい側面があったからです。具体的には、今社内で活躍している社員の人物像や客観的スコアをAIに学習させ、その人材像に近い人物を探させるという方法でした。


これにより人事担当者は活躍する可能性の高い応募者の接点を増やすことができ、社内の人材配置を検討する際に、信頼性の高いデータを得ることができたのです。
このような、正解を見定め、トレースするという手法は人事領域におけるAI活用の1つの成功パターンとなりました。


③実際に人事領域でAIを活用しているIBMの事例

近年、採用や人事配置にとどまらず、AI活用は人事領域の各分野へ広まりを見せています。IBMのAI活用を参考にし、それぞれの分野でAIが果たす機能を見ていきましょう。

 

●評価

報酬に関する適切な意思決定を行うには、成果やスキルの市場価値、社内での需要などをかけ合わせ評価する必要があります。IBMではこのような膨大なデータの処理にAIを活用しています。
人間では処理しきれない量の情報を取り扱うAIは、社内だけでなく、米国労働省労働統計局からの外部データまでも人材評価に用いています。これにより社会全体における市場価値という判断基準を、自社の評価制度に組み込んだのでした。


●教育

従業員の成長を促す際、1人1人にあった学習機会を提供することは重要です。しかし、組織が大きくなればなるほど、個人に合った教材とのマッチングを計ることは時間と手間がかかるものになります。
このような課題を解決するためにIBMではAIを活用しています。個々の従業員の職務や所属部署、現在のスキルレベルなど、個人の履歴に合わせてパーソナライズされた学習 コンテンツをAIが選定し、推奨しているのです。


●キャリアコーチング

IBMにはWatson Career Coach(WCC)と呼ばれるAIアシスタントがいます。IBMで働く従業員はWCCによって、対話によるキャリアコーチングを受けることが可能です。
WCCは自然言語を利用して、従業員に質疑応答を行い、その内容と従業員の履歴情報とを統合することで、対話相手を理解していきます。そのうえで、各従業員に適した職務を推薦し、パフォーマンス向上を支援するのです。


▼IBMの人事領域におけるAI活用についての詳しい情報は下記をご覧ください。

人事における AI のビジネス・ケース(IBM® Smarter Workforce Institute) https://www.ibm.com/downloads/cas/ROLPKAJW_


④これからのAI活用の形 -個人の能力を引き出し、組織成果を高める-

AIの発展とともに、しばしば「人事の仕事はなくなるか」という議論が行われますが、必ずしもそうとはいえません。上記のIBMの事例から読み取れるのは、AIが得意とするのは多くの情報を取り扱う業務が中心だということです。


確かにAIを導入すれば、人事の業務負担は軽減されます。それはこれまで処理するのに物理的に多くの時間がかかっていた業務をAIに代行させられるからです。では、手が空いた人事はなにをするのでしょうか。
それはAIにはできない、イチからなにかを企画し、組み立てるような仕事です。これまで雑務に追われてなかなか時間をかけられなかった仕事に、よりじっくり取り組めるようになります。


人事はAIだけに頼り切るのではなく、AIを活用することで時間を作り、その時間でより質の高い仕事をすればいいのです。AIを導入することによって、人は人にしかできない仕事に集中できる環境を得られるでしょう。


●個人のデータ分析にとどまらないサイバーエージェントの試み

様々な先進的な取り組みで知られるサイバーエージェントは、2015年1月に「人材科学センター」を設置しました。同センターで行われているのは、AIを活用することで個人の能力を引き出し、組織成果を高める試みです。


同センターが発足する前、サイバーエージェントには採用活動や人事異動が「感覚的」という課題があったといいます。同センターではまず、そのような状況を打開すべく人材データを一元管理し、「科学的」な判断を可能にしました。


一方でサイバーエージェントは、個人をデータにもとづいて分析すること自体が目的なのではないといいます。同社がデータを用いる目的は、個人の能力を引き出し、組織成果を高めることにあるとしています。


また、同社には「本人の意思」を尊重する文化がある点も特徴です。1人1人の意思を引き出すため、データ分析に加えて、従業員のコンディション変化発見ツール「GEPPO」なども活用し、各メンバーの活躍を支援しています。


▼サイバーエージェント人材センターの試みについての詳しい情報は下記をご覧ください。 「血の通った科学」を人事に。サイバーエージェント・人材科学センターの試みとは? https://seleck.cc/746


⑤まとめ

私たちの生活を豊かにしてくれる技術革新。近年その最先端で著しい進化を遂げているAIは、決して私たちから仕事を奪うものではありません。人事はAIとうまく付き合っていくことで、これまで以上に創造的な仕事に取り組めるはずです。


AI活用を検討する機会があれば、日々の業務を補助してくれる頼もしい存在として、導入を検討してみてください。うまくAIを活用できれば、生産性が向上することはもちろん、人にしかできない仕事に関わるやりがいを感じる機会が増えていくでしょう。


<参考文献> 日本の人事部/AI
https://jinjibu.jp/keyword/detl/1076/

人事システムにおける人工知能(AI)の活用
https://it-trend.jp/hr_payroll_system/article/use_of_ai

人事部は、AIによって消滅するか?
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/1907/02/news024.html

ダートマス会議開催50周年記念
http://www.dartmouth.edu/~ai50/homepage.html

「AIは脅威」は間違い、人事部で広がるデータ活用(2017年)
http://diamond.jp/articles/-/131396

 

Geppo製品イメージ

パルスサーベイによって人事課題の可視化を実現!
社員のコンディション発見ツール「Geppo(ゲッポウ)」をお役立てください

Geppoの紹介ページを見る

関連記事

BUY On HUBSPOT