様々な業界で人手不足と採用難が叫ばれる昨今。多くの企業が良い人材を採用するためにいろいろなアクションを起こしています。そのなかで近年注目されているのが、「リファラル採用」です。この記事ではリファラル採用が何なのか、どんな組織に向いているのかを説明します。
採用手法としてのメリットや注意点、さらにはリファラル採用実施企業の導入事例も紹介。これからリファラル採用にチャレンジしたいと考えている方や、現状の採用手法の効果に満足できていないという企業に、ぜひ参考にしてみてください。
①リファラル採用とは
リファラル採用とは、社員から紹介があった人材を選考・採用する手法のことです。これまで「縁故採用」や「コネ入社」といった言い方をされることが多かった社員紹介ですが、最近では「リファラル採用」という表現で、よりポジティブに捉えられるケースが増えてきています。
リファラル採用が注目されているのは、「入社後に活躍する可能性が高い人材の確保」という側面です。採用難の時代において、「その企業に馴染んで活躍している社員の知り合いは、活躍人材の可能性が高い」という認識が持たれ始めています。
②リファラル採用が注目される理由と成功の秘訣
リファラル採用のメリットと成功させるポイントは何なのでしょうか。それぞれに解説していきたいと思います。
●リファラル採用が注目される理由
リファラル採用が多くの企業に注目されているのは、求人媒体や人材紹介といった従来の採用手法よりも、様々なメリットがあるからです。具体的には下記のようなものが一例としてあげられます。
<リファラル採用のメリット>
・現在の活躍人材と志向性の近い人材と出会える
→冒頭でも説明しましたが、「社内で活躍している人の知り合い=同じ志向性を抱いている人」と想定できます。また、社内の活躍人材から自社の良いところや風土についての話を聞いている可能性が高いので、入社後組織に馴染みやすいというメリットもあります。
・採用コストをおさえられる
→求人媒体や人材紹介を使うことなく、優秀な人材と出会えるチャンスを得ることができます。社員からの紹介で採用に至った場合、基本的に採用単価はゼロになりますので、採用コストをおさえることができるでしょう。この点は大手企業にとっても少人数の企業にとっても大きなメリットになるはずです。
・転職潜在層との接点
→リファラル採用では「今すぐ転職を考えているわけではない」という人材とも接点を持つことができ、コミュニケーションをとっていく過程で、自社の魅力付けをすることができます。転職市場の表面には出てこない潜在層とも接点を持つことができるため、可能性の幅が広がります。
●成功の秘訣
一方で、リファラル採用を成功させるにはいくつかの注意点もあります。実際に運用する際には下記のようなポイントを意識しましょう。
<リファラル採用の注意点>
・フラットな目線での評価が難しい
→社員からの紹介ということで、先入観を持って求職者を見てしまう恐れがあります。期待をかけるあまり厳しい評価をしてしまうことや、一方紹介者と同等の能力を持っていると思い込んでしまう場合もあります。紹介とはいえ、選考時にはフラットな目で判断する意識が必要です。
・不採用時、紹介してくれた社員への配慮が必要
→社内のメンバーから紹介された求職者を不採用にする場合、もともと自社で活躍していた社員のメンツを傷つけてしまいかねません。結果として、活躍人材のモチベーション低下を招いてしまう恐れもあるため、採用できないとなった際にはアナウンスや説明の方法に注意が求められます。
・人事以外のメンバーの協力が不可欠
→リファラル採用において、入社希望者との最初の窓口となるのは、各部署の社員です。人事だけでなく、すべての職種の社員が自社の成長に寄与する意識を持っていることが求められます。リファラル採用を推進する企業では、自社に対する満足度を示す「eNPS」が重要視される傾向があります。
③リファラル採用を成功させるにはeNPSが重要
eNPSとは、「Employee Net Promoter Score」の略で、組織に対する従業員のロイヤルティを示す数値です。従業員が自社に対して抱いている満足度を図るリサーチ方法の1種で、「就職・転職を希望している友人に自社への入社を推奨するか」という質問への回答を数値化します。
この質問の答えは、その組織でリファラル採用がうまく機能するかという分析に使えるデータになります。そのため、リファラル採用を成功はeNPSとリンクしているといえます。
言い方を変えれば、もし現段階でeNPSの計測をしていて、数値が高まってきていることを実感しているなら、リファラル採用にチャレンジしやすい状況が整っているといえるでしょう。
また、リファラル採用のためにeNPSの計測を始めることは、組織にとってもデメリットはありません。eNPSの把握は、従業員への理解を深めることに繋がります。そして、そのリサーチに様々な役割を持たせるという意味では、eNPSだけでなく、総合的に従業員のコンディションを把握できるツールを利用することがオススメです。
●eNPSの計測に効果を発揮するGeppo
<出典>
https://www.geppo.jp/
一例として、eNPSの計測も可能な従業員のコンディション変化発見ツールに「Geppo」があります。Geppoなら、従業員のコンディションやモチベーションの推移を明らかにしつつ、eNPSの把握もできるため、様々な場面で役立つことでしょう。
④導入事例
このような特徴を持つリファラル採用ですが、実際にどのような企業がこの手法を取り入れているのでしょうか。企業の投入事例に注目し、その有効性を見ていきたいと思います。
●サイバーエージェントの場合
半年間で400名もの候補者をリファラル採用によって集めるサイバーエージェント。同社のリファラル採用は社内での認知促進を行うところからはじまりました。社内でリファラル採用を根付かせるために、メール・ポスター・チラシ・社内報・デジタルサイネージなど、あらゆるツールを駆使したといいます。
その後、一定数の社員紹介を確保できるようになってからは、人材のマッチングに注力するフェーズにうつりました。社内でオープンになっているポジションが300をこえるという同社。社員が見て、周囲の友人に声をかけやすい情報に整理にすることを意識し、リファラル採用の浸透を図りました。
さらに「面接ではなくカジュアルな面談」、「人事が会いに行く出張面談」、「リファラル専任担当による対応」など、様々な取り組みを推進した結果、同社にはリファラル採用という採用手法が馴染んでいったのでした。
現在では半年で400名という大きなボリュームとなったサイバーエージェントのリファラル採用候補者。近年の就職市況から考えると、この母集団を形成できたことは大きな成果といえるでしょう。
<出典>
サイバーエージェントが教える中途採用領域のリファラル採用で押さえるべき成功ポイント #1/2
https://logmi.jp/business/articles/310753
●その他の企業事例
・メルカリ
リファラル採用による従業員数が約6割といわれるメルカリは、社内の交流イベントを社外に開放。広く自社のことを知ってもらい、仲間に加わってもらう工夫をしています。同社は自社でリファラル採用が浸透していることを「ビジョンや理念の浸透を通じて、自社のことが好きな社員が多く活躍している」からと考えています。
・freee
2015年に入社した社員の約半数がリファラル採用だったという同社。特徴的なのは社員に対して無料で支給している晩御飯の弁当を社員の友人にも支給する制度や、リファラル採用決定時に紹介者に対して限定Tシャツを配布している点。求職者と紹介者、双方に負担のない形で接点を持とうとしています。
・カヤック
リファラル採用率は約52%と、半数以上が社員を通じて入社しているという企業です。同社の場合、社員を「ぜんいん人事部」として、新しい人材を組織に引き込むことを社員全員がおもしろがって取り組んでいるといいます。採用において、様々な独自の取り組みを展開する同社らしいやり方だといえるでしょう。
・ピクスタ
もとは人材紹介を中心に採用活動を行っていた同社。組織が大きく成長していく過程で、社外からの紹介に限界を感じ、リファラル採用にシフトしていきました。結果的に開始から2年でリファラル採用率は40%を突破。同時に会社が好きな社員が多くいることを知るきっかけになったといいます。
⑤まとめ
近年多くの企業が注目し、取り入れ始めているリファラル採用。低コストで優秀な人材を採用できるというメリットに加え、多くの企業が採用活動を通じて「社内に会社を好きな社員が数多くいる」という気づきを得ています。これは他の採用手法ではなかなか得ることのできない価値なのではないでしょうか。
今後、まだまだ採用難の時代は続きます。そのような状況のなかで、すでに活躍している社員の会社に対する思いや貢献意欲を知ることは、定着・活躍の観点から見ても重要だといえるでしょう。リファラル採用はただ人を採用するということ以上に得られるものがあるといえるはずです。
リファラル採用について興味があるなら、いち早くスタートし、時間をかけて社内に根付かせていくことが大切です。まずは社内に対して「リファラル採用を積極的に行う」という認識を浸透させていくことからはじめてみてはいかがでしょうか。