企業が多くの案件を引き受け、事業を成長させていくためには、優秀な人材を数多く採用しなければなりません。しかし、採用難の時代において、必要な人材を必要なタイミングで確保するのは困難です。
そこで今回は、人材不足対策や業務効率化に有効な外部人材の活用方法について、まとめていきたいと思います。特に注目したいのはアウトソーシングについてです。自社組織において人材不足が課題になっているなら、業務を切り分け、外注することを検討してみてください。
①多くの企業が抱える採用難の悩み
多くの企業にとって、社内の人材を常にベストな状態に保っておくことは簡単なことではありません。特に求職者が有利な現在の市況は、働き手に新たなステップを踏み出す勇気と、多くの企業を見比べる余裕を与えます。
結果として、企業は「社員が流出しやすい」、「人材の採用ができない」という問題に直面しています。また、企業が優秀な人材を採用しようとする場合には、採用力(企業の認知度、規模感、魅力的な待遇といった労働条件)が必要です。
企業がどんなに人材を求めていても、求職者にとって魅力的な環境や条件がなければ、人材を組織に引き入れることはできません。
事業を成長させることに精一杯で、なかなか新たな人材を採用できず、気づけば既存メンバーだけでは業務に対応しきれなくなってきたという事態も起こりえます。そして、業務量と人材採用に課題を抱える企業に検討してほしいのが、社外の人材の力を活用するアウトソーシングという方法です。
②社内ではなく、外部の人材に仕事を任せる方法
アウトソーシングとは、ある仕事に関わる一連のタスクを切り取って外部に委託するものです。アウトソーシングサービスを運営する企業に依頼することで、その企業が持つ専門チームに特定業務の対応や管理を任せることができます。
日々の人事業務に目を向けてみると、たとえば採用代行サービスについて、検討・導入した経験があるという企業も多いのではないでしょうか。採用媒体への出向、書類選考、電話・メールでの応募者対応、面接設定・実施、入社までのフォローなど、人材採用には様々な手間がかかります。
そのため、社内に十分な人事メンバーがいない場合、採用フロー自体を外注することで人事の負担を軽減しているという企業も少なくありません。人事系のアウトソーシングサービスはRPO(Recruitment Process Outsourcing)と呼ばれ、各種利用プランが用意されています。
「書類選考までは外部/面接実施から内部」もしくは「応募から最終面接設定までは外部/最終選考実施のみ内部」など、社内の人員数や対応が必要な求職者数に合わせてアレンジできるのが、アウトソーシングの魅力です。
●業務改善の方法としても有効
また、アウトソーシングにはただ足りない人材を補う目的だけではなく、社内のメンバーが時間をかけるべき業務に集中できる環境を作るという効果もあります。そのため、時には人材が豊富な企業においても有効活用できます。
大手企業など、人材を数多く抱えた企業では、人件費の肥大化が発生しがちです。高い給与を支払っている優秀な社員が細々とした業務に時間をとられ、生産性が低くなっているという組織課題があるなら、時間がかかる業務だけを切り取って外部人材に任せるのも1つの方法です。
たとえば、給与計算や社会保険関係の業務は、社員数が多くなればなるほど対応するために人手が必要となる仕事です。基本的な処理に時間がかかることに加えて、1桁の数字も間違えられない工程に対応するため、ダブルチェック体制を敷いている企業もあるでしょう。
こういった業務が他の業務を圧迫しているなら、外部への依頼が効率的です。月末や年度末だけ業務過多が発生し、社内体制の見直しや新たな評価制度の構築といった長期的なプロジェクトがその都度ストップしてしまうという課題を抱えている場合は、アウトソーシングの活用を検討してください。
●アウトソーシングを活用するメリット
不足人員を補えるという点や業務の効率化の他にも、アウトソーシングにはメリットがあります。
・ノウハウを必要としない品質向上
アウトソーシングでは経験や知識が豊富な外部の専門部隊に業務を依頼できます。そのため、社内にノウハウがない状態でもすぐに業務の品質向上を図ることが可能です。既存サービスにおいて、クレームが多発した際や、運用方法を見直したいという時にも活用できるでしょう。
・人材を育成する必要がない
外部人材が業務全体を巻き取ってくれるため、社内で専任担当を育成する必要はありません。新たな事業を展開する際に、社内に対応できる人材がいない場合はその業務自体が社内にない状態にできます。近い業務の対応実績があるアウトソーシング先を選べば、安心して任せられるでしょう。
・残業時間削減(人的コスト削減)
近年社会で騒がれている残業時間に関する問題も、アウトソーシングで解決できることの1つです。社員1人が100項目の単純作業に取り組むには膨大な時間がかかりますが、100名体制のアウトソーシング先に業務を任せれば、担当していた社員の負担も完了までの時間も劇的に軽減されます。
●アウトソーシングのデメリット
一方で、便利なアウトソーシングにもデメリットはあります。具体的には次のようなものが想定されます。
・業務受け渡しにともなう情報漏洩リスク
業務を外部に委託する際、業務に必要な情報を外部組織に渡すことになります。情報漏洩が発生しないように、アウトソーシング先のセキュリティ体制を確認するとともに、本当に必要な情報以外は開示しないという意識が大切です。
・自社内で人材が育たない
外部に切り出した業務に関するノウハウは、アウトソーシング先に蓄積されることになります。結果として、該当業務を組織内で対応していくための人材が育たないというリスクがあります。一時的にアウトソーシングを活用するのか、長期的に任せるのか、業務ごとに精査する必要があります。
●その他の外部人材活用方法との違い
外部人材を活用する方法として、アウトソーシングの他にも人材派遣や業務委託などがあげられます。それぞれの特徴はどういったものなのでしょうか。
・人材派遣の特徴
人材派遣は派遣会社を通じて、人員を組織に加えるものです。派遣会社との業務契約のもと利用するサービスなので、直接雇用契約を結ぶことなく労働力を確保できるというメリットがあります。しかし、1人あたりの人件費が発生するため、人数が多くなるとコストが割高になる恐れがあります。
・業務委託の特徴
業務委託は自社が定める手順で外部に業務を依頼する方法です。一方でアウトソーシングは業務のやり方についても外注先に委ねる形をとります。そのため、業務に対するノウハウがある場合は業務委託を、ノウハウがない・改善したいという場合はアウトソーシングを選択するのが一般的です。
③アウトソーシングに適した業務
ここまでまとめてきたアウトソーシングを活用する場合、どのような業務に向いているのでしょうか。アウトソーシングの特徴から、大きく次の2つにわけることができます。社内の各部署から人材不足のニーズが上がってきた際、下記のような業務はアウトソーシングで対応することを検討してください。
<アウトソーシングに向いている業務>
・ルーティンワークやノンコア業務
→仕事の質よりも量を求められるもの。
・専門的な技術や知識が必要な業務
→人材確保のコストが割高になるもの。
●ルーティンワークやノンコア業務
反復して同じ工程を繰り返すルーティンワークや、利益や成果につながる前段階のノンコア業務は、商品・サービスに関する知識や業務経験が浅くても対応できるものです。そのため、切り離してアウトソーシングすることに向いています。具体的な業務としては下記のようなものが該当します。
<例>
・テレアポ
・カスタマーサポート
・商品の在庫管理・梱包・発送
・サンプリング
●専門的な技術や知識が必要な業務
遂行するために専門的なスキルが求められる業務についても、アウトソーシングに向いています。理由としては、そのような人材を採用するためにはコストがかかり、イチから人材を育成するためには時間がかかるからです。
業務遂行に経験が必要な業務や、担当するために専門資格が必要な業務については、該当する人材が集まる外部機関にアウトソーシングすべきでしょう。人材確保が難しい業務については、退職者が発生するたびに採用コストがかさんでいくため、はじめから外注することで組織の負担を軽減できます。
<例>
・商品製造(OEM)
・文書の翻訳・海外顧客とのやりとり
・社内ネットワーク環境の構築や設定、運用、保守
・Webデータの収集・計測
④まとめ
今回は人材不足の解決策として、アウトソーシングに注目しました。企業にとって人材確保は大きな悩みの種の1つです。社内を見渡した時には、複数の部署・部門で人員不足が目に付く場合もあるかもしれません。しかし、全ての領域で一度に完璧な人員体制を整えるのは非常に困難なことです。
そのような時にこそ、社内で完結したい業務とそうではない業務を切り分け、外部人材を活用するという方法を検討してみてください。アウトソーシングなら、外注する業務を調整しながらサービスを利用できるので、社内の状況に合わせて外注・内製の配分を随時見直すことができます。
社内のメンバーが仕事に追われて疲弊する前に、うまく社外の力を活用してみてはいかがでしょうか。