働き方改革とは?働き方改革関連法の主な改正ポイントや具体的な取り組み事例について解説

By Geppo編集部(監修:木下 洋平) |
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Geppo編集部(監修:木下 洋平)
カテゴリー: 長時間労働 生産性向上

働き方改革とは?働き方改革関連法の主な改正ポイントや具体的な取り組み事例について解説

「働き方改革」は、私たちの働き方を根本から見直し、より生産的で満足度の高い労働環境を目指す動きです。この記事では、働き方改革関連法の主要な改正ポイントを解説し、実際の職場でどのような変化が起きているのか、具体的な取り組み事例を紹介します。

残業時間の削減、フレックスタイムの導入、テレワークの推進など、これからの働く環境に必要不可欠な変革をわかりやすくご説明。新しい法律が私たちの働き方にどんな影響をもたらし、どう対応すればよいのかについて解説します。



 

目次

 

働き方改革とは

働き方改革の定義

「働き方改革」とは、日本における労働環境の改善に向けた取り組みです。この改革の主な目的は、働く人々がそれぞれの事情に応じた多様な働き方を選択できる社会を実現することにあります。これには、長時間労働の是正、ワークライフバランスの推進、非正規雇用の安定化などが含まれます。

厚生労働省は、働き方改革を通じて以下の具体的な目標を追求しています。

  • 長時間労働の是正
  • フレキシブルな働き方の推進
  • 女性や高齢者の労働市場参加の促進
  • 非正規雇用の安定化

これらの施策は、「一億総活躍社会」という政府のビジョンと密接に関連しています。このビジョンでは、すべての国民が自分の能力を最大限に発揮し、活躍できる社会の実現を目指しています。

出典:厚生労働省 働き方改革~一億総活躍社会の実現に向けて)

 

働き方改革に取り組む企業は約56%

働き方改革に取り組んでいる企業の割合(従業員規模別)

引用:株式会社NTTデータ経営研究所 「働き方改革2022 with コロナ」

株式会社NTTデータ経営研究所が実施したデータによると、取り組む企業は全体の56%ほどです。この結果からは、多くの企業がデータに基づいた取り組みをおこなっていることがわかります。特に大手企業や中堅企業は積極的な取り組みを見せており、その成果も見込めるでしょう。

一方で、中小企業においては、人手不足や採用に関する課題があり、データに基づいた取り組みがまだまだ充実していない状況です。

 

2019年から施行された働き方改革関連法とは

働き方改革関連法とは

働き方改革の推進のため、2019年から順次施行されている「働き方改革関連法」について具体的にどのような内容があるのか、主な変更点、ポイントとなる8つの要点等について解説します。

出典:厚生労働省 「働き方改革関連法等について」

 

残業時間の上限規制

残業時間には月間及び年間の上限が設定されています。具体的には、「原則として月45時間、年360時間の残業」が上限です。臨時的な特別の事情があり労働者の合意がある場合には、条件を満たしていればこれらを超えることが許可されることもあります。

ただし、労使の合意がある場合でも、「年720時間」「複数月の平均残業時間が80時間」「月100時間」などの上限を超過した場合には刑事罰が課せられる場合もあります。

 

物流や建設業界における2024年問題とは

2024年4月1日に施行される自動運転業務等に関する働き方改革関連法によって、自動車運転業務の年間時間外労働時間の上限が960時間に制限されます。特別に5年の猶予があるものの、物流業界や建設業界では労働力不足や業務の効率化への対応が急務となっています。

 

年5日の有給休暇の取得を義務化

労働者に10日以上の有給休暇が付与される場合、年に5日間の年次有給休暇を取得する義務が課せられるようになりました。これにより、労働者の健康と働きやすさを促進するための措置が取られています。年次有給休暇は、労働者が仕事から離れて心身を回復させ、生活にゆとりを持たせるための制度です。

 

フレックスタイム制の清算期間延長

「フレックスタイム制」における労働時間の清算期間が、1か月から3か月に延長となりました。この変更により、労働者は従来よりも長い期間(3か月以内)の総労働時間の範囲内で、柔軟に労働時間を調整することが可能になりました。

 

勤務間インターバル制度の普及と促進

「勤務間インターバル制度」とは、勤務終了から翌日の出社までに一定時間以上の休息期間を確保するための仕組みです。労働時間等設定改善法の改正により、企業は「勤務間インターバル制度」の導入促進についての努力義務が明記されました。

 

同一労働・同一賃金の実現

同一労働同一賃金とは、同一企業内の正社員と非正規雇用労働者で不合理な待遇差を禁じ、同じ労働に対しては同じ賃金を支払うべきという考えです。

仕事の内容や責任範囲が同じである場合、非正規雇用の労働者でも正社員と同等の待遇を受けることができるようになりました。これにより、労働者の公平性や待遇格差の解消が進んでいます。

 

産業医・産業保健機能の強化

労働安全衛生法の改正により、労働者の健康確保対策の強化が求められています。また、産業医の活動環境の整備も重要とされています。これらの要求により、産業医・産業保健機能の強化が事業者に必要とされるようになりました。産業医の役割は、労働者の健康を守るために重要な役割を果たしています。

 

中小企業での残業60時間超の割増賃金率引き上げ

従来、月60時間を超える残業(時間外労働)は、「大企業50%」「中小企業25%」の割増賃金率が定められていました。しかし、2023年4月からは、中小企業においても大企業と同様に割増賃金率が50%に引き上げられることになりました。

つまり、中小企業の労働者にとって残業手当が増えることになります労働者の収入が向上すれば、モチベーションの向上にもつながるでしょう。また、公平性も確保され、大企業と中小企業の待遇格差が縮まることになります。

 

高度プロフェッショナル制度の導入

高度プロフェッショナル制度とは、高度な専門知識やスキルが必要な特定業務を対象に、労働基準法の規定を適用しない制度です。

職務範囲が明確で一定以上の年収を有する労働者が、高度な専門知識を要する業務に従事する場合、一定の条件を満たす場合に限り労働基準法の規定(労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金)に縛られない自由な働き方ができます。

 

働き方改革が推進された背景

働き方改革が推進される背景

ここからは、長時間労働の解消や少子高齢化に伴う労働力人口の減少など、働き方改革が生まれるに至った背景について紹介します。また、働きたい人々の活躍機会や生産性向上の必要性に焦点を当て、なぜ働き方改革が必要なのかについて解説します。

 

少子高齢化と労働力人口の減少

2024年以降は女性や高齢者の労働参加率の上昇が期待されていますが、それでも労働人口は減少傾向にあります。特に2025年問題といわれる社会保障費(医療・介護)の負担増や、人手不足、人材不足が深刻化されることが懸念されています。

実際に、2023年4月の日本帝国データバンクの調査によれば、正社員の人手が不足している企業は51.4%、非正規社員は30%といったデータが出ています。

【図版】人手不足な企業数の推移

出典:帝国データバンク 人手不足に対する企業の動向調査(2023年4月)

今後は外国人労働者の受け入れや、働き方改革により柔軟な働き方を導入することで、労働力の確保や生産性の向上が期待されます。また、経験や知識を生かし、多様な人材の参加を促進することで、労働力不足を緩和するための働きかけが進められています。

出典:総務省 労働力調査(基本集計)2022年(令和4年)平均結果の要約 

出典:内閣府 第1節 高齢化の状況(1)

 

長時間労働の是正

【図版】長時間労働が疑われる事業場に対する監督指導結果

出典:厚生労働省 長時間労働が疑われる事業場に対する令和4年度の監督指導結果を公表します

 

労働力人口の減少、労働力不足が続くなか、長時間労働が常態化していることによる問題の解決も急務となっています。現在、働き方改革が推進されているものの、違法な時間外労働が確認されているケースも存在し、この問題は根深い課題として取り組まれています。

実際に、令和4年度に労働基準監督署が長時間労働が疑われる事業場に対して、その実態調査と指導をおこないました。

この監督指導は、各種情報から時間外・休日労働時間数が1か月当たり80時間を超えていると考えられる事業場や、長時間にわたる過重な労働による過労死等に係る労災請求がおこなわれた事業場など約33,218事業場が対象です。

調査では、対象のうち14,147事業場(42.6%)で違法な働き方をさせていることが判明しています。ただし、これは監督署への通告がなされた企業のみであり、まだ浮き彫りとなっていない企業もあるとされています。

慢性的な人手不足が続く中、一人当たりの負担が増えてしまうこの現状で適切な労働基準、また業務の効率化、そもそもの生産性の向上の取り組みが求められるでしょう。

 

働きたい人々の活躍機会の提供

働き方改革の背景には、働きたい個人が活躍できる機会を提供するという社会的要請が存在します。従来は女性、高齢者、外国人材など働きたくてもプライベートの関係で諦めざるを得ない状況にある人もいました。

働き方改革により、自身のライフスタイルや家庭や健康の状況に合わせて働くことができます。

出典:内閣府 労働市場の多様化とその課題

 

生産性の向上と経済の持続的発展

働き方改革は企業の生産性向上や経済の持続的な発展を目指しています。柔軟な働き方や効率的な労働環境の整備により、企業は生産性が向上し、労働者は仕事とプライベートのバランスをとりやすくなります。その結果、経済全体の発展に寄与するとされています。

出典:総務省 令和3年版 情報通信白書

 

働き方改革を実現するための取り組み

働き方改革を実現する取り組み

具体的な働き方改革を推進するための具体的な取り組みを紹介します。柔軟な勤務制度の導入、リモートワークの推進、有給休暇の取得促進など、企業や組織が実践すべき施策に焦点を当てます。さらに、多様な働き手の活用や健康経営の取り組みについても解説します。

 

柔軟な勤務制度の制定と導入

個人がライフワークバランスの実現や生産性の向上のために導入する、柔軟な勤務制度(フレックスタイムなど)の制定・導入事例が存在します。

フレックスタイムなどの柔軟な勤務制度は、ライフワークバランスを向上させ、ストレスを軽減し、メンタルヘルスを改善します。また、柔軟な勤務制度を導入することで、個人の生産性が向上することがあります。最も効率的に業務を進めることができる時間帯で仕事をすることが可能です。

出典:厚生労働省 「働き方・休み方改善ポータルサイト」

 

リモートワークの推進

働き方改革の推進に伴い、リモートワークの推進が注目を集めています。リモートワークは、従来の働き方とは異なる新しい働き方の1つであり、働き方改革の一環として取り組まれています。

リモートワークには、さまざまなメリットがあります。通勤時間がなくなり、労働者は任意の場所から仕事をおこなえるため、個人や家庭の事情に合わせたフレキシブルな働き方の実現につながります。

たとえば、これまで出産や介護などを理由に転職をせざるえなかった人も少なくないでしょう。リモートワークができれば、これまでの仕事を続けながら、家庭の事情にも対応できるため、ストレスや疲労の軽減、ワークライフバランスの向上などが期待されています。

 

有給休暇の取得を促進

働き方改革関連法には、労働者の健康や働き方の改善を目指し、有給休暇の取得を推進するという重要な取り組みが含まれています。企業にとっても、従業員の働き方やワークライフバランスの向上は重要な課題です。

国内大手のSIベンダー企業では、一斉年休制度を導入しており、従業員の休暇取得を促進しています。この制度は、社内での取り組みの一例であり、働き方改革の一環として注目されています。さらに、企業は社内の制度や取り組みを通じて、従業員に対して働き方改革を推進することが重要です。

出典:厚生労働省 働き方・休み方改善ポータルサイト

 

多様な人材の採用や起用

多様な働き手の活用や、女性管理職のなどの推進は、働き方改革の重要な目標の一つです。具体的には、政府が2023年6月に公表した「女性版骨太の方針」にて、2030年までに女性役員比率30%以上という目標が掲げられています。

しかし、この政府が掲げる女性管理職比率30%を現時点で達成している企業は極めて少ない現状にあります。

今後はグローバル企業をはじめ、さまざまな企業で性別や立場に関係なく平等に評価、登用されるようになっていくでしょう。

出典:内閣府男女共同参画局「女性活躍・男女共同参画の重点方針2023(女性版骨太の方針2023)」

 

健康経営の実現との並行

健康経営は、従業員の健康が将来的に生産性向上や事業所の成長につながるという認識のもと、健康づくりの取り組みを投資として戦略的に実践する経営スタイルを指します。「働き方改革」を進めるためには、心身ともに健康な状態であることが重要で、その指針は健康系と一体的に取り組むことで実現しやすくなるでしょう。

 

働き方改革を推進する上でのポイント

働き方改革を推進する上でのポイント

次に取り組みを社内で推進するために欠かせないポイントについて解説します。主な課題となるのが、働き方改革の取り組みを社員に浸透させることです。そのために有効な2つをご紹介します。

 

実施する目的を明確化する

働き方改革の重要なポイントの1つは「目的の明確化」です。企業が働き方改革を進める目的や目標を明確にすることには、経営層のコミットメントが求められます。経営層が主導し、積極的な支援をおこなうことで、企業全体の文化変革や従業員のモチベーション向上に大きな効果をもたらします。

経営層が働き方改革に真剣に取り組む姿勢を示せば、従業員も前向きな姿勢で取り組もうとしてくれるでしょう。経営層のリーダーシップがあれば、従業員は変革に対する意欲を持ち、自らも積極的に参加できます。

 

従業員が実践しやすい制度や環境づくりをおこなう

働き方改革には、さまざまな変更点が存在し、実施するためには、既存の業務やルールに大きな影響が及ぶのは当然です。従業員の巻き込みは、働き方改革の推進において不可欠といえるでしょう。そのため、具体的な要点やポイント、実施事項の整理が重要です。

また、従業員が取り組みやすく、取り組みたいと思えるための制度づくりや環境づくりも重要です。従業員の意見やフィードバックを積極的に取り入れることで、より良い働き方改革を実現できます。

 

サーベイを実施して組織と個人の状態をモニタリングする

働き方改革は、ただ制定して実施するだけではなく、定期的にやり方を見直すための現状把握が重要です。現状把握をおこなうためには、さまざまな手法があります。たとえば、サーベイの実施やデータ分析などが挙げられます。これにより、制度による後押しだけでなく、実際に働く従業員の意見やフィードバックを取り入れることができます。

働き方の改善には、異なる立場や意見を考慮に入れることも重要です。従業員が異なる立場からの意見を尊重し、多様性を受け入れることで、より理想的な働き方を実現することができます。

Geppoは、組織と個人の両方の課題を分析・調査できるサーベイツールです。

パルスサーベイには、フリー設問として働き方に関する設問を設けることもできるため、働き方改革に従業員がどれくらい満足しているのか、改革したことで困っている要素はないかなどを洗い出せます。

【図版】Geppoの活用によって人事課題を網羅できる

 

働き方改革を導入・実施する企業の事例

働き方改革の企業事例

次に、働き方改革にいち早く取り組んだ企業の事例を2つ紹介します。いずれも業務の効率化、長時間労働の是正にした例であり、どのようなプロセスを経て成功させたのかを詳しく解説します。

 

業務の効率化によって時間外労働や休日労働を削減

Y社では、業務効率化によって時間外労働や休日出勤を削減することに成功しました。具体的には、新しいワークフローの導入やタスクの自動化などの取り組みをおこないました。

これにより、従業員の負担を軽減し、労働時間の改善を図りました。さらに、業務プロセスの見直しやコミュニケーションの改善につながっています。

出典:厚生労働省 「働き方改革」をアップグレード、「働きがい改革」の実現へ

 

業務を洗い出しできる時間を決めて長時間労働を削減

長時間労働は、多くの企業や組織において深刻な問題となっています。しかし、税理士法人M事務所の事例では、効果的な取り組みによって長時間労働を削減することに成功しています。

M事務所では、業務プロセスの見直しや効率化をおこなった結果、同じ業務をより短時間で処理することができるようになりました。また、柔軟な働き方や休暇制度の見直しをおこない、従業員のワークライフバランスを改善しました。さらに、チームメンバー間のコミュニケーションを促進し、助け合いの文化を醸成しているようです。

出典:厚生労働省 長時間労働削減に向けてワンチームで改革

 

まとめ

まとめ

働き方改革の背景として少子高齢化や労働力の減少が挙げられます。今後はこれまでよりも多様性を意識した柔軟な勤務制度や健康経営などが推進されると見込まれます。

企業が働き方改革を進める際には、現場の意見を取り入れながらおこなっていくことが大切です。従業員の見えづらい課題や意見はサーベイを通して収集すると可視化できます。

サーベイの実施や分析には、担当者や回答する従業員の負担が少ないGeppoがおすすめです。

 

Geppo製品訴求イメージ

【監修者プロフィール】

geppo監修木下洋平 

木下 洋平

合同会社ミライオン

 

株式会社リクルートや教育研修会社での勤務後、現在は独立した専門家として活動。

キャリアコンサルタント資格を取得し、400人以上の個人のキャリア開発をサポート。

また、企業向けの人材育成・組織開発コンサルティングも手掛けており、個人と組織の両面での支援を行っている。

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