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長時間労働に企業が取るべき適切な対策は?常態化するリスクや取り組み事例とあわせて解説

長時間労働は、社員の健康を脅かし、企業の生産性にも悪影響をおよぼす深刻な問題です。

しかし、適切な対策を講じることで、これらのリスクを軽減し、より健康で生産的な職場環境の実現が可能です。

本記事では、長時間労働が常態化するリスクと、それに対する企業の取り組み事例を紹介し、企業が取るべき適切な対策を解説します。

フレックスタイム制度の導入からタイムマネジメント研修、テレワークの推進まで、さまざまなアプローチを通じて、企業と社員双方にメリットをもたらす働き方改革の実現を目指しましょう。

 

目次


労働時間の現状

【図版】令和4年 主要産業別の年間総実労働時間

出典:厚生労働省「令和5年版過労死等防止対策白書」

2022年の日本における一般労働者の年間労働時間は1,948時間で、これは4年連続で2,000時間を下回る数値です。しかし、過去2年間はこの数字が減少する傾向に歯止めがかかり、下げ止まっている様子が見られます。

特に注目すべきは、産業別の労働時間の違いです。運輸業、郵便業、建設業、製造業、情報通信業などの主要産業では、全産業の平均を上回る労働時間となっており、特定の産業における労働時間の長さにも注目が集まっています。

それでも2,000時間未満である点は重要で、このデータは日本の労働環境が徐々に改善していることを示唆しています。

出典:厚生労働省「令和5年版過労死等防止対策白書」

 

所定外労働時間が増加している実態

【図版】令和元年~4年 所定外労働時間の推移

出典:厚生労働省「令和5年版過労死等防止対策白書」

日本における労働時間の動向に関するデータによると、所定内労働時間は緩やかに減少している一方で、所定外労働時間は2021年から2022年には増加傾向にあります。

具体的には2021年の所定外労働時間は年間116時間でしたが、2022年には121時間へと上昇しています。

さらに、月末の1週間における労働時間の分析では、週60時間以上働いている労働者が全体の5.1%(約298万人)にのぼることが明らかになりました。このデータは、日本の労働環境における「所定外労働時間の増加」を浮き彫りにしており、労働者の健康やワークライフバランスに対する影響について深刻な懸念を抱かせるものです。

 

健康面のリスクが高まる労働時間の規制

健康面のリスクが高まる労働時間の規制

労働時間が長引くほど、労働者の健康には深刻な影響を及ぼす可能性があります。特に、週60時間を超える労働は、健康上のリスクを著しく高めるとされています。

このような長時間労働は、心身の疲労やストレスの蓄積を引き起こし、精神的な疾患や身体的な健康問題を招くケースがあります。労働時間の適切な管理は、労働者の健康を保護だけでなく、生産性の向上にも関わる大切なマネジメント項目です。

週60時間を超える労働を避け、適切な休息とバランスの取れた労働環境の確保が、労働者の健康にとって不可欠となるでしょう。

 

法定労働時間および時間外労働の上限規制

日本の労働基準法第32条により、労働時間の上限が定められており、1日8時間、週40時間が法定労働時間です。時間外労働(休日労働は含まず)の上限は、原則として月45時間(年360時間)となっており、これは労働基準法第36条に基づく労使協定(36協定)によって規制されています。

臨時的な特別の事情が予想される場合、特別条項付きの36協定を締結すれば、限度時間を超える時間外労働が可能です。ただし、特別条項付き36協定を締結できるのは「通常予見することのできない業務量の大幅な増加などにともない臨時的に限度時間を超えて労働させる必要がある場合」に限られ、単なる繁忙期は該当しません。

特別条項においても、時間外労働の上限が設けられており、年720時間以内などの制限があります。これらの規制は、労働者の健康保護とワークライフバランスの改善を目的として設けられています。

出典:厚生労働省「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」

 

過労死等のリスクがある労働時間

【図版】過労死との関連性が強い条件

出典:厚生労働省「脳・心臓疾患の労災認定」

過労死等の労災認定基準において、労働時間は重要な評価の目安とされています。特に、以下の条件が過労死等との関連性が強いとされています。

  • 1か月間で約100時間を超える時間外労働
  • 2~6か月間で1か月当たり約80時間を超える時間外労働

これらは、労働者が過度な労働により「過労死等のリスク」にさらされている可能性が高いと判断される基準です。

過労死等の労災認定においては、上記の労働時間を超えると、労働者が「業務による明らかな過重負荷を受けた」と見なされる場合があります。

 

精神障害リスクがある労働時間

長時間労働は、精神障害の発症に大きな影響を与える可能性もあります。特に、労災認定の基準においては、極度の長時間労働が「精神障害のリスクを高める重要な要因」として認識されており、長時間労働に対する心理的負荷の強さを定量的に評価しています。

具体的には、発病直前の1か月間で約160時間以上の時間外労働をおこなった場合、これは精神障害の労災認定において「極度の長時間労働」とみなされ、心理的負荷が強いと評価されます。このような長時間労働は、労働者の精神健康に深刻な影響を及ぼす可能性があるため、労働時間の管理と労働者の健康への配慮が重要です。

長時間労働による精神障害のリスクを理解し、適切な対策を講じることが求められています。

出典:厚生労働省「精神障害の労災認定」

 

長時間労働が常態化するリスク

長時間労働が常態化するリスク

長時間労働が常態化してしまうと、社員だけでなく企業にとっても多くのリスクが伴います。

長時間労働は、労働者の心身の健康に悪影響を及ぼし、ストレスの蓄積や睡眠不足を引き起こすケースがあるからです。その結果、労働者の生産性が低下し、仕事の質や効率が損なわれる可能性もあります。

また、長時間労働は労働者の職場満足度を低下させ、離職率の上昇につながることがあります。これは企業にとっても大きな損失であり、人材流出や採用コストの増加、組織の安定性の低下など、企業の持続的な成長に悪影響を及ぼすでしょう。

 

心身の健康への悪影響

過度な長時間労働は、労働者の心身の健康に深刻な悪影響を及ぼします。長時間労働が続くことで、疲労回復に必要な睡眠や休養時間が不足し、重大な健康障害を引き起こすリスクが高まるからです。特に、週の労働時間が60時間を超える場合、健康上のリスクが顕著に高まるとされています。

長時間労働による健康問題は、脳や心臓疾患による死亡や疾病、精神障害や自死といった過労死等の原因となり、深刻な社会問題となっています。これらの健康障害は、労働者の生活の質を著しく低下させるだけでなく、社会全体にも大きな影響を与えます。過労死等は、長時間労働の深刻な結果の1つであり、これらの問題に対する対策と意識の向上が急務です。

長時間労働による健康障害を防ぐためには、適切な労働時間の管理と労働者の健康への配慮が不可欠となります。労働者自身が自身の健康状態を把握し、必要に応じて休息を取ること、また、企業や組織が労働時間の適正化に努める

ことが重要です。

出典:独立行政法人労働安全衛生総合研究所「長時間労働者の健康ガイド」

 

生産性の低下

睡眠不足による集中力の欠如やモチベーションの低下は、社員の生産性を著しく低下させる要因となります。長時間労働が続くと、労働者は十分な休息を取れず、これが生産性の低下に直結するでしょう。

実際、国際的なデータによると、1人当たりの労働時間が短い国ほど、労働生産性が高いと言う相関関係が見られます。

主要国のGDPと労働時間の関係は、以下のとおりです。

国名

労働時間/人

(一人あたり労働時間)

GDP

ドイツ

1,341時間

66.6ドル/人

デンマーク

1,372時間

77.9ドル/人

ノルウェー

1,425時間

121.3ドル/人

日本

1,607時間

46.9ドル/人

長時間労働の是正と労働者の健康管理が、生産性向上の鍵となるでしょう。

出典:厚生労働省「平成29年度年次経済財政報告-技術革新と働き方改革がもたらす新たな成長-第2章 働き方の変化と経済・国民生活への影響 第2節」

出典:OECD「主要統計:労働時間(Hours worked)」

出典:OECD「主要統計:国内総生産(GDP)」

 

離職率の上昇

長時間労働が直接的な原因となり、社員の離職率が上昇する傾向が見られます。休日が少ない、有給休暇が取りにくい、残業が多いなどの労働環境は、労働者のウェルビーイング(幸福感)に悪影響を及ぼし、結果として離職につながるからです。

特に、労働時間が長いことや休日が少ないなど、労働条件が良くないことによる退職の割合は、男性で9.1%、女性で10.8%に上ります。

近年、ウェルビーイングの意識が高まっており、特に若者の間でプライベートの充実や趣味、家族との時間を重視する傾向が強まっています。このような変化は、労働者が仕事と生活のバランスを求めるようになったことを示しており、企業にとっては労働環境の改善が必要不可欠です。

長時間労働による生産性の低下は、労働者の健康やモチベーションに影響を与えるだけでなく、企業の人材流出や採用コストの増加にもつながります。労働時間の適正化と労働者のウェルビーイングの向上は、企業の持続的な成長と競争力の強化にもつながるでしょう。

出典:厚生労働省「令和4年雇用動向調査結果の概況」

 

長時間労働・時間外労働(残業)への対策が必要な理由

長時間労働・時間外労働(残業)への対策が必要な理由

長時間労働は、労働者の健康問題や過労死、精神障害を引き起こす原因となります。これらの問題への対処は、社会的責任の一環として企業に求められています。また、長時間労働の是正は、企業側にも多くのメリットをもたらし、企業の持続的な成長に貢献するでしょう。

長時間労働や時間外労働への対策は、社会的な問題への対応と企業の利益の両面で重要であり、企業が積極的に取り組むべき課題です。

 

労災事案の発生を未然に防止する

【図版】特別労働相談受付における相談結果

出典:厚生労働省「特別労働相談受付日における相談結果を公表します」

近年、長時間労働による相談件数や労災件数が増加しており、労働環境の改善が急務となっています。

令和4年に厚生労働省が実施した特別労働相談では、たった1日で長時間労働・過重労働に関する相談が107件(相談内容の20.9%)にのぼりました。また、同年度の過労死に関する労災支給件数は904件で、前年度より103件増加しています。精神障害に関する労災件数も同様に増加しています。

労災認定事案が発生すると、企業にとって多大なリスクが生じます。訴訟のリスクが高くなり、労働基準監督署への報告や調査立ち会いが必要となることもあります。さらに、労災認定事案が公表されると、取引停止、離職者の増加、入社希望者の減少など、企業の評判や業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

これらのリスクを未然に防ぐためには、企業が労働時間の適正化に取り組むことが重要です。企業が労働者のウェルビーイングを重視し、持続可能な労働環境の構築が、労災事案の発生を未然に防ぐ鍵となります。

出典:厚生労働省「特別労働相談受付日における相談結果を公表します」

出典:厚生労働省「令和4年度「過労死等の労災補償状況」を公表します」

 

社員の意欲向上につながる

社員の健康トラブルを予防し、ストレスをかけない職場環境を整えることは、社員個人および社内全体の生産性向上に大きく寄与します。健康トラブルやストレスの少ない職場は、社員が自身の能力を最大限に発揮できる環境を提供でき、結果として企業の業績向上につながります。

また、ワークライフバランスの改善は、社員の企業に対する満足度や働き方に対する満足度を高める重要な要素です。適切な休息時間とプライベートの充実は、社員のモチベーションを高め、創造性やイノベーションを促進します。社員が仕事とプライベートの両方で充実感を得られる環境を整えることは、社員の意欲向上に直結し、企業の持続的な成長にも貢献するでしょう。

企業が社員の健康管理とワークライフバランスの改善に積極的に取り組めば、社員の満足度と生産性が向上し、企業全体の競争力強化につながります。社員の意欲向上は、企業の成功に不可欠な要素であり、そのためには健康と働き方のバランスに配慮した職場環境の整備が重要です。

 

企業が長時間労働を減らす対策

【図版】企業が長時間労働を減らす5つの対策

企業が長時間労働を減らすためには、さまざまな対策が必要です。企業は社員のワークライフバランスを改善し、長時間労働の問題の解決しなくてはなりません。ここからは5つの対策について解説します。

 

労働時間の管理

長時間労働の原因の1つとして、社員の「業務内容」と「スケジュール」を正確に把握できていないケースが挙げられます。

企業が労働時間の管理を適切におこなうためには、まず社員の業務内容とスケジュールの把握が必要です。これにより、業務の過剰な負担や無駄な時間の削減が可能となり、効率的な業務運営が実現します。

また、勤務時間のタイムカードなどで日々の勤務時間を「見える化」しておくことも、長時間労働の是正には重要です。勤務時間の可視化により、社員自身が自分の労働時間を意識し、適切な休憩を取れるようになるでしょう。適度な休憩を取ることで、社員はリフレッシュができ、労働効率を高められます。

 

勤務体系の柔軟化

小売業や飲食業など繁閑の差が大きい業種では、変形労働時間制を導入して残業発生を抑えることが可能です。この制度により、繁忙期と閑散期の労働時間を調整し、全体の労働時間を均一に保てます。

また、社員が自ら勤務時間を決められるフレックスタイム制を導入すれば、その日の業務内容に応じて勤務時間を柔軟に調整できます。たとえば、夕方に会議がある場合、午後から出勤するといった調整が可能です。

ノー残業デーの設定は、時間外労働を減らす効果的な手段です。定期的にノー残業デーを設けることで、社員は定時での退社を意識して、効率的に業務を進めるようになります。

さらに、リフレッシュ休暇の導入は、有給休暇の取得率を高め、総労働時間の減少にも繋がります。ただし、ノー残業デーやリフレッシュ休暇によって時間外労働が増えないよう、適切な配慮が必要です。

これらの勤務体系の柔軟化は、社員のワークライフバランスの向上に寄与し、結果として企業全体の生産性向上につながるでしょう。労働時間の適正管理と柔軟な勤務体系の導入は、現代の労働環境において重要な要素となっています。

 

業務量の見直しや属人化の解消

長時間労働の是正には、業務プロセスの見直しと属人化の解消も重要です。

社員が取り組んでいる業務プロセスを洗い出し、特定の社員に業務が偏っていないか、非効率な進め方をしている業務がないかを確認しましょう。ToDoリストを作成し、優先度を考え、必要ない作業はカットして、業務の効率化を図ります。

属人化している業務があれば、マニュアル化をして業務の透明性を高め、他の社員が業務を引き継ぎやすくしましょう。

また、社員同士、チーム間でのコミュニケーション促進も重要です。相談や報告がしやすい環境を整えれば、トラブルやモチベーション低下の原因を未然に防げます。

 

労働環境の改善

閑散期を基準にした人員配置がおこなわれている場合、繁忙期には少ない人員で大量の業務をこなすことになり、長時間労働の一因にもなっています。フレックスタイム制度を導入するなどして、特定の社員に業務が集中しないような配慮が必要です。

また「社内のがんばり」による評価が出世競争を生み出し、社員を過剰労働に追い込むことも指摘されています。決められた労働時間内でどれだけ成果を出したか、といった観点の人事評価も大切です。

さらに、有給休暇の取得率も評価の対象とすれば、社員は有給を取りやすくなるでしょう。

 

タイムマネジメント研修

タイムマネジメント研修は、業務における時間の使い方や優先順位の付け方を習得するための研修です。働き方改革の影響で、生産性向上が求められるなか、タイムマネジメント研修の需要が高まっています。

この研修には、一般社員向けと管理職向けの2種類があり、それぞれ自身のタイムマネジメント能力の向上や戦略的な業務配分、目標管理を目的としています。

また、タイムマネジメント研修の主なメリットとして、以下が挙げられます。

  • 業務時間の短縮
  • 仕事の効率向上
  • スケジューリングの上達 

タイムマネジメント研修は、オンライン研修、集合研修、eラーニングなど、さまざまな形式で実施されており、研修の効果を最大化するためには、受講者の不明点に対するサポートが重要です。

 

長時間労働への対策をしている企業の事例

長時間労働への対策をしている企業の事例

多くの企業が長時間労働の問題に取り組み、さまざまな対策を実施しています。長時間労働への対策は、社員のワークライフバランスを改善し、企業の持続的な成長にもつながるでしょう。

ここからは、長時間労働への対策を実践している企業の具体的な事例を紹介します。

 

在宅勤務制度と3連休取得を推奨した事例

T株式会社では、裁量労働制勤務やフレックスタイム勤務をベースとしている職種の社員に対して、在宅勤務制度を導入しています。この制度は、FTL制度(Free Time and Location)として構築され、在宅勤務の場所は原則自宅です。

また、仕事と育児の両立支援に向けた柔軟な勤務時間制度も導入されています。たとえば、交替制勤務の職場には、育児をおこなう社員を対象に、常に6時半~15時の勤務シフトとする「常1直勤務制度」が設けられています。

年次有給休暇の取得促進の一環として、3Days Vacation(年1回以上の3連休での取得)が推奨されています。これにより、社員は長期の休暇を取得しやすくなり、リフレッシュする機会が増えているようです。

さらに、女性活躍の推進にも力を入れており、女性基幹職数や女性技術職数の増加、女性退職率の減少などの成果が出ています。

出典:厚生労働省 働き方・休み方改善ポータルサイト 取組・参考事例

 

フレキシブルタイムを朝方にシフトし夜型の残業を削減した事例

K株式会社では、フレックスタイム制のコアタイムを廃止し、フレキシブルタイムを朝型にシフトした結果、夜型の長時間残業の抑制を実現しています。

また、時間単位での年次有給休暇および看護や介護休暇の取得制度を新設し、育児や介護といった私事都合との両立が可能な勤務時間の設定しています。

これらの制度見直しにより、人事、経理、情報システム部門において所定外労働時間が縮減傾向となりました。また、年次有給休暇の取得率は2016年に71.7%に達し、男性の育児休業取得実績も2015年には127名に増加しています。

出典:厚生労働省 働き方・休み方改善ポータルサイト 取組・参考事例

 

短時間勤務者向けのフレックスタイム制や副業制度を導入した事例

C株式会社では、2019年に短時間勤務者を対象としたフレックスタイム制を導入し、育児休業明けの社員が主に利用しています。この制度により、子どもの体調不良や学校行事の際に、出退勤時間の柔軟な調整が可能です。

また、2019年には副業制度も導入しました。これは、働き方改革による残業時間の削減が給与減少につながることを考慮し、金銭面での補填と副業での経験を本業に生かす目的です。たとえば、副業でネット販売を始めた社員が、その経験をもとに会社のホームページ更新に生かしています。

さらに、2019年から管理職の労働時間管理を開始し、2020年にはテレワークを導入しました。テレワークの推奨により、業務の効率化やコミュニケーションの活性化が進んでいます。

出典:厚生労働省 働き方・休み方改善ポータルサイト 取組・参考事例

 

毎月20時間分の時間外手当を支給した事例

T株式会社では、時間外労働が減少してきたことを受け、生産性をさらに高めるために、実際の労働時間に関わらず、毎月20時間分の時間外手当に相当する金額を支給しています。この施策により、時間外労働が20時間を超えた場合は、その分の時間外手当を追加で支給しています。

同社の取り組みによる成果は顕著で、所定外労働時間は2015年の月平均29.3時間から2021年には月平均21.7時間へと減少しています。

出典:厚生労働省 働き方・休み方改善ポータルサイト 取組・参考事例

 

夜はサーバーの電源を切り翌朝の早出出勤を習慣づけさせた事例

N株式会社では、時間外労働を25時間を限度とする36協定を締結し、原則18時45分にサーバーの電源を切ることで、時間外労働が必要な場合は翌朝7時の早出出勤をするよう効率的な仕事の進め方を習慣づけています。

また、休日数が127日に加え、計画的付与制度を最大15日実施しており、年次有給休暇の取得率が向上しています。社長自らが入退社の記録や年次有給休暇の取得率をチェックし、業務の平準化を指示して、意識の変化を浸透させています。

取り組みの成果として、所定外労働時間は2019年の月平均10.5時間から2021年には月平均4.1時間に減少しました。また、年次有給休暇の取得状況も、2019年の年間平均取得日数が13.1日から2021年には13.5日に増加しています。

出典:厚生労働省 働き方・休み方改善ポータルサイト 取組・参考事例

 

柔軟な働き方の実現と9時間のインターバルを確保した事例

株式会社Hでは、働き方や休み方改革に積極的に取り組んでおり、フレックスタイム制度とテレワーク制度を活用しています。これにより、社員は時間と場所にとらわれない柔軟な働き方を実現しているようです。また、繁忙期や特別な事情があっても9時間のインターバルを確保し、社員の健康管理に努めています。

取り組みの成果として、所定外労働時間数は月平均17時間(2016年)から月平均6.2時間(2021年)へと大幅に減少しました。

また、年次有給休暇の取得状況も改善されており、取得率72.5%(2016年)から83.4%(2021年)へと向上しています。

同社では、働きやすく、働きがいのある環境を作るためにさまざまな制度を導入し、今後も改善を進めていく方針です。

出典:厚生労働省 働き方・休み方改善ポータルサイト 取組・参考事例

 

Geppoの活用によって社員の健康状態を定期的に調査できる

Geppoは、社員の健康状態を定期的に把握し、早期発見を可能にするサーベイツールです。

精神的および身体的な問題が早期に表出する「睡眠」の質に関する質問を含む健康に関する設問があります。たとえば「最近よく眠れていますか?」といった質問を通じて、社員が自覚していない健康上の問題について早期発見が可能です。

Geppoの活用により、社員の健康状態を定期的に把握でき、長時間労働がその健康に影響を与えていないか調査が可能です。また、業務や労働環境に対する社員の不満を吸い上げ、実施している業務を把握し、業務量の調整に役立てることができます。

Geppoは社員の負担にならないように設計されており、業務中でも短時間で回答できるよう質問数を調整できるため、社員はストレスなく参加し、企業は効果的に社員の健康状態を把握し、適切な対策を講じることができます。

 

Geppo製品訴求イメージ

 

まとめ

長時間労働は、健康上のリスクをもたらすだけでなく、社会問題としても注目されています。

過度な労働は、心身の健康を害し、生産性の低下や離職率の増加につながるため、企業にとっても重要な課題です。働き方改革の流れのなかで、長時間労働に対する法整備も進んでおり、企業は法的な義務を果たすとともに、社員の健康と働きやすい環境を確保するための対策を講じる必要があります。

また、長時間労働への対策は、企業にとっても多くのメリットをもたらします。社員の健康を守ることは、生産性の向上や離職率の低下に直結するだけでなく、企業の持続的な成長にも貢献するでしょう。

各企業では、フレックスタイム制度の導入、テレワークの推進、タイムマネジメント研修の実施など、さまざまなアイデアで長時間労働への対策を進めています。

これらの取り組みにより、社員のワークライフバランスの向上に寄与し、より健康で充実した職場環境を作ることができています。その結果、企業は長時間労働の是正を通じて、社員の幸福度を高め、企業全体の競争力強化にもつながっています。

【監修者プロフィール】

geppo監修木下洋平 

木下 洋平

合同会社ミライオン

 

株式会社リクルートや教育研修会社での勤務後、現在は独立した専門家として活動。

キャリアコンサルタント資格を取得し、400人以上の個人のキャリア開発をサポート。

また、企業向けの人材育成・組織開発コンサルティングも手掛けており、個人と組織の両面での支援を行っている。

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