カテゴリー: 離職防止 退職理由

退職者が続出する原因や背景とは?未然に防ぐための対策を成功事例とともに紹介!

一部の従業員の退職をきっかけに他の従業員も次々と退職してしまう連鎖退職は、職場環境や人間関係だけでなく転職市場の活発化や働き方の変化など、さまざまな要因が関係しています。

しかし、企業側が日頃から社内を気にかけて内部改善をはかることで、退職者の続出を未然に防ぐことができるようになります。

本記事では、退職者が続出してしまう原因や、未然に防ぐための方法について解説します。

 

目次



退職者が相次ぐ「連鎖退職」が発生してしまう原因は?

退職者が相次ぐ「連鎖退職」が発生してしまう原因は?

「連鎖退職」とは、一部の従業員が退職したことで、その影響を受けた他の従業員も次々と退職する現象を指します。連鎖退職は、組織内の人間関係や職場環境、福利厚生など、さまざまな原因をきっかけに進行します。

これにより、組織は人材流出の悪循環に陥り、組織の士気の低下や業績の悪化などに繋がる恐れがあります。このように連鎖退職は、組織の活力を奪い、業績を下げるリスクをはらんでいるため、早期の対策と問題解決が求められます。

まずは、連鎖退職が起こる原因について詳しく解説します。

 

長時間労働や賃金条件など職場環境に対する不満

長時間労働や給与が低いといった、社員が生き生きと働けない職場環境は退職者を続出させる原因となる可能性があります。

【図版】初職の転職理由TOP5

出典:独立行政法人 労働政策研究・研修機構「平成30年若年者雇用実態調査」

平成30年若年者雇用実態調査によると、「初めて勤務した会社」を離職した人の離職理由で最も多いのが「労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった」(35.2%)であることがわかります。

また、「賃金の条件がよくなかった」(24.2%)も3位にランクインしています。

「労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった」を初職継続期間別に見ると、入職から1年未満が39.0%で最も高く、1年~3年未満が37.0%、3年以上が33.3%と勤続しているほど低くなっています。

【図版】初職の「継続期間」と「離職理由」

出典:独立行政法人 労働政策研究・研修機構「平成30年若年者雇用実態調査」

また、「健康上の理由」も1年未満が18.7%と圧倒的に高くなっています。

一般的には、週の労働時間が60時間以上になると健康障害リスクが高まるとされており、長時間労働と関連する健康問題としては、脳・心臓疾患(過労死)と精神障害・自死などが挙げられます。

これらの結果により、長時間労働などの職場環境やそれに伴う健康上の理由で退職するのは、勤続期間が短いケースが多いと考えられます。

 

人間関係がうまくいかない

上司の指導方法に不満がある、ハラスメントが横行している、同僚とそりが合わないなどの人間関係に関するトラブルも、退職者を発生させる原因になり得ます。

近年ではハラスメントが社会問題になっており、パワーハラスメント(パワハラ)は会社内の問題に留まらず、社会的には傷害罪、名誉毀損、侮辱罪などの犯罪にあたります。

また、セクシャルハラスメント(セクハラ)も損害賠償請求が可能な重大な問題です。

先述した調査では、初職が正社員であった離職者が勤務先を辞めた理由として、「人間関係がよくなかった」(28.4%)が2位に入っています。

また、初職継続期間で見ると、1年未満が46.1%、1年~3年未満が29.1%、3年以上が20.7%と早期離職ほど人間関係が原因になっていることがわかります。 

出典:独立行政法人 労働政策研究・研修機構「平成30年若年者雇用実態調査」

 

エース社員の退職による人手不足

社内に影響力を持つようなエース社員が退職することで、会社の将来性に不安を感じ、他の社員も後を追うように辞めていってしまうケースもあります。

また、管理職や経営担当者が交代することで経営方針が変わり、以前の経営方針に共感して入社した社員の帰属意識が低くなり退職してしまうことも考えられます。

さらに他の社員の退職によって、残された社員の仕事量が増え、過重労働やモラルの低下を引き起こす可能性もあるため、企業にとっては二重の打撃となっています。

これらが原因で、退職者が後を立たなくなり、慢性的な人手不足に陥ってしまうのです。

 

退職者が続出する背景とは?

退職者が続出する背景とは?

退職者が続出してしまう原因になるのは、社内の問題だけではありません。

ここまでに紹介した企業や組織に関する原因に該当しない場合、転職市場の活発化や働き方の多様化など、外部要因によって退職者が続出するケースもあります。

 

転職市場が活発になり始めている

新型コロナウイルス感染症の影響で一時ストップしていた企業の採用活動は、徐々に元の状態へ戻っています。企業は、新たな技術やビジネスモデルに対応するべく、多様なバックグラウンドを持つ人材を求め、人材獲得の機会として転職市場を重視しています。

これにより、転職活動をする個々の意欲や、企業側の人材獲得のニーズが一致し、転職市場の活性化を促しています。

実際に、労働政策研究・研修機構(JILPT)が発表した有効求人倍率によると、2021年1月は1.04倍でしたが、2023年2月には1.34%まで持ち直しています。

現状では感染症の流行前までは回復していませんが、今後ますます転職市場は活発になっていくことが予想されます。

【図版】中途採用の有効求人倍率 (季節調整値)

出典:独立行政法人 労働政策研究・研修機構「国内統計:有効求人倍率」

 

働き方の多様化によって柔軟なワークスタイルを選択する人が増加

コロナ禍の感染対策をきっかけに、オフィスへ出社しないテレワークが広まりました。しかし現在は徐々に従来の働き方に戻している企業が増えており、東京都産業労働局が実施している「テレワーク実施率調査」では、2023年10月のテレワーク実施率は44.1%で、毎月少しずつ減っています。

社員としてはオフィスへの復帰が億劫になってしまい、リモートで働ける環境への転職を考え退職してしまうケースも見受けられます。また、近年では、フレックスタイム制度など新たな働き方が多くの企業で導入されています。

しかし、実際には古い働き方から脱却できないまま、過重労働や長時間労働が続いている企業も少なくありません。働き方改革が上手く進まない企業では、従業員のストレスが高まり、結果として退職者が増えてしまう可能性があります。

 

個人主義やスラッシュキャリアなど仕事に対する価値観の変化

近年、個人主義やスラッシュキャリアという働き方が増え、従来の企業へのロイヤリティは薄れつつあります。これにより、自身のキャリア開発やスキルアップを重視する人々が増え、職場環境や待遇に満足できない場合、容易に退職を選択する傾向が見られます。

本来であれば企業側が働きやすい環境を作り、引きとめるべきですが、その努力が追いつかない場合や、社員の多様なニーズに対応できない場合、結果的に退職者が増えてしまいます。

特に1980年~1995年の間に生まれたミレニアル世代は、プライベートの充実に重きを置いて仕事をするワーク・ライフ・バランスを重視する傾向にあります。

また、幼少期からリーマンショックやコロナ禍による不況を経験してきた1996年~2015年の間に生まれたZ世代のなかには、企業に対する期待感が低いため、1つの会社に固執せずに転職や副業などを選択肢に入れながら、柔軟な働き方をしたいと考える人もいます。

 

退職者の続出を未然に防ぐための対策

【図版】退職者の続出を未然に防ぐための対策

退職者の増加は、企業にとって大きな課題の1つです。

従業員が去ることで生じる人材や経験の損失は、組織の生産性や経済性に影響を及ぼします。

これを未然に防ぐための対策について解説します。

 

定期的に社員とコミュニケーションをとる

企業における退職者続出の防止策として、定期的に社員とコミュニケーションを取ることが有効であるとされています。具体的には、個々の社員の悩みや問題点を把握し、それぞれに適切な対応を行うことで、社員の満足度やモチベーションを高めることが可能です。

一方で、定期的なコミュニケーションだけでなく、その質にも注意が必要です。

例えば、トップダウンの一方的な情報提供ではなく、社員の意見やフィードバックを活発に求める対話型のコミュニケーションが求められます。

また、コミュニケーションを通じて得た情報を適切に活用し、社員の働きやすい環境づくりに反映させることも重要です。さらに、コミュニケーションの頻度や内容は、社員の年齢や性別、役職などの多様性を考慮し、調整することが求められます。

例えば、若手社員に対してはキャリアアップの機会やスキルアップの支援、中高年社員に対してはワークライフバランスの確保や健康管理の支援など、それぞれのニーズに応じたコミュニケーションを心がけることで、退職者の減少に繋がると考えられています。

 

優秀な人材を定着させる

マネージャーやリーダーなど、会社内で重要な立場の人材を定着させることで、社員のモチベーションが向上し退職者の発生を防げる可能性があります。

優秀な人材を定着させるためには、その立場に見合った公正・公平な人事評価制度を整えることが重要です。成果を数値化して可視化したり、プロセスをきちんと評価したりすることで、誰もが納得できる評価制度を整え、一人ひとりのポジションに相当する評価がなされる必要があります。

また、報酬だけでなくキャリアの処遇も整備しておくと良いでしょう。

キャリアと聞くと、昇進・昇格などを思い浮かべますが、優秀な人材は「どのような権限でどこまでの仕事を任せてくれるのか」という責任感のある仕事に重きを置く傾向にあります。

また、優秀な人材に限らず全社員に共通して、定期的な意見の吸い上げも重要です。

サーベイツールなどを活用して、リアルタイムな社員の意見を収集することをおすすめします。

 

内部改善をはかる

内部改善をはかるためには、退職者が続出する背景には何があるのか、本当の理由を探るための徹底的な調査が必要になります。

長時間労働、パワハラ、または職場の人間関係の悪化などが退職の大きな理由となっている場合は、企業はこれらの問題を解決するための具体的な方策を講じなくてはなりません。

さらに、企業は従業員一人ひとりの成長を支援し、能力やスキルを最大限に活用できる環境を提供することが求められます。教育訓練の機会の提供や職場内でのメンターシップ制度の導入など、個々の従業員がスキルを磨き、自己実現を果たせるような仕組みが整っていることが重要です。

 

退職者続出防止の成功事例

退職者続出防止の成功事例

コーヒーストアの経営や、コーヒー及び関連商品の販売をおこなうS社の成功事例を紹介します。現在では、離職率がとても低いことで有名なS社ですが、かつては退職者が続出してしまうという事態も発生しました。

そこで経営戦略の中心に「人材第一」の理念を置き、従業員を「パートナー」と呼ぶことで、従業員一人ひとりの成長を企業成長の基盤と捉えました。具体的には継続的な教育、キャリア開発プログラム、適正な報酬体系などをおこなっています。

また、S社は従業員満足度をビジネスの成功において不可欠な要素としています。

従業員が企業の長期的な成功に貢献するために、福利厚生、昇進機会、社内のコミュニケーション強化などを通じて、従業員が企業に愛着を持ち、職場に誇りを持つことができる文化を築いているのです。

さらに、S社にはコーヒーの作り方などのオペレーションマニュアルはありますが、サービスに関するマニュアルがありません。自分が良いと判断した接客をお客様に提供することが認められています。

これにより自分で考えて行動したことがお客様の笑顔に繋がり、働くことがより楽しくなるという好循環が生まれ、従業員エンゲージメントが向上するのだと考えられています。

 

退職者続出防止におすすめのサーベイツール「Geppo」

退職者続出防止におすすめのサーベイツール「Geppo」

退職者の続出を防止し、人材を定着させるには社員の意見や健康状態を収集できるサーベイツールを活用することが効果的です。

サーベイツール「Geppo」は毎月3問+αの設問に答えるだけで、社員の本音を引き出すことができます。従業員のコンディションを把握できるため、対人関係が希薄になったことでモチベーションが低下しているなど、テレワークを導入している企業が持つ不安も解決できます。

さまざまな人材サービスを手掛けるP社では、もともと社内で意識調査のアンケートも実施していましたが、年に一度しか行っていないうえに、匿名かつ質問項目も膨大だったため、社員に負担がかかってしまうことに懸念がありました。

Geppoの導入によって、実際にこれまでは感覚的に把握していたことがデータとして数値化され、組織にある課題がリアルタイムでわかるようになり、従業員のコンディションに課題がある割合が約50%に下がった事業部もあるなどの成果につながっています。

 

また、在宅医療系サービスにフォーカスした事業を推進しているS社は、入社後から半年で突然退職してしまう「ビックリ退職」をゼロにするべく、「Geppo」を導入しました。

導入後は、アラートが出たタイミングですぐに本人に駆けつけ、直接話を聞くことで早期解決に繋がり、離職率が大きく改善されました。

 

Geppo製品訴求イメージ

まとめ

まとめ

企業が安定した経営を進めていくために、人材は重要な要素の1つです。

退職者が続出する原因や背景は、周囲への影響力が大きい人物の退職や職場環境だけでなく、働き方の多様化や仕事に対する価値観の変化など、企業によってさまざまです。

退職者の続出を防止し、これからも自社で働き続けてもらうために、企業側が日頃から社内を気にかけて、課題の早期発見・解決および内部改善に努めましょう。

【監修者プロフィール】

geppo監修木下洋平 

木下 洋平

合同会社ミライオン

 

株式会社リクルートや教育研修会社での勤務後、現在は独立した専門家として活動。

キャリアコンサルタント資格を取得し、400人以上の個人のキャリア開発をサポート。

また、企業向けの人材育成・組織開発コンサルティングも手掛けており、個人と組織の両面での支援を行っている。

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