残業が発生してしまう理由は?国内の現状や残業時間が増加するリスク、対策について解説

By Geppo編集部(監修:木下 洋平) |
READ POST
Geppo編集部(監修:木下 洋平)
カテゴリー: 長時間労働

残業が発生してしまう理由は?国内の現状や残業時間が増加するリスク、対策について解説

残業しなければならない原因には、単純に仕事が終わらないということ以外にも、組織文化や管理体制に問題があることも考えられます。働き方改革に伴い、残業に対しても改善が求められているなかで、企業はどのような取り組みを行う必要があるのでしょうか。

本記事では、残業が発生してしまう理由や常態化するリスク、残業防止のための対策とともに、労働環境の改善に効果的なサーベイツールについてもご紹介します。

 

目次


残業の現状

残業の現状

近年、少子高齢化による労働者数の減少や、ウェルビーイングの重視に伴い、政府は働き方改革に乗り出しています。時間外労働を改善するための取り組みとして、法改正も実施されています。

まずは、国内の残業に関する現状について解説します。

日本国内における残業時間の現状

厚生労働省の調査により、令和5年12月の段階で日本国内の一般労働者の所定外労働時間は、ひと月あたり約13.9時間であることが明らかになりました。

この調査は、労働者に対してではなく、企業側に実施したものであるため、実際には13.9時間以上の残業が行われている可能性もあると考えられます。

また近年では、感染症対策をきっかけにリモートワークが普及したことで、在宅勤務による隠れ残業も増加しています。仕事とプライベートの境界が曖昧になったために勤務時間にも影響を及ぼし、残業時間が増えてしまう直接的な原因となっています。

 

「働き方改革関連法」の施行によって法令遵守が求められている

政府は2018年に「働き方改革関連法」を施行し、現在も順次改正を行っています。2023年の4月からは、月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率が、中小企業でも50%に引き上げられました。

東京都産業労働局の働き方改革に関する実態調査によると、働き方改革で労働時間について「変化があった」と回答した割合が49.0%、「変化がなかった」と回答した割合が31.2%でした。

【図版】労働時間管理の変化

出典:東京都産業労働局「令和2年度 働き方改革に関する実態調査」

また、変化の内容としては「上司が声掛けをするなど時間外労働しないように働きかけるようになった」「時間外労働を事前申告制にするなど労働時間の管理が厳しくなった」などが挙げられており、残業削減のための取り組みを行っている企業では、効果が出始めているものの、未だ変化を感じられるほどの対策を講じられていない企業もあることがわかります。

【図版】労働時間管理の具体的な変化の内容

出典:東京都産業労働局「令和2年度 働き方改革に関する実態調査」

 

従業員が残業しなくてはならない理由

従業員が残業しなくてはならない理由

残業の理由として、人手不足や業務の割り当てが適切ではないことが挙げられます。

また、残業を申告しにくい雰囲気があるなど、組織文化が影響していることも考えられます。

ここからは、残業時間が発生してしまう理由について解説します。

 

業務量に対する慢性的な人手不足

残業が増える大きな理由のひとつに、仕事量と従業員数が見合っていない状況があります。

業務の遂行に必要な人員が不足していたり、業務量が増えているにも関わらず、適切な人員配置や調整が行われていないことで、一人あたりの仕事量が増え、結果的に残業せざるを得ない状況になります。

 

適切なマネジメントがおこなわれていない

適切なマネジメントが実施されていなければ、業務を効率的に遂行できなくなり、予定外の時間を使って仕事を進める必要が生じてしまいます。

業務管理以外にも勤怠管理が整っていない場合には、工数や残業時間が可視化されず、残業しやすい状態になってしまっている可能性があります。

また、誰が何の業務を行っているのか、上司が正確に把握できていなければ、割り振りに偏りが生まれるため、残業理由の1つでもある業務の属人化を招いてしまいます。

 

割り当てられる業務が従業員のスキルに見合っていない

業務内容が従業員のスキルに適合していないことも、残業理由として挙げられます。

従業員個人の経験や能力に見合っていない業務が与えられていると、勤務時間内で対応することが難しく、結果的に残業しなければ仕事を処理しきれない状況になります。

また、残業が常態化していると、研修などの時間が取れずにスキルアップの機会が減少してしまうことで、業務とスキルが見合わない状態が長期的に解消されないなどの可能性も考えられます。

 

業務が属人化している

業務の属人化とは、業務の担当者が限定されているために、その人がいなければ業務が進められない状況を指します。

業務が属人化していると、業務に関する情報や進捗状況が業務担当者以外に共有されないため、業務を進められる人物が自分しかいないと思い込んでしまいます。

これにより、一人では対応しきれない量の仕事を抱えてしまう可能性もあり、残業をしなければ業務を消化できない状態になってしまいます。

 

残業を良いこととする組織文化がある

「残業をすることが良い」という風潮や、早い時間に退勤しにくい雰囲気があると、組織的に残業をすることが当たり前になってしまっていることが考えられます。さらに、残業時間には法的な上限が定められているために、サービス残業などの文化が残ってしまっているケースもみられます。

特にテレワークが普及した現在において、申告せずに残業を行う隠れ残業が増えています。

テレワークに関する調査結果によると、隠れ残業になってしまう理由として「申告しづらい雰囲気だから」という回答が最も多く、「しなくても良いと思ったから」「上司に申告をするなと言われたから」との回答も一定数見られました。

このことから、テレワークであっても組織文化に縛られていることが、隠れ残業の原因の一つになっているといえるでしょう。

【図版】時間外・休日労働をしたにも関わらず申告しなかった理由

出典:日本労働組合総連合会「テレワークに関する調査2020」

 

残業の増加によって想定されるリスク

残業の増加によって想定されるリスク

残業が増加すると、従業員のモチベーションの低下や健康面でのリスクが生じる可能性があります。また、人件費の増加や罰金の恐れなど、企業側が被るリスクも想定されるので注意が必要です。

 

残業代により人件費や社会保険料の負担が大きくなる

月給制や固定給を採用していても、法定労働時間を超えたときなどには、従業員に対して残業代を支払わなければなりません。

残業代により賃金が上がることで、社会保険料などの付随する料金も増えるため、経営を圧迫する可能性もあります。

厚生労働省の「毎月勤労統計調査」によると、実際に令和5年12月に一般労働者に対して支払われた所定内給与は326,769円、所定外給与は27,479円でした。

また、この金額を元に令和5年の東京都の保険料率から会社が負担する保険料を算出すると、所定内給与の月額であればおよそ1.6~1.9万円(厚生年金は約2.9万円)ですが、標準報酬月額には所定外給与も加算されるため、およそ1.8~2.1万円(厚生年金は約3.3万円)に上乗せされることとなります。

上記はあくまでも平均的な金額なので、自社の負担額については正確に把握しておいたほうが良いでしょう。

出典:厚生労働省 毎月勤労統計調査 令和5年12月分結果速報

出典:全国健康保険協会「令和5年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表」

 

過労による従業員の健康リスク

長時間労働は、従業員にとってストレスや疲労が溜まりやすくなるために、体調を崩してしまうリスクが高まります。

厚生労働省の調査では、令和3年11月から令和4年10月の1年間で、1か月の時間外・休日労働が80時間を超えた労働者のうちおよそ2割が、該当月に医師による面接指導を受けていることがわかりました。

残業の多い環境は、慢性的な病気を引き起こすリスクもあり、従業員の身体と心に大きな負担となるため、結果として企業全体の生産性の低下につながる恐れもあります。

出典:厚生労働省「令和4年労働安全衛生調査(実態調査)」の概況

 

会社がペナルティを受ける恐れがある

「働き方改革関連法」の時間外労働の規制に伴い、残業時間の上限は原則として月45時間(年360時間)と定められています。

万が一、年720時間以上の残業が認められた場合には、労働基準法第119条に基づき、事業主や企業側に罰金が課されることになるので、上限時間を超える残業をさせてはいけません。

また、法律違反により世間的なイメージが悪化すれば、企業にとっては重大なダメージとなることもリスクとして考えておかなくてはなりません。

【図版】「働き方改革関連法」の時間外労働の規制

出典:厚生労働省 時間外労働の上限規制|働き方改革特設サイト

 

モチベーションの低下により離職率が高まる

内閣府の調査によると、初職からを転職した理由として、「労働時間・休日・休暇の条件がよくなかったため」と答えた割合は23.4%と、「仕事が自分に合わなかった」「人間関係が良くなかった」などの理由に次いで多いことがわかります。

このことからも、慢性的な長時間残業により、休息時間が減少すると、従業員の仕事へのモチベーションが低下してしまう可能性があります。

【図版】【16歳~29歳】初職の転職理由TOP5

出典:内閣府 平成30年版「子供・若者白書(全体版)」

 

残業を防ぐための対策とは?

残業を防ぐための対策とは?

残業を防止するためには、業務過程や勤務時間、労働環境を見直す必要があります。

管理ツールやサーベイツールなどの新しい手段を取り入れて、勤務時間や従業員の満足度を見える化することも重要です。

ここからは、残業を防ぐための解決策について解説します。

 

 

労働環境を見直す

残業対策を考えるためにはまず、自社の労働状況を見直さなければなりません。

残業がどのくらい発生し、何が原因となっているのかについて明らかにすることで、改善に必要な施策を立てることができます。

残業の実態について従業員の声を収集するのも有効な手段といえます。

 

業務の進め方を明確にする

業務過多による残業を防止するための有効な手段として、業務の進め方を明確にすることが挙げられます。そのためには、まず具体的なタスクを明確にし、優先度や期限別に管理する必要があります。

業務にあたる従業員それぞれの負担を均等にするためにも、タスク管理は非常に重要です。

また、適切な業務分担を行うことで、業務の属人化を防止し、一人ひとりが最適な仕事量で業務を進められるようにすることも大切です。

誰が進めても同じ時間で同品質の作業となるように、マニュアルをドライブ上で管理するのも効果的でしょう。

 

残業申請制にするなど適切な管理につながる仕組みづくり

社内に残業することが良いこととして定着している場合には、その組織文化を変えていく必要があります。残業を申告制にしたり、ノー残業デーなどのルールを設けたりすることで、必要な残業だけをおこなうようにするとともに、無駄な残業を削減することが可能となります。

組織全体で残業しにくい仕組みを作ることは、勤務時間内に仕事を終わらせようという意欲や業務効率を高めることにもつながります。

 

JOB型雇用の導入

JOB型雇用とは、業務を遂行するために必要となるスキルやノウハウ、資格などを持つ人材を採用する雇用方法です。日本では採用後に業務が割り当てられる「メンバーシップ型雇用」が一般的ですが、欧米企業ではこのJOB型雇用が主流となっています。

JOB型雇用により、従業員の役割や業務範囲が明確になるため、業務範囲外のタスクを引き受けることが少なくなります。また、労働時間ではなく、個人の役割や能力で評価を行うため、固定の労働時間に縛られず、より効率的な時間管理が可能となることも期待されます。

一方で、特定のプロジェクトやタスクに対する責任が高まり、その業務を完遂するための残業が増えるリスクも考えられます。JOB型雇用を導入する際には、適した人材の見極めが重要になるでしょう。

 

タスク管理・時間管理のツールを導入する

残業を防止するために新しいツールを導入することも手段の1つです。

労働環境を整えたり、業務フローを明確にするには、勤務時間や業務の進捗状況を見える化することが最も効果的です。

タスク管理や勤怠管理を行えるツールやクラウドシステムを活用すれば、誰がどの業務を担当し、どのくらいの工数がかかっているのかを一目で判別できるため、長時間労働の防止とともに、業務の効率化や分担を図ることができます。

特に業務の役割分担が曖昧になりやすく、隠れ残業も問題視される在宅ワークを実施している企業におすすめです。

 

サーベイツールで従業員の状況を定期的に確認する

サーベイツールとは、従業員の現状や会社への満足度を調査し、組織の課題を明らかにするツールを指します。一般的に従業員の声を聞き、組織全体の改善を図ることを目的として導入されます。

調査結果をもとに労働環境の改善を行えば、従業員一人ひとりのエンゲージメントが向上し、仕事への意欲も高まることで最終的に企業の生産性を向上することが期待されます。

しかし、従業員の状況をリアルタイムで把握し、改善につなげていくためには、定期的に調査を行うことが重要です。場合によっては、調査自体が業務の妨げになり、従業員の負担を増やしてしまうこともあるので、組織全体で継続しやすいサーベイツールを導入すると良いでしょう。

 

Geppoのサーベイツールを導入するメリット

Geppoのサーベイツールを導入するメリット

Geppoのサーベイツールは、少ない設問数で課題を発見できるため、従業員の労働状況を継続して把握しやすいという特徴があります。

簡単に課題の所在を突き止められるので、労働環境の見直しや残業しにくい仕組みづくりにも役立てられます。

 

従業員に課す設問数が少ない

設問数が多く回答に時間がかかると、従業員の負担になってしまうこともありますが、Geppoでは3つ+αの質問に答えるだけなので、負担になりにくく継続しやすいという利点があります。

仕事満足度・人間関係・健康に関する質問も、全国就業実態調査(JPSED)から退職や休職の要因を導き出し、多くの人事課題を網羅できるように設計されたものであるため、回答するだけで従業員の声を吸い上げることが可能です。

 

ダッシュボード機能により課題を瞬時に明らかにできる

調査を行っても課題の所在を突き止められなければ、必要な対策を講じることは困難です。

Geppoには、アンケート結果をリアルタイムでアップデートするダッシュボード機能が備わっているため、変化を瞬時に察知し、課題の所在を明らかにすることができます。

専任の担当者による手厚いサポートもあり、適切に運用できる体制が整っています。

これにより、残業の原因を突き止めることができれば、直接的に施策を打つことも可能となるでしょう。

 

Geppo製品訴求イメージ

 

まとめ

まとめ

残業を減らすためには、従業員の勤怠状況や業務について適切に把握し、現状を明らかにすることが重要です。

残業の原因が明らかになったら、作業の効率化や管理を徹底して行えるような仕組みづくりに取り組むようにしましょう。

また、新雇用制度の設立やサーベイツールを導入し、労働環境を改善することも残業対策として効果的なので、必要に応じて取り入れることをおすすめします。

【監修者プロフィール】

geppo監修木下洋平 

木下 洋平

合同会社ミライオン

 

株式会社リクルートや教育研修会社での勤務後、現在は独立した専門家として活動。

キャリアコンサルタント資格を取得し、400人以上の個人のキャリア開発をサポート。

また、企業向けの人材育成・組織開発コンサルティングも手掛けており、個人と組織の両面での支援を行っている。

最新情報をお届けします

2社の人材活用ノウハウから生まれた「毎月3間」で完結するサーベイツールの資料請求はこちら