サイバーエージェント新採用責任者に聞く、サイバー流オウンドメディアリクルーティング戦略とは?

By Geppo編集部 |
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Geppo編集部
カテゴリー: 人事基礎知識 採用

アベマタワーズの外観写真

「採用には全力を尽くす」

 ミッションステートメントに、そう高らかに宣言し、「全員採用」戦略(YJC:Y=良い人を、J=自分たちで、C=ちゃんと採用する)を推進。結果として、リクルートなどと並び「採用が強い」「採用力先進企業」というブランドイメージを構築している。

2018年10月、同社の新採用責任者に、女性執行役員で事業経験も豊富な石田裕子氏が就任した。氏の就任から半年が経つが、同社の「採用広報」関連のアウトプットは目に見えて増えており、学生はもとより、HR・人事界隈でも注目を集めている。

今回はサイバーエージェント社の採用力の強さ、そしてその秘密。特に「採用広報」「オウンドメディアリクルーティング」という現在ホットなテーマに沿って、採用責任者である石田氏にインタビューを試みた。

 

採用活動を行う石田氏

株式会社サイバーエージェント 執行役員/採用戦略本部 新卒採用責任者

石田裕子

2004年、新卒でサイバーエージェントに入社。インターネット広告事業部門で営業局長・営業統括に就任後、スマートフォン向けAmebaのプロデューサーを経て、2013年に株式会社パシャオク代表取締役社長に就任。2014年、株式会社Woman&Crowdを設立し代表取締役社長に就任。2016年より執行役員に就任。

■サイバーエージェントの「オウンドメディアリクルーティング」

渡邊:オウンドメディアリクルーティングを始めたきっかけを教えてください。

石田:(オウンドメディアリクルーティングという言葉よりは)「採用広報」という言葉を使っていますが、とにかく「リアリティ」「本当のサイバーエージェント」をテーマにコンテンツを企画・運営しています。

サイバーエージェントはその事業柄、イメージの誤解が生まれてしまうこともあります。展開している事業がAbemaTVやAWA、広告代理店事業やゲーム事業など、いわゆる「エンターテイメント関連事業」なので、「華やか」「芸能界に関わることができる」などのイメージが先行してしまうのですが、実際に働いている従業員たちは本当に愚直に、日々一生懸命に業務に取り組んでいます。

実際、インターンに参加してくれた学生から「サイバーエージェントの印象が変わった!」「こんなに真面目で地に足のついた優秀な社員の方がいるとは思わなかった!」と驚かれる(笑)のですが、どんなにインターンの回数を増やしても、あまねくすべての学生にこの「サイバーエージェントの真実」を伝えることはできません。

そこで自分たちがメディア上で、オリジナルの、それも「真実」「リアル」なコンテンツを発信しようと考えてスタートしました。

■発信するコンテンツは「カルチャー」重視

サイバーエージェントの社内

渡邊:オウンドメディアリクルーティングというと、「ジョブディスクリプション(出会うための情報発信 )」「シェアードバリューコンテンツ(選ばれるための情報発信 )」に大別(参照)されるが、サイバーエージェントの採用広報は「シェアードバリューコンテンツ」に寄っている印象があります。これはなにか意図があるのでしょうか?

石田:特段そのように分けて考えているわけではないですが、サイバーエージェントは非常に強いカルチャーを持った会社である、という点が影響しているかもしれません。サイバーエージェントの強みは何?と社員に聞くと、「カルチャー」「企業文化」と回答する社員が多くいるのが当社の特徴でもあるのですが、そのくらい企業風土作りにオリジナルな強みを持っていると自負しています。

そのカルチャーをより強固にするためにも、カルチャーにマッチした人材を採用することが肝要です。最近の学生は非常に経験値が豊富で、能力も高い人材が多くいますが、そういった人材を単純に採用するのではなく、きちんとサイバーエージェントのビジョンに共感してくれ、カルチャーフィットする人材であるか、という点が採用の最重要ポイントになります。

実際2016年に改定されたミッション・ステートメントでは、

「能力の高さより一緒に働きたい人を集める。」

という一文が追加されており、能力よりもカルチャーマッチを優先することが明記されています。そのために、サイバーエージェントのリアル、カルチャーを発信するということが自然とアクションとして生まれてきており、結果として「シェアードバリューコンテンツ」が多いと言うように見えるのかもしれません。

 

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※実際に展開されている「シェアードバリューコンテンツ」の一例

●“キラキラ”の定義にモノ申す!“キラキラっぽくない”社員にサイバーエージェントの魅力を語ってもらった
https://www.cyberagent.co.jp/way/features/list/detail/id=22961

●本当に20代が活躍できる会社なのか?データから語るサイバーエージェント
https://www.cyberagent.co.jp/way/features/list/detail/id=22967

●「全てに100%を求めない」ママになって変わった私の働き方
https://www.cyberagent.co.jp/way/features/list/detail/id=22881

■サイバーエージェント流「オウンドメディア運営術」

サイバーエージェントの社屋

渡邊:実際自社ウェブサイトでかなりの数のコンテンツを配信していると思うのですが、どのように企画、管理しているのですか?また差し支えない範囲で体制や人数も教えてください。

石田:私が着任したタイミングで「採用広報チーム」を新たに新設し、人数は専属で2名体制でやっています。もちろん企画・全体戦略との整合性を取る段階では私自身も介入しますが、実際のインタビューや原稿執筆・ライティング作業は完全に任せています。最初はかなり大変そうでしたが、インタビューに応じてくれる社員も協力的で、現在ではかなり効率よく運営できていると思います。

また目標も設定しています。いろいろと複雑に設定することも考えたのですが、ECサイトのように変数が多いわけでもなく、先にも述べた通り目的が「サイバーエージェントのリアルを広く伝えること」だったので、わかりやすく現在は「PV(ページビュー)」「エントリー数」に置いています。

実際、採用広報チームとして取り組みを始めてからページビューは5倍以上に成長しました。

渡邊:5倍はすごい。その他に企画面で注力していること、気にかけていることはありますか?

石田:大事にしているポイントは、発信するコンテンツの切り口や人選です。採用コンテンツ、というと、ハキハキしていてコミュニケーション能力が高い営業職のような人や、社内で何度も表彰されているような社員ばかりを選んでしまいがちですが(それが悪いというわけではないが)、それは「サイバーエージェントの一部」であり、「サイバーエージェントのリアル」のすべて伝えたことになりません。

サイバーエージェントの約半分は、ものづくりに関わるエンジニアやデザイナー、イラストレーターなどの職種ですし、キャラクター的にも数年前と比べて非常に多様になってきています。新卒で入社したバリバリ元気な社員もいれば、出産を経験して復職したママ社員も多くいます。このような多様性自体も「リアル」に伝えていきたい。そういう意味で、「採用といえばこの人」というような定番の人を作らず、「あの人も出ているんだ!」と社員が(良い意味で)驚くような選出もしています。 

■オウンドメディアリクルーティングの副次的効果

渡邊:ありがとうございます。最後に、こうした採用広報を行ってよかったこと、特に予想外に良かったことを教えてください。

石田:学生からの評判はもちろんですが、やはり社内、インナーブランディングに効果があるという点は見逃せないと思います。

「採用には全力を尽くす」会社で、採用に関連したメディア露出をする、というのは弊社がよく使う「感情報酬」につながるものであり、そこに響いているという感覚はありますね。

サイバーエージェントのリアル、を伝える上で、社員の心の底からの協力、は無くてはならないものです。この時代、嘘をつけばすぐにバレるし、社員がいやいや協力しているのであれば、それもまたすぐに感づかれてしまいます。

そうならないためにも、金銭的報酬ではなく、感情的な報酬にきちんと採用(広報)活動をフックし、「採用に協力したい」という社員の心に火をつけることが最も大切です。そういう意味では「副次的効果」ではなく、最も重要視すべき要素かもしれませんね。

 

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