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目標管理制度(MBO)の基本ポイント|運用効果を高めるためのコツ目標管理制度は、社員個人やチームごとに目標を定め、その達成度を評価基準とする仕組みのことです。社員とチームや会社の目標を擦り合わせることによって、自発的な行動を生み出し、人材育成につなげる狙いがあります。

日本でも多くの企業が導入している制度ですが、正しく運用しなければ誤った結果につながる恐れもあるので注意が必要です。

この記事では目標管理制度を正しく運用するコツや新しい仕組みであるOKRについて解説します。

目標管理制度とは?

目標管理制度とは?目標管理制度を適切に運用していくためには、まず基本的な概念と多くの企業で導入されている背景をおさえておく必要があります。

ここでは、言葉の定義や導入のねらいについて解説します。

●目標管理制度の定義

目標管理制度とは、「Management By Objective」のことで、略称MBOと呼ばれています。ピーター・ドラッカーが1954年に刊行した『現代の経営』において提唱したマネジメント手法です。

大きな特徴としては、社員個人の目標と会社が掲げる目標をリンクさせることで、社員のモチベーションを高め、人材育成につなげる点があげられます。

トップダウンで目標を課すノルマ管理とは異なるものであり、目標設定の場においては社員本人も参加します。

MBOは、社員とのコミュニケーションを重視し、仕事に対するやりがいを持ってもらう手法として導入されるケースが一般的です。

なお、目標管理とMBOは本来的な意味合いは同じですが、日本においてMBOはフレームワークの一つとして捉えられています。

●日本でも多くの企業が導入している

目標管理制度(MBO)は、バブル経済崩壊後の日本で広く取り入れられるようになりました。社内の限られたリソースを最大限に活かしていくために、社員と組織が同じ方向に向かって行動する必要性が生じたことが背景と考えられます。

MBOの特徴として、目標達成と人事評価が密接にかかわっている点があげられます。社員が決めた目標をどの程度達成できているかを把握しやすく、評価基準と照らし合わせることで、公平性の高い人事評価の実現が可能です。

また、社員自らが目標を設定することで仕事の達成感を抱きやすくなり、結果的に組織全体のパフォーマンスを高められるため、多くの日本企業で導入されています。上司と部下の連携においても運用できる仕組みであるため、日本企業の風土に馴染みやすかったと予測できます。

●人事評価のための手法ではない

本来MBOの位置づけは、上司と部下が互いにコミュニケーションをとりながら、組織と個人の目標を擦り合わせることにあります。それによって社員が仕事に対するやりがいを見出し、上司がそれをサポートして成果を高めていくプロセスを構築することが重要です。

ただ、評価者が多くの部下を抱えている場合、社員一人ひとりの目標管理をきちんとサポートできないケースがあります。

複数の社員と面談を行わなければならず、早く評価を下そうとして成果ばかりを重視してしまう恐れがあるので気をつけましょう。

成果だけを意識した人事評価を行ってしまえば、不公平感が生じることにもなりかねません。

目標達成のためのプロセスを軽視して数値目標達成の効率だけを考えるようになってしまっては、人材育成とはかけ離れたものとなってしまいます。

つまり、MBOの運用に失敗してしまうと、単にノルマ管理を行うだけとなってしまい、社員のモチベーションをかえって低下させてしまう原因となってしまうのです。

複数の評価者を設置し、1人の評価者に業務が集中しない仕組みを整えるなど工夫しながら対処しましょう。

 

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目標管理制度を導入することのメリット

目標管理制度を導入することのメリット目標管理制度を導入することで得られるメリットとしては、「人事評価の最適化」「人材育成」「社員個人とチームの連携強化」などがあげられます。

それぞれのポイントについて解説します。

●人事評価が最適化される

MBOは進捗状況や中間地点での成果をチェックしやすいため、評価基準と照らし合わせることで適正な人事評価を行うことができます。

公正な人事評価がベースとなること、目標設定と達成度が明確になることで、社員のモチベーションアップが期待できる点もメリットといえるでしょう。

●人材育成につなげられる

MBOは、会社が一方的に目標を定めるのではなく社員自身が目標を設定するため、人材育成に結びつけやすいという特色があります。

自ら定めた目標を達成するための自発的な動機が働き、スキルアップの必要性を感じやすくなるなど、社員自身のセルフマネジメント力の向上が期待できるのです。

また、MBO運用により評価者とのコミュニケーションが自然と緊密になります。頻繁に連携するプロセスそのものが、社員のコミュニケーション能力や課題発見力の向上につながるのです。

●チームと個人で目標を共有しやすくなる

MBOを導入することで、社員は自らの業務が組織や社会に対してどのような影響を与えているかを認識しやすくなります。

目標設定時に社員と組織の目標をリンクさせることで、自分の働きが会社全体にどのような影響を与えるかが明確になります。ひいては、自社が生み出す製品やサービスの意義を見出すことにもつながっていくのです。

MBO運用を通じて、会社、チーム、社員が一体となって同じ方向に行動していくための結束力を強めることができるといえるでしょう。

目標管理制度のデメリットと対処法

目標管理制度のデメリットと対処法目標管理制度にはさまざまなメリットがある一方、少なからずデメリットも存在します。

どのような点に気をつけるべきかを踏まえたうえで、対処法について解説します。

●目標を低めに設定してしまう

MBOの運用で気をつけておきたい点は、目標の達成そのものが目的化してしまうことです。

目標達成だけに意義を見出してしまうと、初めから達成しやすい目標を設定するケースが増え、MBO運用で期待できるはずのメリットがデメリットになってしまうことも考えられます。

社員一人ひとりのスキルや適性を細かく把握したうえで、最適な目標レベルを設定しておくことが重要です。

●目標に定めていない業務がおろそかになる

MBOの運用によって、目標達成のためのモチベーションや仕組みが強固になっていくことは重要です。一方、直接的に成果につながらない業務がおろそかになってしまうという可能性もあります。

たとえば、売上に直結しない接客や、将来的な投資になる業務の設計や改善などが雑になってしまうと、会社にマイナスの影響をもたらすことになってしまいます。

MBOを実施する場合でも、情意評価(勤務態度や仕事に対する意欲)を評価基準に含めるなどして、多角的な視点で評価をすることが大切です。

●プロセスを軽視しがちになる

MBOでは良くも悪くも目標達成に意識が向いてしまうため、評価対象としてプロセスそのものを軽視してしまう恐れがあります。

定期的に面談を行うことで、目標達成に向けてどのような工程をたどったのかをチェックし、人材育成に結びつけていくことが大切です。

運用効果を高めるための5つのコツ

運用効果を高めるための5つのコツ目標管理制度を導入しても、効果的に運用しなければ思ったような成果を得ることができません。

ここでは、運用にあたっておさえておくべき5つのコツを解説します。

● 1. 目指すべき目標を分かりやすく伝える

MBOの運用を成功に導くためには、まずチームや会社が抱えている課題を洗い出して、社員にしっかりと伝えることが肝心です。そのうえで、社員の目標と組織の目標がどのようにリンクするのかを検討してみましょう。

MBO導入によって社員や会社が抱えるどのような問題を解決、改善できるのか、初期段階できちんと共通認識を持っておくことが重要です。

● 2. 社員自身による目標設定

会社としての目標を社員に理解してもらったら、次に社員と相談をしながら個人目標を設定します。

「目標達成のために何ができるか」

「目標を達成するまでの過程で、どのように自分の成長につなげられるか」

といった視点を持つことが大切です。

評価者である上司は、社員が設定した目標が会社の目標とリンクしているか、社員の現在のスキルと見合っているかといった点をチェックしましょう。

● 3. 円滑なコミュニケーションをとる

目標を設定したからといって、成果を出すまで放置してしまっては、ただのノルマ管理になってしまいます。

目標の進捗状況や達成度合いを定期的にチェックし、必要に応じて目標の再設定も行いましょう。

● 4. 達成期間や目標レベルをチェックする

MBOでは目標を定める区切りの期間として、6~12ヵ月とするケースが多くみられます。目標レベルや社員のスキルによって、適切な達成期間は異なりますが、必要以上に期間が長いとモチベーションを維持するのに苦労してしまうからです。

まずは短期間で達成しやすい目標を設定して、徐々に目標レベルを高めてみるのも一つの方法です。

● 5. 明瞭な人事評価制度の構築

MBOを効果的に運用するためには、公平・公正な評価基準を設けてあらかじめ説明しておくことが重要です。どの程度の目標を達成すれば、人事評価としてプラスとなるのかを明示しておけば、評価に対して社員自身の納得感が高まりやすくなります。

新しい目標管理制度「OKR」

新しい目標管理制度「OKR」目標管理制度が抱える問題を解消するための新しい考え方に「OKR」があります。

ここでは、目標管理制度との違い、OKRの特徴について解説します。

●MBOとOKRの違い

OKRは「Objectives and Key Results」のことを指し、MBOと大きく2つの点で異なっています。

まず一つ目の違いはサイクルの長さです。MBOの目標達成サイクルは通常6〜12ヶ月ですが、OKRのサイクルは3ヵ月程度と短めです。

社員のモチベーションを比較的保ちやすいのが特徴といえます。

二つ目は人事評価の違いです。MBOでは目標の達成度合いと人事評価を結びつけますが、OKRは基本的に人事評価とは切り離します。

OKRでは、高いレベルで目標を設定することで、目標の達成よりも人材育成につなげたいという意味合いを強く持つのです。

●OKR を導入することで得られる効果

OKRを導入することで得られる効果は大きく2つあります。

一つ目は、仕事に対する意欲向上効果です。

目標達成のためのサイクルが短いため、チームや組織内での結束力を高めやすくなります。社員はメンバーの一員としてチームの目標を共有することになり、モチベーションが高まりやすくなるでしょう。

二つ目は、スキルアップ効果です。

OKRはトライアルアンドエラーの考え方を前提としています。そのため、社員自身が創意工夫してスキルアップの実現を図ることができるのです。

失敗を許容し、挑戦的に仕事に取り組んでいく人材を育てるフレームワークとして有効な手法といえるでしょう。

社員と組織が抱える課題を可視化しよう!

目標管理制度を導入すれば、社員個人と会社の目標の擦り合わせができ、仕事へのやりがいを持ってもらうことで人材育成につなげられます。一方で、正しく運用しなければ単なるノルマ管理になってしまい、かえって社員のモチベーションを低下させることになってしまいます。

目標管理制度の運用で悩んでしまったときは、個人と組織の課題を見える化できるGeppo(ゲッポウ)を活用してみましょう。社員・組織双方が抱える課題を明らかにすることで、どのような施策を実行すべきか判断しやすくなります。社員が発する危険信号や心のモヤモヤをいち早くキャッチするツールとして、Geppoを役立てられるはずです。

 

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