カテゴリー: 人事基礎知識 人材育成

オンボーディングとは?人材定着のために行うべき施策と事例

人材の流動化が進む雇用環境において、いかに社員を定着させるかは、どの企業においても重要な課題です。せっかく新入社員を採用しても、早期離職となってしまえば組織が抱える課題を解決することが難しくなってしまいます。

社員の定着を図り、戦力として業務に励んでもらうため、組織でサポートをすることを「オンボーディング」といいます。今回はオンボーディング実施で得られる効果や必要な施策について、詳しく解説します。

オンボーディングの意味と実施する狙い

オンボーディングの意味と実施する狙い

オンボーディングとは、自社に新しく入ったメンバーが早期に活躍できるように、組織的なサポートを行う仕組みを指します。人材教育・人材育成に関する教育プログラムの1つであり、新メンバーを即戦力化して、離職を防ぐといった狙いがあります。

新入社員を対象とした取り組みとしては、入社後に行われる研修やオリエンテーションがあげられますが、オンボーディングは短期集中型のものではありません。継続的に新入社員に対して働きかけを行っていく取り組みです。

欧米社会では人材育成のための教育プログラムとしてオンボーディングが浸透しており、「組織や業務内容に関するインプットを進める」「ランチを設定してメンバーとの交流を深める」「専属のメンターがついて疑問に答える」などの施策が実行されています。多くの企業や業界が取り組んでいる試みであり、自社に合った教育プログラムを構築することが重要です。

オンボーディングの効果と重視される背景

オンボーディングの効果と重視される背景

オンボーディングを取り入れる際は、得られる効果をきちんと把握しておくことが大切です。オンボーディングが注目される理由も交えて解説します。

●オンボーディングで得られる効果

オンボーディングの実施によって得られる効果として、次の5つがあげられます。

  • 会社に対するコミットメントの増大
  • 高い従業員満足度(ES)
  • パフォーマンスの向上
  • 職場に対するストレスの緩和
  • 離職防止

 

社員個人と組織が価値観やビジョンを共有することで、社員のパフォーマンスを高められます。また、働きやすい環境を整備し、社員が自社に対する愛着心を持てるようになれば、自ずと離職防止にもつながっていきます。

オンボーディングは、社員を直接指導する上司やチームメンバーだけでなく、全社的な取り組みとして進めていく必要があります。経営陣や関連部署との連携を図り、しっかりとフォローアップが実行される状況を構築しましょう。

●オンボーディングが注目される理由

オンボーディングが注目される理由としては、「早期離職による人材定着率の低下」「戦力化するまでに時間がかかる」の2点の改善につながるからであると言えます。それぞれの理由について、ポイントを解説します。

早期離職による人材定着率の低下

2018年に厚生労働省が公表した「新規学卒就職者の離職状況(平成27年3月卒業者の状況)」によれば、新規学卒就職者の就職後3年以内の離職率は新規高卒就職者で39.3%、新規大卒就職者で31.8%となっています。就職をしても3人に1人は、3年以内に辞めてしまうという状況が分かります。

企業側としては新入社員に長く勤めてもらいたいと思っていても、雇用のミスマッチによって人材がなかなか定着しないという課題があるのです。そのため、オンボーディングを導入することで、新入社員が馴染みやすい職場環境を整備していく必要があります。

戦力化するまでに時間がかかる

新入社員の視点で見れば、会社に入って間もない頃は「業務で分からないことが多い」「分からないことを誰に聞けばいいかが分からない」といったストレスを感じやすいものです。また、企業側としても人材を育成するプログラムが整っていなければ、場当たり的な指導となってしまい、思うように人材の成長につなげられないといった課題を抱えてしまいます。

新入社員が成果をあげるまでの体験をスムーズに進めていく仕組みがオンボーディングであり、従業員体験(EE)を最適化するために必要不可欠な要素です。社員のモチベーションを高めることは、パフォーマンスの向上にもつながるため、多くの企業がオンボーディングに注目しています。

 

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オンボーディングを実施するための5つの施策

オンボーディングを実施するための5つの施策

オンボーディングを効果的に実施していくためには、一連のプロセスをきちんと押さえておく必要があります。ステップごとに重視すべきポイントについて解説します。

●入社前は横の人間関係が必要

人材の定着化への取り組みは、新入社員を迎え入れる前からすでに始まっています。新しい職場で働こうとする社員は、「仕事についていけるだろうか」「チームのメンバーとうまくやっていけるだろうか」といった不安を抱えてしまいがちです。

新入社員は孤立感を抱きやすいため、フラットな気持ちで業務や人間関係に関する悩みを相談できる環境整備が企業側には求められます。ポイントとしては、内定者研修などを通じて、同じ境遇である同期と交流を深められる機会を提供することです。

新入社員に対しては上司や先輩社員といった縦のつながりのメンバーが接する機会が多いですが、まずは新入社員の立場に立って横のつながりを広げられるようにアプローチをしてみましょう。自分と同じ立場で働く同期がいるだけで、新入社員の心理的安定につながるはずです。

●入社後は縦の人間関係を意識したコミュニケーションをとる

入社後は社風に馴染んだり、業務を覚えてもらったりするためにも、直属の上司や先輩社員との関係性が重要になります。この段階で大事なことは、初めから高い目標や成果を求めてはいけないという点です。

新たな業務にチャレンジをしてもらうときは、職場内に「失敗してもいい」という雰囲気を作り、心理的安全性を担保してあげましょう。まずは主体的に業務に取り組んでもらうことを大事にして、新入社員のモチベーションを維持することが大切です。

また、新入社員は「誰に相談をすればいいか分からない」といった悩みを抱きがちなので、どこ(誰)に・何を相談できるのかをあらかじめ伝えておきましょう。いつでも相談できる環境を整えておき、安心して業務に取り組んでもらうことが重要です。

●目標は2つの観点から設定しよう

社会人経験のない新入社員は、会社側がきちんとした目標設定を行い、適切な経験を積ませ、必要な教育を行わなければ、いつまで経ってもスキルが身につかないといった事態を招きやすくなります。必要なスキルが身につかなければ、思ったように成果を出すことができず、新入社員のモチベーションの低下や早期離職につながる恐れもあります。そのため、新入社員に対してどのような活躍を望み、スキルを身につけさせていくかをハッキリとさせるために、具体的な目標を設定しましょう。

目標設定においては、会社に慣れてもらうためのコミュニケーションの観点と、スキルを身につけさせるための業務上の観点の両方が必要です。社員個人が取り組むべき課題と、チーム全体で進めるべき課題も明確にしておきましょう。

人材教育に関するプランを立てるときは、入社から1年程度の期間を目安にスケジュールを組むのが適しています。中長期的な目標だけでなく、新入社員が業務に対する自信をつけやすくするためにも、短期的な目標も設定して成功体験をつんでもらうようにアプローチをしてみましょう。

●期待値をすり合わせることが重要

新しく組織に入ってきたメンバーに対しては、チームとの期待値のすり合わせを行いましょう。新入社員に期待されている成果の認識が、管理職との間にズレが生じている可能性も少なくないからです。また、新入社員が求めていることや得たいスキルなどもヒアリングし、目標とすり合わせていくことでモチベーションにもつながります。

この育成プランは、定期的に見直しを行ってすり合わせていくことが大切です。プランは一度作成して終わりではなく、必要に応じて改善していくことで効果を発揮するため、定期的な現状ヒアリングと成果の振り返りを行いましょう。

●人材定着を図るには他部門との交流も大切

新入社員がある程度仕事に慣れて、会社の雰囲気にも馴染んできた段階では、長期的な目標が見つかりづらくなってしまうという場面があります。同じ部署や部門の人のみとの交流では、思うようにキャリアを広げられない可能性があり、モチベーションが下がる要因につながってしまうのです。

他部門との交流によってさまざまなキャリアパスがあることを知ってもらい、会社への帰属意識を高めてもらえるように工夫をしてみましょう。具体的には、他部門との交流会を開いたり、他部署の先輩社員をメンターとしてアサインする方法があります。

オンボーディングをうまく機能させた事例

オンボーディングをうまく機能させた事例

オンボーディングをきちんと機能させるには、実際に取り組みを行っている企業の事例から学ぶことが大切です。社員と組織の課題を可視化させる「Geppo(ゲッポウ)」の導入事例を基に、各社の取り組みについて紹介します。

●【ARISE analytics】1on1ミーティングを最適化し人材育成に取り組む

ARISE analyticsは、国内最大規模のデータと最先端のデータ処理・分析技術を持つ企業です。ジョイントベンチャーならではの課題として、拡大する事業と人材の定着をどう結びつけるかが課題でした。

Geppoの導入前にも1on1で声を吸い上げるなどしていたものの、十分に社員個人が抱える課題を拾いきれていませんでした。社員が増え、マネジメント層が社員一人ひとりの状況を把握することが困難になってきたという組織的な課題も生じていたのです。

Geppoを導入してからは、新入社員との1on1を補うツールとして活用しています。定期的なヒアリングによって、手軽にピンポイントで解決すべき課題を発見できる点にメリットを見出し、取り組みを続けています。

▼ARISE analyticsの活用事例はこちら
https://www.geppo.jp/blog/ariseanalytics

●【未来】本音が言える環境づくりで、新卒採用者の定着を実現

株式会社未来は自社開発している化粧品や健康食品を商材とした、スタートアップ企業です。『離職が一定数ある』、『離職の予兆を掴めていない』といった人事課題ありました。

導入前、一定数ある離職や、会社カルチャーにフィットしていると思っていた社員が突然辞めてしまう要因は、経営層や上司に本音を言いにくい環境もあると考えました。そのため、社員にとって心理的安全性の高い環境づくりに取り組む必要性を感じ取り組みを始めました。

Geppoを導入後は、心理的安全性を考え回答の閲覧権限を絞ることで、回答率はほぼ100%維持しています。アラートが発生した場合、スピードを重視し1カ月以内に面談をし、社員が本音を話せる環境を心掛けています。また、独自で設定できる4問目の質問で「入社理由」を聞くことで、社員が会社に求めることがわかり、採用における広報にも活用することができました。この取り組みにより、未来は新卒採用者の定着を実現することができました。

▼未来の活用事例はこちら
https://www.geppo.jp/blog/mirai

●【ミュゼプラチナム】新入社員に実施しオンボーディングに活用

株式会社ミュゼプラチナムは、美容脱毛サロン「ミュゼプラチナム」の運営や化粧品の商品開発販売を行っています。『業界内では離職率は低い』が、それでも毎年数百名を採用しており、『定着率の向上』が課題でした。

ミュゼプラチナムでは、以前から社員の定着率を上げるため、さまざまな取り組みをしてきました。子供を持った社員のため『週休3日制度』をトライアルで導入したり、先輩スタッフが1対1でフォローする「タギー制度」では、先輩社員にも「新入社員は自分たちで育てる」という認識を育てています。

Geppoは新入社員のオンボーディングに活用し、使用方法や導入意義の説明を新人研修で取り込みました。その結果回答率は80%を超え、会社が認識していたよりも、健康に関しての意見が多いことなど、新しい発見をすることできました。またエリアマネージャーには、アラートがでたら面談などで対応するよう啓蒙をし、オンボーディングの強化に利用しています。

▼ミュゼプラチナムの活用事例はこちら
https://www.geppo.jp/blog/musee-pla

新入社員の視点に立って必要な施策を実行しよう

新入社員に長く勤めてもらうためには、受け入れる側の企業において教育プログラムをきちんと整えておく必要があります。短期的な取り組みではなく、長期的な取り組みとして継続させるために、オンボーディングの基本的なポイントを押さえておきましょう。1つ1つのステップを確認しながら、社員と双方向のコミュニケーションをとっていくことが重要です。新入社員の定着を図るために、Geppoをぜひ活用してみましょう。

 

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