カテゴリー: 労働問題

いよいよ残り1ヶ月を切った2019年。今年は来年に迫る東京オリンピックの準備の1年でもありました。競技場の整備や宿泊先の拡充に加えて、交通混雑の懸念についても、混乱発生防止・混雑緩和のための実証実験が行われました。それが「テレワーク・デイズ2019」です。

「テレワーク・デイズ2019」は2019年7月~9月に実施され、のべ68万人が参加した政府主導の取り組みです。そして、その効果を振り返るために、11月11日、「テレワーク・デイズ2019」の報告会が開催されました。今回は報告会関連の記事を通じて、「テレワーク・デイズ2019」全体を振り返ります。 

 

telework-days

①テレワーク・デイズ2019について

<出典>公式サイト(https://teleworkdays.jp/

●テレワーク・デイズ2019とは

テレワーク・デイズ2019は、オフィス以外で働く「テレワーク」の試行を促すために実施された政府による全国キャンペーンです。2020年東京オリンピックの開会式にあたる7月24日を「テレワーク・デイ」と位置づけ、2017年から働き方改革の国民運動として展開しています。

3度目となったテレワーク・デイズ2019の実施期間は7月22日から9月6日まで。1ヶ月半の期間で、約68万人・2887団体が参加したことが発表されました。この数字は昨対比で約2倍だといいます。

オリンピック期間中は観客の移動で交通混雑が予想され、政府はオフィスに出社しないテレワークを交通混雑の回避策として推進したいと考えています。そのため都内企業に対してテレワーク・デイズ2019を「大会前の本番テスト」として、これまでより積極的なテレワーク実施を呼びかけていました。

●テレワーク・デイズの実施状況推移

■2017年(第1回)

期間/7月24日のみ

参加者/950団体・約6万3000人

 

■2018年(第2回)

期間/5日間(7月23日~27日)

参加者/1682団体・30万人以上

 

■2019年(第3回)

期間/47日間(7月22日~9月6日)

参加者/2887団体・68万人以上

 

②注目の記事ピックアップ(テレワーク・デイズ2019報告会)

さて、東京オリンピック前のテストという位置づけで実施されたテレワーク・デイズ2019を振り返るため、11月11日に「テレワーク・デイズ2019報告会」が開催されました。3つの記事を通じてその様子を見ていきましょう。

●「テレワーク2887団体・68万人参加、政府報告会」

<出典/日経新聞>

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO52057960S9A111C1000000/

記事の中では報告会に登壇した総務省の赤澤公省大臣官房審議官と経済産業省の小笠原陽一大臣官房審議官のコメントが紹介されています。

総務省の赤澤大臣官房審議官は「1社で延べ数万人が試したり、帰省先でテレワークをしたりと様々な活用の広がりが出てきた。今回のテレワーク・デイズの結果を踏まえつつ、さらなるテレワーク普及を推進していきたい」と今回のキャンペーンを振り返りました。

また、経済産業省の小笠原大臣官房審議官は「災害時もテレワークで事業を継続したり、余暇を過ごす地域でワーケーションをしたりとテレワークは発展しそうだ。20年は(次世代通信規格)5Gが本格的に始まる。今後もこうした新技術を踏まえて働き方改革の推進を続けていきたい」とまとめました。

●「テレワーク2887団体・68万人参加、政府報告会」

<出典/日経新聞>

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO52337210Z11C19A1000000/

この記事の中ではテレワーク・デイズ2019だけでなく、「スムーズビズ推進期間」についての東京都の報告もまとめられています。スムーズビズとは、2020年東京オリンピックで予想される交通混雑の緩和を目指して、都が提案する新しい働き方や企業活動のことです。

具体的な取り組みとしては、ITを活用して会社以外で働く「テレワーク」、交通量の抑制・分散を目指す「2020TDM(交通需要マネジメント)推進プロジェクト」、通勤ラッシュを回避するために出勤時間をずらす「時差Biz」の3つが含まれます。

これまで東京都は都内の企業に対して、スムーズビズを2019年の夏に開催すると呼びかけていました。実際には政府が同時期に実施した全国キャンペーン「テレワーク・デイズ2019」と連携し、同時実施となりました。

 

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●小池百合子東京都知事のコメント

都内で開かれたスムーズビズ推進期間の結果発表イベントでは、小池東京都知事のビデオメッセージが流れました。

その中で小池東京都知事は「2020年の五輪大会を想定して、働き方や物流の配送などでの工夫に集中的に取り組んでもらった。その結果、道路の混雑が緩和したり、鉄道で朝8時台の鉄道利用者が減ったりする成果が得られた」と推進期間の効果を振り返りました。

また、「テレワークなどの多様な働き方は、台風による鉄道の計画運休などがあっても、企業が事業を継続できるメリットがある。まだ取り組んでいない企業はぜひトライして、良さを実感してほしい」とさらなる推進・活用を呼びかけました。

 

●今後の取り組み

スムーズビズ推進期間中、道路交通についてはトラックで共同輸配送するTDMに取り組んだことにより、交通量を首都高速で約0.4%、一般道では約4%減少しました。また、交通規制などに取り組むTSM(交通システムマネジメント)の効果を加えると、首都高速で交通量が約7%減ったとされています。

しかし、都心部の道路交通量が減る一方で、圏央道では約10%~20%交通量が増えたというデータも計測されました。これは都心を避けた車両が圏央道に流れたという見方もできます。混雑をずらすだけではなく、全体を緩和する施策が今後必要になってくるでしょう。

次に働き方改革関連では、東京都は今後もより強く推進していくとし、2020年1月14日から31日にかけて「冬のスムーズビズ実践期間」を設けて、テレワークやフレックスタイム制度の試行を促すことを発表しました。

加えて、東京都の公式アプリ「TOKYOテレワークアプリ」などを通して、セミナーやイベント情報などを提供していく考えです。同アプリは11月13日に配信がスタート。都内や近郊のサテライトオフィス、東京都のテレワーク関連支援策、実施企業の事例などのテレワーク関連コンテンツを調べることができます。

 

●「痛勤」何人減ったか 68万人テレワークの成果

<出典/日経新聞>

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO52210650V11C19A1000000/

記事の中では「2020年4月から取り組みに着手すると五輪大会に間に合わない可能性がある。テレワークの実施に向けた準備はできるだけ早く着手してほしい」という総務省の飯村由香理情報流通高度化推進室長の呼びかけがフォーカスされています。

また、テレワーク・デイズ2019の効果として、「痛勤」を減らすことができた実績と、テレワーク環境整備についての課題が浮き彫りになったことがまとめられています。

●1日当たり26万人、「痛勤者」が減少

今回のキャンペーンでは、テレワークによって「痛勤」ラッシュが緩和されたといいます。具体的にはオリンピック開催期間中に混雑が予想される東京23区内の通勤者について、7月22日から26日までの5日間でのべ約124万人分が減少しました。1日当たりの数にすると、26万8000人です。

総務省の飯村情報流通高度化推進室長は「区別でみると千代田、港、新宿、中央と都心部で特に減少していた。テレワーク・デイズは交通混雑の緩和に効果が得られた。来年に向けて、競技会場近くに拠点がある企業などに対して、協力を求めていきたい」と、効果を振り返りました。

政府はテレワーク・デイズ2019終了後、参加企業に対してアンケートを実施。アンケート回答企業の約8割が「通勤などによる社員の移動時間が減った」と答えました。さらに、6割以上の企業が「業務の生産性が向上した」、「社員の生活環境が改善した」と回答。

飯村情報流通高度化推進室長はこのようなアンケート結果に対し、「テレワークによって家族とのコミュニケーションを増やせたケースもあったようだ。9月9日に上陸した台風15号で鉄道が運休したときにも、テレワークで業務を問題なく進めることができたといった声も寄せられた」とコメントしました。

 

③2020年東京オリンピックに向けて

今回実際にテレワークを実施したことで、課題が見えたという企業も少なくありません。参加企業から寄せられたのは「テレワーク環境が十分に整備されていない」、「テレワークをしている社員の勤務状況の管理が難しい」、「派遣社員や契約社員は一緒にテレワークできない」といった声でした。

テレワーク環境の不備については「社外から社内ネットワークに接続しようとしたが、初めてのことで設定がうまくいかなかった」、「ウェブ会議システムを使ったが音声品質に問題があった」といった指摘も。

また、ある参加企業では「部下と上司のコミュニケーションが希薄になる」、「労務管理がしづらくなる」といった課題がみえてきたといいます。対策としてはビジネスチャットアプリを導入してコミュニケーションを取りやすくすることや、パソコンのログを取得して労務管理を効率化することを検討しています。

テレワーク導入を成功させるには、社員に向けた教育研修や就業規則の整備、情報セキュリティー対策など様々なことにとりくまなくてはなりません。いよいよ来年に迫ったオリンピック開催に向け、多くの企業が対応を求められています。

 

④まとめ

今回の記事では日経新聞の3つの記事を参考に、テレワーク・デイズ2019およびその報告会について振り返りました。世界各国から観光客が東京へと押し寄せる2020年東京オリンピックに向け、今回のキャンペーンは有効な検証結果を得られるものだといえるでしょう。

また、今回の取り組みが全国各地でも行われることになれば、働き手は時間や場所に縛られることなく仕事ができるようになるはずです。2本目の記事内でも紹介しましたが、次は2020年1月14日から31日にかけて「冬のスムーズビズ実践期間」が予定されています。

テレワーク・デイズ2019には参加できなかったが、テレワークやフレックスタイムといった新しい働き方に興味・関心があるという場合は「冬のスムーズビズ実践期間」のアナウンスを参考に、チャレンジしてみてはいかがでしょうか。

 

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