カテゴリー: セミナーレポート

MURC×Geppoセミナー


三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社で組織人事領域のコンサルティングを行っている古川様をお招きし、Postコロナにおいてアンケート結果を踏まえて取り組むべき課題と、考えられる施策についてお話いただきました。また、Geppoのスコアが前年比べてどのように変化したのかその特徴についてもご紹介しております。



【登壇者情報】
2020年11月26日(木)
人事コンサルタントに聞く、Postコロナ時代に取り組むべき組織課題とは。
ー新常態に向けたエンゲージメント/生産性向上事例ー

■スピーカー
古川 琢郎 様
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社
コンサルティング事業本部 組織人事ビジネスユニット ヒューマンキャピタル部
シニアマネージャー

■モデレーター
林 辰星
株式会社ヒューマンキャピタルテクノロジー
最高顧客責任者

2_人事が取り組むべき3大課題と施策の整備


古川 今まさにGeppoのスコア変化の話がありましたが、弊社もGeppoを導入しておりまして、そういった経緯もあり今回のセミナーをさせていただいております。

実際弊社のコンサルタントのスコアも先ほど林さんから話のあった全体の傾向と同様に、健康の改善や人間関係良化をしております。

それでは、本セミナーのテーマである取り組むべき組織課題という話に入っていきたいと思います。弊社でおよそ500社に対して実施した、企業人事部門に対する「新型コロナ対応への課題とワークスタイルの変化について」(https://www.murc.jp/wp-content/uploads/2020/09/cr_200902.pdf)というアンケートでは、「生産性の維持・向上の困難さ」「業務のIT化と社内システム環境整備の困難さ」「業務指示・人事管理・人事評価の困難さ」がトップ3でした。

先ほどのGeppoの結果や弊社で実施したアンケート結果などを踏まえて、弊社として大きな取り組むべき課題として考えているのは3点になります。

1.働き方の弛まぬ更新による生産性向上

2.人的基盤の柔軟性向上にむけて、人事制度だけではなく管理するシステムや根底にあるカルチャーなど含めた人的基盤の柔軟性を上げていく

3.社員のエンゲージメントの向上

本日すべてを細かくご紹介はしませんが、この3つの大きな課題に対して考えられる施策を紹介しています。

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まず3つの課題全てに響く施策(スライドの領域1)は、人事ビジョンや人事制度の策定、人事部門組織の見直し等で、これらは課題全般に対する根本的な施策といえます。3つの課題のうち2つに対し効果がある施策(スライドの領域2~4)は、人材ポートフォリオの構築・刷新や、企業ウェイ・バリューの明文化と浸透、それからグローバル化やM&Aに伴う変革施策です。

その他に、3つの課題それぞれ個別に効果のある施策(スライドの領域5~7)もあります。生産性向上であれば柔軟な働き方整備や業務のDX・アウトソーシング、人的基盤の柔軟性向上であれば同一労働同一賃金の考え方整理やタレントマネジメント、エンゲージメント向上であればサーベイの実施やエクスペリエンス向上のための取り組みが考えられます。

各社すでに実施していたり、問題意識や課題認識の強さには差があると思いますので、自社にとって重要なことは何かと参考にしていただければと思います。

本日は特に、本セミナーの主題にもなっておりますが、弊社も直近半年程度でお問い合わせ等たくさんいただいているところにフォーカスして事例を2つ紹介させていただきます。

また、本事例は前年度から今年度にかけて実施したものではありますが、必ずしもコロナ影響が含まれた前提ではないことと、企業の特定を避けるために一部脚色したり複数の事例を組み合わせていることご了承ください。

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事例①ジョブ型の等級制度への移管 

本事例企業の課題は、グループ各社における統一的な基準・目線で職務評価を行うことで、グループとしての異動配置の考え方を統一し、より柔軟な異動配置を推進することでした。また、グループ企業には業績が悪化していた企業もあり、経営再建の一環として職務評価を実施し適正な処遇にすることで、外部への説明性を担保するという側面もありました。

プロセスはシンプルに、職務記述書を作成し職務インタビューと評価を実施という流れになります。効果は現在経過観察中ではありますが、エンゲージメントサーベイ等のアンケートにおいても、特に評価への納得感がやや高まってきているという、定量的な効果も出ております。加えて、職務記述書作成や職務インタビューを実施し、各職務・ポジションの成果の出し方が明らかになったことで、特に業績悪化している企業の再建がより加速することとなりました。例えば、法人営業等は複数の企業に存在する機能でしたので、中核的な企業でどのように成果を出しているか、どういうスキルを持った人が活躍しているのか、といったことが業績悪化企業にとって参考になる部分があり、副次的な効果を得ることができました。

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ところで、一般的に職務評価は、経理部長や人事部長、営業課長などの各ポジションの職務を評価していくことをイメージされると思いますが、本事例では組織評価としてもう少しざっくりとした評価を行っています(スライド参照)。

なぜこのようなことをしたのかというと、ポジションごとに厳格に職務評価をする場合、明確な職務定義が書けることが前提となります。ただ、この金融グループの場合、発揮してほしい成果や価値がポジションではなく、人によって異なっている部分が大きかったのです。本来それを是正するための職務評価なのですが、それをある程度許容し、組織としてどういう成果を発揮しているか、という単位で見ています。大部分の日本企業はこちらの方が合うケースも多く、こういった組織的な評価をした上で、厳密なポジション毎の評価へと段階的に変わっていく場合もあります。

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職務評価のインタビューのポイントとしてはまず、各部署や課の役割・貢献を明確化し、傘下の組織にどう分担しているか、当該組織が従来の職務評価ではどの程度の位置づけであり今後どうなっていくのか、等を確認します。職務評価は年や半期単位で見直すことが多いのですが、仮に半期後に人数が倍増する計画がある組織の場合、それを見越して評価を付けないといけません。そしてもちろんお題目でなく、実態を把握することは当然です。

評価していく上でのポイントはまず、インタビューをやりながら配点やウエイトを変えていくことです。最終的な結果が人事や組織長の皆さんに腹落ちしないと進みませんので、やりながら修正して行くことがポイントになります。もちろん元々職務評価を行っていた場合は従来の評価とのバランスも考慮しましょう。

また各社のバランスですが、先ほど話をした通り、同種の組織を会社間で比較する際は、各社のグループ内の位置づけを考慮する、ということになります。

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事例②エンゲージメントサーベイ等の複数のデータを活用したカルチャーの可視化
ーGeppoや勤怠データ、適性診断等のデータを複数活用したカルチャーの可視化や健康経営の実施ー

こちら事例企業の問題認識としては、複数のアンケート調査(パルスサーベイ、エンゲージメントサーベイ、自己申告等)を実施し、それぞれで課題や施策を現場に返していたのですが、それだと現場はどのように対応したらいいかわからなくなってしまっているということでした。ストレスチェックやパルスサーベイの中で健康状態を回答してもらっている一方で、エンゲージメントサーベイはエンゲージメントのみ回答してもらっていたりと、両者の関係性が見えないというところもあり、構造化していきたいということが課題になります。

パルスサーベイやエンゲージメントサーベイ等のアンケート、属性情報をもとに、成果指標とそれに影響を与える要素を統計的に明確化し、優先施策を出していくことになりました。

また、営業系組織や技術系組織等、求められる成果の種類や成果の出し方が異なる場合、エンゲージメントに影響する要素も当然変わるはずで、機能や組織ごとにも見ています。

効果としては、現在弊社でも経過観察中ではありますが、徐々に改善していっている部分があります。余談になりますが、弊社のエンゲージメントサーベイでは、ワークエンゲージメントという要素に着目しております。従業員エンゲージメントは様々な定義があり、eNPSや組織へのコミットメントなどありますが、ワークエンゲージメントとは仕事に活力を得ているかや没頭しているかといった指標になります。それが高いと健康・組織アウトカム(業績・生産性向上、離職意思低下やコミットメント向上等を含む概念)が増大することが、アカデミアでも数多く指摘されております。

ゆえに成果指標として抑うつ感、組織コミットメント、ワークエンゲージメントを設定し、そこに影響を与えている要素が何かを分析しています。

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データ元としては、上司や同僚のサポート、意見具申のしやすさ等はパルスサーベイから取得し、ワークエンゲージメントや組織コミットメントについてはエンゲージメントサーベイから取得、男女比等は所属データ等から取得しています。

結果ですが、当初仮説が検証されたこととしては、1on1の実施回数や役割認識が重要な要素であるということが挙げられます。また意外な発見としては、チャレンジ環境は組織コミットメントと同時にワークエンゲージメントに対しても重要な要素であること、女性割合が上司や同僚のサポートの大きさに関係があることでした。

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機能・組織別の違いということに関しては、例えば管理系組織と開発系組織によって特徴が違うことがわかりました。エンゲージメントが高い組織と抑うつ感が低い組織の共通項を分析したところ、管理系は業務分担や改善の取り組み、風通しが良いほどエンゲージメントが高く抑うつ感が低い。開発系では、新しい取り組みや成長実感がキーになっていることが見えてきました。

エンゲージメントが低い組織に打ち手を打つ際、全社で打つべき施策も当然ありますが、企業や部署ごとにカルチャーや価値観が異なるので、違う優先度の施策が出てくるべきだと考えています。

こういった取り組みではデータ分析を行う前に、事前に仮説を構築することが非常に大事なポイントになります。人事領域というのはシステム化が進んでますがどこまで行ってもビッグデータにはなりません。ミドルデータともいいますが、マーケティング領域の数十万・数百万のデータの中で特徴を見出して施策を考える、というようにデータ量で押していくことは難しい領域で、一社の中で蓄積されるデータ量は限られております。そのため仮説の精度と量が非常に重要になってきます。仮説を考える上では、自社での経験値から仮説を立てていくのが有効です。

加えて、過去の学術研究等でも、こういう傾向が見えたときにはこういった施策が有効である、といったことが証明されていたり、関係性が立証されていることがが多くあるので、使わない手はないと思います。また、他社がどういうモデルを作って実証したかというのも参考になると思うので、それらを取り入れて精度の高い仮説をデータ・理論・経験値を融合させて作っていくことが大事なポイントになります。

 ありがとうございます。

1点質問させていただきたいのですが、リモートワーク時のマネジメントを行う際の注意点を教えていただけないでしょうか

古川 リモートワーク時にすべてを集約した課題で言うと、非言語の情報が減るというところが問題点かなと思います。そこを補うためにエンゲージメントや様々な適性診断等も使いながら、今までと違う形で情報を取得していくことでどういったコミュニケーションが適切なのかという前提のもとコミュニケーションをしたりですとか、会話しているなかで性格や目標等理解していたものをシステムやデータツールを使って集めていくことが大事だと思います。

 ありがとうございます。それでは、本日のセミナーはこちらで終了させていただきます。本日は大変貴重なお話をしていただきありがとうございました。


同セミナー記事は Geppoスコアから見えてくる、コロナ禍におけるコンディションの変化 をご覧ください

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