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COVID-19の世界的流行を契機に、企業活動においてはテレワークが今までにないスピード感で実装・運用され、その他「3密」を避けるために様々なことが「オンライン」上で行われるようになりました。

コロナ禍における情勢の変化から、リモートワークを実施する企業が増えた中、事務所を解約し、完全リモートワークに舵を切ったオーバーフロー社と、オフィスワークを推奨しているサイバーエージェント社。この2社がどのようにしてその決断に至ったか、またどのように工夫をされているかなど討論いたしました。

【登壇者情報】
2020年9月10日(木)
徹底討論:従業員のモチベーションを引き出すためにリモートワークとオフィスワークを如何に組み合わせるか?会議

■スピーカー
鈴木裕斗
株式会社overflow(https://overflow.co.jp/
代表取締役 CEO

寺脇 英雄
株式会社サイバーエージェント (https://www.cyberagent.co.jp/
新卒採用人事

■モデレーター
渡邊 大介
株式会社ヒューマンキャピタルテクノロジー(Geppo)
取締役


渡邊 実際にオフィスを無くしてみて、あんまりネガティブサイドはないと思うのですが、ポジティブサイドはありましたか?

鈴木 先ほどの資料もあったように、ポジティブとネガティブの対立構造というよりは、変わってしまった環境に対して最適化していくという前提で考えています。
最適化の方針というのは、その会社の強みをどう維持するかという事だと思っています。
弊社の場合ですと、どちらかというと今やっている事業は、比較的オフラインに出ていかなくても完結するようなものを創業初期から作っていますし、そういう会社で作った事業なのであまり違和感はなく最適化できました。
ポジティブな面では、もともと非同期的なコミュニケーションを大事にしていたのですが、非同期的なコミュニケーションをより加速することができました。
また、ドキュメント文化というのが強かったので、背景や目的、やり方を書いて共有するといった文化がより加速しやすくなりました。

渡邊 確かに、今までリモートワーク型の組織って、本当に正しいのか、人間関係はオンラインだけでいいのか等疑問に思う余地はあったのですが、コロナが来たことによって、社会背景がリモートしている方が正しいという社会的価値観みたいなものができていますよね。

鈴木 その通りですね。
今回のテーマについて考えたのですが、オフィスがあるかないかの違いで一番端的に言うと、同期的なコミュニケーションなのか非同期的なコミュニケーションなのかかと思います。
コミュニケーションは3つの順番があると思っています。
同じ場所で一緒の空間にいると、最初共通の話題から入るので、自分の業務に近い話をします。
同じチームであれば今のチームの足元の課題解決の話をし、そこから派生していって、チーム全体の話や組織の話、会社は今どういう方向に向いているのかという話になっていき、さらにその向こう側に、「ところで今どこに住んでいるの?」とか「休日何しているの?」とかパーソナルな話が3番目に入ってきたりします。
同期的なコミュニケーションの時間が拘束されているから、3番目の話までいくのです。
非同期的コミュニケーションだと最初からアジェンダが決まっているミーティングから入っていくので、共通の課題はシンプルにパッと話して解決するだけ、そこからなかなか会社のことや、他のチームの動向など、ミーティングから派生しにくいのですが、本来そこが重要だったりするのです。
パーソナルな話は、さらに発展しにくく、相互理解の時間が削られているというところが無性に不安になっていると思います。
ですので、話しやすい状況をある程度仕組みとして用意して活性化していく、というのがそれぞれにとって目的設計として必要なのかなと思っていて、そういう目的に準じて施策を行って実験しているという状態です。

渡邊 なるほど。
今までは3つのコミュニケーションが同じ時間に内包されていたものを3つに分解して、今話しているのはこのテーマだよね、という機会はそれだけに絞って、逆に相互理解のためのコミュニケーションは別の機会で作っているということでしょうか。

鈴木 そういうイメージですね。
分断せざるを得ないというのがリモートの特徴だと思います。
ただ、これらをまとめて全部やる機会は必要だと思っていて、月に1回オフラインでオフィスではなく別でスペースを借りて集まって、5時間くらい一緒にいる場を用意するという感じです。

渡邊 ありがとうございます。
同期、非同期ってインターネットの主軸な考え方じゃないですか。
どんどんエンジニアっぽい働き方が今後浸透してくるだろうなと思うのですが、堀江貴文氏と西村博之氏の対談もずっとLINEでやり取りしているそうなんですよね。
そこに記者が一人入って、非同期コミュニケーションでやり取りが成立して、それを単純に文章化しているそうなんです。

鈴木 とてもわかります。
弊社も最近大企業から入ってくれたメンバーがいるのですが、とてもレスが早く、レス早いのだめだよ、というのを逆に注意したりしています。
非同期のいいところは、レスを受け取って背景を理解して自分なりの解釈を経て時間を生むことができる事だと思います。
仕事をしていて緊急なことは半年に1回くらいしかないので、その時以外はレスをすぐ返さなくていいよという状態をずっと作っています。その前提状態が共有されていると、早くレスを返さないといけない、という心理的不安は生まれづらくなるので、そこかなという感じはします。

渡邊 なるほど、ありがとうございます。
少し今よりoverflowさんは未来に行っている感じがあるので、サイバーエージェントの例をお聞きしたいのですが、今年コロナの瞬間からオンラインで新卒研修していたりとか、もともと人間関係を重視する会社がoverflowさんみたいな前提がなく、かつ、ビジネスモデル的にも比較的対面で進めることを是として来ているようなオールドスタイルで仕事を進めてきたと思います。
これはもう仕方がないことだと思うのですが、半ば強制的に在宅ワークになって、代表の藤田さん自体は多分そういうことも理解していたので、緊急事態宣言解除宣言後ですよね。
早かった印象があります。
今でも藤田さんのブログに行ってもらうとこれが一番最初の記事になっているのですが、原則リモートワークから原則出社に戻しましたと、この時ってサイバーエージェントもエンジニアが半分くらいの会社だと思うのですが、皆さんの反応はどういう感じでしたでしょうか

寺脇 色んな意見はありつつも、比較的ポジティブに受け取っていたという印象です。
緊急事態宣言が解除されるタイミングで、リモートワークを前提とする働き方を打ち出す企業やオフィスの必要性に関する議論の熱が世の中的にも上がっていたかと思います。
このタイミングで藤田があげたブログでは、リモートで業務はできるものの、目には見えない一体感というのがサイバーエージェントの強さでありカルチャーだと明言し、また会社としてこういう決定に至った経緯についても書かれていたところが、社員の立場からするとわかりやすかったですね。

渡邊 この記事を実際見ていただくとご理解いただけると思うのですが、藤田さんも悩んでいる感がすごいですよね。

寺脇 はい、葛藤がよみとれるブログでしたよね。
リモートワークをしてみると、働いていて困ることはあまりなくて、リモートで全然できてしまうんですよね。
ただ、サイバーエージェントの事業を今後も伸ばしていくことを考えたときに、フルリモートでいいのかというのが焦点だったのかなとこのブログ見て感じました。

渡邊 そうですよね。
今までのビジネスを延長線上でこなすという意味では、リモートワークでもある種生産性は良さそうな感じでは運営できますが、一方で関係性の質とか、関係性の貯金という言葉がキーワードだったなと思うのですが、サイバーの場合はリアルで培っている関係性の貯金を食いつぶしているというイメージですよね。

寺脇 そうですね。
関係性の質が大事だというのはリモートになる前から話していて、とにかく社員の関係性が強い組織であり続けることが、大きな目標を達成するための一つの手段であるという認識はしていました。
関係性の貯金があったので、フルリモートでも特に負担なくビジネスができている感じはあったのですが、もっとすごい会社になることを考えたときに、リモートだけではなく、対面のいいところもちゃんと取り入れる決断になったのかと思います。

渡邊 なるほど。
いったんそういう決断になりつつ、世の中的には感染者が再燃しだしたタイミングで、今この時点から判断が若干変わっているんですよね。

寺脇 はい。
一度は出勤に戻しましたが、感染再拡大を受けて今はリモートワークを推奨しています(※)。
出社率は3割ほどで、政府として推奨しているラインに近いですね。

渡邊 この間アベマタワーに顔を出した時も、ほとんど人がいなくて、こんな一等地にこんなガラガラでいいのかと思いました。

寺脇 そうですね、ちょうど2019年の4月と10月に、アベマタワーという大きなオフィスと、渋谷スクランブルスクエアに移転したタイミングでもあったので、フルリモートになったどうなるんだろうとは思っていました(笑)。

渡邊 今、フルリモート側にまた寄ったことで、関係性の質を担保するとか人事としては考える視点になってくるかと思うのですが、今そういう風になったうえで人事やマネジメントから投げかけてうまくいってることとかはありますか?

寺脇 社内でよく出てくるワードは、「知る努力、知られる努力」ですね。
両方大事だと話しています。
先ほどの話の中で、同期非同期も含めて議論する内容のレイヤーを分けていくという話があったと思うのですが、関係性の質を高める上で、チームメンバーや組織で関わってる人を理解して知るということと、自分がやっていることや想いを発信するのが大切だよと。
特にマネジメントレイヤーが中心ですね。
当社では、経営層やマネジメントレイヤー、新卒の育成を担当するトレーナーを対象にしたオンライン研修をレイヤー別に開催しています。
1on1     面談における見るべきポイントや目標設定のフレームワークなど、チームビルディングや組織活性におけるメソッドの浸透を改めて強化している状況です。

渡邊 「知る努力、知られる努力」というのはキーフレーズな気がしています。
僕らのGeppoというツールはどちらかというと人事や経営が皆さんのコンディションを知るためのツールで、使い方間違えると監視っぽくなってしまうと思うのですが、一方でニーズが高まっているかなと思っています。
従業員の皆さん自体が知られる努力をしようというのは、メッセージングとして難しいなと思っていて、どういう経路でそういうメッセージを落としていくと、従業員が自発的に知られる努力をしてくれるのか、サイバーエージェントの中で工夫していることとかってありますか?

寺脇 そうですね、知られる努力をしている側からすると、周りが見てくれていると実感できるような雰囲気づくりが大切かなと思います。
例えば、サイバーエージェントには日報文化があります。
年次やレイヤーに関わらずみんな日報を書いていて、自分がどういうことを考えていたり、どういうことを頑張っていて今の目標はこうだというのを共有し合っているのですが、上長や周りのメンバーだけでなく役員からも返信が来るんですね。
経営陣も含め自分のことを見てくれているんだという実感値が従業員の知られる努力を加速させているポイントであるのかなと思います。

渡邊 なるほど。
自分が発信したことにレスがあって、それがうれしい体験になっているので、自発性が生み出されているという感じですかね。

寺脇 そうですね、賞賛するという文化がすごく強い会社なので、発信するということ自体を称賛するというか、日報の内容ではなく、毎日日報送っていることまでも褒めてしまうという会社なので、そういう所はあるのかなと思います。

渡邊 なるほど、ありがとうございます。
鈴木さんの会社はどちらかというと、最初からリモートワークの人も多いし、会ったこともない方もいらっしゃるということですよね。
そうすると、関係性の貯金はもともとオフラインでは作られていないと思うのですが、そのあたりをオンラインで作る工夫とか質を高めるための仕組みとかあったりしますか?

鈴木 関係性の貯金もパターンがあるのかと思うのですが、業務上のつながりで、仕事を一緒にやる上で人となりや行っている業務、成果は、結果としてパフォーマンスで現れてくると思っています。
相互理解を深めるというのはオンラインでもしやすいと思っていて、その辺はすぐできると思っています。
なので、1回もオフラインで会っていないというメンバーに、本当に初めましてという感じなのか、いつも会ってますよねって感覚のどちらかと聞いたらみんな後者でした。
業務上のつながりは作りやすいかなと思っています。
ただ、先ほどの同期的な話なんですが、みんなで飲みに行くとか休日もみんなで遊びに行くとかはなかなかしづらいという点においては、様々な施策を講じないといけないなとは思っています。
我々でいうと、月に1回集まる会や、週に1回オフィス借りてみようかと実験的に考えているのですが、そういう所でどれくらい効果があるのかなという所を見るのにサーベイとかは重要かなと思っています。
正しい指標なのかというのはこれから見極めないといけないと思うのですが、数値によって従業員満足度を測定し仮説と改善を行うサイクルをこれから実験的にやっていかなければいけないなと思っています。

渡邊 ありがとうございます。
もう少し色々聞きたかったのですが、お時間になってしまったので、このタイミングで終了とさせていただければと思います。
本日最後のまとめになりますが、関係性の質とか貯金みたいな概念を人事や経営が持つことが大事かなと思いますし、オフラインとオンラインの所でいうと同期非同期というのはインターネットのようで、あまり経営や人事がインストールしてなかった言葉なような気がします。
なので、オフラインであれば同期コミュニケーションで関係性の質を高めていったり、関係性の貯金を作っていくのが当たり前だと思っていたのですが、今後オンラインとミックスになってくると、価値観を同期から非同期にある種アップグレードしていくタイミングが必要だったり、先ほどDeNAさんの所でありましたが、今まで人間関係でやっていたところから、徐々にカルチャーとしてことに向かうとか、あるいは、ビジネスモデルもDX化していって、俗人的、三密に依存していかないように中長期的に移行していくのが非常に重要なのかなと思いました。
最後お二方からコメントをいただければと思うのですが、寺脇さんいかがでしょうか。

寺脇 皆さんお時間いただきましてありがとうございました。
為になる話ができたのか全く分からないですが、ぜひ何かご参考にしていただければと思っています。
オンライン・オフラインそれぞれメリットデメリットはあるので、極端にどちらかというよりは、両者をうまく使い分けるような議論がここから活発になるのではと個人的には思っています。
誰も答えを持っていない領域だと思うので、皆さんもいいチャレンジとかあれば、シェアしていただきたけるとうれしいなと思いました。
ありがとうございました。

渡邊 ありがとうございました。
最後、小林さん締めの一言をお願いします。

小林 お時間いただきありがとうございました。
最近良く感じているのは、コロナという外部環境の変化もありながらなのですが、そこにジェネレーションギャップも相まって難しいことになっているなと思っていて、在宅にいて直接コミュニケーションを取らないという状況の方が、心理的に落ち着くという若い人も増えていると思います。
飲みに行くことがもともと嫌だったり、そういうコミュニティに属することがいいとは思ってなかったという人も結構いたりして、以前は良く飲みに行っていたという人間が飲みニケーションがなくなった瞬間に異常な不安に駆られるジェネレーションがいたり、全く不安に感じていないジェネレーションもいたりするので、この融合が非常に難しいと思っています。
年齢を重ねている人ほどその思考が強いと思うので、そこで強制的なコミュニケーションを施策として講じたりすると逆にストレスたまったりするので、自己開示とか相互理解というのは人によるというのが前提にあり、そのうえで、最低限の施策を用意して後はやりたい人がやれるような任意性権限移譲みたいなものをフレキシブルに用意してあげるのが心理的安全性を保てるんじゃないかなと思っていたりするので、そこのうまいところを見つけていけたらいいなと思っています。

渡邊 確かにジェネレーションの問題は結構ありますよね。
2社とも今後もこの環境下で色々な働き方を模索していったり、鈴木さんの会社はそこをビジネスにされている会社でもあると思うので、いろいろな事例が生まれてくると思います。
アップデートがあればぜひまたこういう機会をいただいて色々シェアできればなと思います。
本日は終了とさせていただきます。ありがとうございました。

(※)サイバーエージェントでは、10月より“リモデイ”の運用を再開しています。


同セミナー記事は リモートワークか?オフィスワークか?をご覧ください。

同セミナー記事は コロナ禍から一気に加速、オフィスや紙の書類はなくしたら困るのか。 をご覧ください。

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