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COVID-19の世界的流行を契機に、企業活動においてはテレワークが今までにないスピード感で実装・運用され、その他「3密」を避けるために様々なことが「オンライン」上で行われるようになりました。


通勤のストレスなどが軽減する一方で、対面コミュニケーションや物理的な運動時間の減少により、「強制在宅」で働く従業員には見えないストレス
が蓄積していると言われています。

一方で、そのような「強制在宅化」で出勤を余儀なくされる従業員にもまた、今までにないストレスがかかっております。

今回このような多くの人間が初めて目の当たりにする「新しいストレス社会」に対する対応について考えるべく、日本の働き方を考える株式会社Dr. 健康経営、Geppo(ヒューマンキャピタルテクノロジー)の二社による共催という形で本セミナーを開催いたしました。

【登壇者情報】
2020年7月16日 (木)
産業医に聞く! テレワーク時代のメンタルマネジメント第二弾 具体的ノウハウ・ディスカッション編

■スピーカー
鈴木 健太
株式会社Dr. 健康経営
代表取締役・医師

■モデレーター
渡邊 大介
株式会社ヒューマンキャピタルテクノロジー(Geppo)
取締役

産業医の教育に力を入れるDr.健康経営


渡邊 大介 (以下、渡邊) 6月の前半に第1回目という形で、「産業医に聞くテレワーク時代のメンタルマネージメント」と題しまして、比較的、原理・原則論というか、理論的なところについて鈴木さんよりお話いただきました。

ただ、時間の関係でなかなか突っ込んだディスカッションができずに、セミナー後のアンケートでももう少し具体的なお話を聞いてみたい、というようなご要望をたくさんいただきました。

そこで今回第2弾、より具体的なノウハウですとか、シチュエーションに沿った見解みたいなところを聞いてみたいという形で開催をさせていただくという段取りになっております。

最初に、今回初めてご参加される方もいらっしゃいますので、簡単に我々の自己紹介をさせていただきながら、第1回目のウェビナーの振り返りをさせていただいた上で、ディスカッションという形で進んでいきたいと思っております。

基本的には、我々の方でディスカッションテーマを設けているのですが、皆さんからのご質問等々もきちんと拾っていきたいなと思いますので、何か気づいた時点でコメントないし、Q&Aの機能を使って頂いて積極的に投稿頂ければ、それに対して我々の方で打ち返していきたいと思いますのでぜひ一緒にウェビナーを作っていければなと思います。

では早速自己紹介を鈴木さん、お願いできますでしょうか。

鈴木 健太さん (以下、鈴木) 改めましてよろしくお願いいたします。

株式会社Dr.健康経営 代表取締役・医師をしております、鈴木と申します。

弊社Dr.健康経営は、医療専門性に基づき、働くを元気にということで多くの全国の中小企業様向けに、産業医サービス、ストレスチェックサービス、または、健康経営の支援といったことをしております。

なぜ私がこういった活動をしているかと言いますと、日本全国にお医者さんというのは36万人ぐらいおり、そのうちの1/4が産業医という資格を持っている先生達です。

ですが、活動を実践してる先生は2~3万人で、更に、これを本業としてスキルアップを図りつつやってる先生というのは、約1000人ぐらいと言われています。

そんな中、50名以上の会社様は経験があるかもしれないですけれども、産業医を付けなさいと法律で決まっています。

その時に、書類にサインをするだけような先生が来ると、本当の会社そして社員の方々の健康のサポートにならないということで、私達がドクターの教育などを含め、企業様への継続的なサポートをしていきたいということでこういった活動の会社をやっております。

簡単に紹介ですけれども、我々はそういった理念がありますので、医師を多数抱える形で、コンテンツとかといったものを今作り込んでおります。

弊社では、産業医のマッチング会社とは力を入れているところが逆になります。

普通、産業医に限らず、人材を採用する場合、または派遣みたいな形の場合は、採用をして、教育をして、お仕事のマッチング、でそのあとサポートという流れになると思います。

最近ある産業医紹介会社のような、マッチングに力を入れてる会社ではないですが、先程のようになかなかドクターのレベルが上がっていない現状、採用と教育に力を入れてあとはサポートに力を入れることで、こういったセミナーを含めて提供しております。

こういった教育に力を入れることで1人1人のドクターにプロフェッショナルとしての意識とスキルを持ってもらう、そして企業様にも継続したサポート体制、コロナの時にテレワークが進んでいる企業様もありますので、こういったオンライン対応といったところも柔軟にやっております。

そういった形で産業医サービスというのも柔軟にやると、例えば50名未満の場合はオンラインで企業人事のサポートを、50名超えたら、先生が訪問する形でのサポート、または単発の1回だけメンタル対応してほしいというようなことも請け負っておりますし、場合によってはストレスチェックといった研修みたいなこともやっております。

渡邊 ありがとうございます。

今、鈴木様の会社では、コロナ禍でお問い合わせや相談って増えていたりするんですか?

鈴木 ありがたいことに、5月末くらいからお問い合わせが増えてます。

渡邊 どちらかというとリモートワークとか、あるいはコロナ禍で出勤をしなければいけないストレスとか、何かそういったものを人事とか経営が掴み取ってお問い合わせいただく感じでしょうか?

鈴木 それもあります。

今までは、お問い合わせいただくのは50名超えたから産業医を付けるといったことが多かったですが、ここ最近50名超えてないけれどもちょっとメンタルが、とか、リモートの対応をしたいみたいなことでのお問い合わせが増えていて、そこは私もびっくりしています。

渡邊 なるほど、ありがとうございます。

本日はその辺も深堀してお聴きできればなと思いますのでよろしくお願いいたします。

私も簡単に自己紹介をさせて頂ければと思います。

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株式会社ヒューマンキャピタルテクノロジー、Geppoを提供しております渡邊と申します。

弊社のサービスは、本日Geppoのユーザーの方に多数ご参加いただいているので、使っていただいている方もいらっしゃると思うんですが、基本的には、組織サーベイと個人サーベイ両方を回しながら働き方、働く環境を良くしていこうというようなサービス群になっております。

我々のサービスも、緊急事態宣言発令後ぐらいなので4月に入ってから、ありがたいことにぐんぐんとお問い合わせはいただいておりまして、昨今、緊急事態宣言が解除された後また東京を中心に感染者数が増加の一途を辿っていまして、そこの不安から来るお問い合わせというのも増えているのかなと思います。

我々の会社の特徴としては、先程、鈴木さんから産業医が必要ないようなレベルからのお問い合わせも増えている、というお話もありましたが、我々の場合はちょっと逆の傾向が見えていまして、どちらかと言うといわゆるスタートアップですとか、インターネット系の会社はリモートワークに移行しやすいんですが、そうでない業態や、比較的体質として少しトラディショナルであったりとか年齢に幅があるよう会社様から、どうやったらリモートワークを効果的にできるのか?という文脈でお問い合わせをいただくことも増えているようなサーベイ群になっているかなと思います。

本日は、基本的には聞き役に回りたいと思っているんですが、内容によっては我々の知見であったりとか、私自身がサイバーエージェントの人事をやっていましたので、サイバーエージェントの動向とかも含めてお話しできればなと思っておりますのでよろしくお願いいたします。

普段との変化をいち早く察知する


渡邊 まず皆さんの目線合わせという形で、前回の振り返りをさせていただければなと思います。

前回の内容はウェブ上にもアップしておりますので、こちらもご確認頂ければと思います。

<前回記事>
テレワークが従業員コンディションに与えた影響とはなにか?
健康経営とテレワークにおけるメンタルヘルス対策
産業医によるテレワーク活用術

鈴木 では、約5分~10分で前回の振り返り、認識共有として概念的なところをお話させていただきたいと思います。

まず、コロナによってテレワークで働くことにおいて、どのようなことが顕在化してくるかと言いますと、場所、時間、人というのが大きく変わってきます。

場所がテレワーク、時間は9時~17時ではなくなる、そして人というのは副業や所属コミュニティが多様化しております。

そこで求められるものというのは、個人と組織という二つが求められることになります。

個人としては、例えばテレワークが進むと、時間とか健康全て含めて、より自己管理のスキルが求められます。

組織としてもなるべくソフト面も可視化をしていくということを求められます。

今までは、皆さん同じ空間で働いていましたので、隣にいて雑談をすれば分かるといったことがありました。

テレワークになりますとそれができなくなりますので、その中でも業務効率を上げつつ、このソフト面を可視化をしていくということが重要です。

ここに適応できないと、それがメンタル不調になっていきます。

逆に、ここに適応すれば、組織としては業務効率を上げることができます。

個人の自己管理をより徹底すること、そして、組織としては今回はメンタルに関してですので健康管理体制を敷く、というところですね。

よく私もテレワークで特別な何かが必要なのか、という質問を受けるんですけれども、これは違います。

あくまでも一般的なメンタル対策というと、まず会社で徹底していただきたい、プラス先程のような見えないからこその言語化、可視化を入れ、徐々に良くしていくというところになります。

なぜ私が一般的かと言ってるかというと、例えば私のような専門職からすると、このメンタル対策、組織においての対策は当たり前だよねって思うようなことでも、意外と企業様の認識、リテラシーの差というのがやっぱり利用者によって非常に大きいです。

ですので、一般的なメンタルについてとか、普通こういう予防するよね、ということをまず会社において徹底していく、伝えていくということが重要かな、と思っています。

専門的と言ったところで、ストレスって何?メンタルって何?離職って何?みたいな話がありますので個々の流れの部分を共有したいと思います。2020-06-09_16h17_36

左から右に矢印が流れています。

左の部分はストレスです。

仕事においてのストレスというのは3つあります。

1つは、仕事自体のストレスで、仕事の量とか内容とか、もちろん職場の人間関係、職場の環境などです。

もう1つは、個人の要因、これは性格や考え方です。

もう1つは、仕事以外の要因として、例えばプライベートなどで、家族友人とか子育て介護といったものがあります。

こういったものに負荷が掛かってくると、人はストレスとして溜まってきます。

イメージとしては、ダムの水をイメージして下さい。

大雨が降っている感じで、ダムの中で水がどんどん溜まってきます。

やがてそれがダムの限界まで来ると、ストレスの反応として現れてきます。

その反応として、飲酒が増えるとか、なかなか寝付けない、お腹が痛いみたいな体の異変もあります。

それがずっと続いてしまうと、いわゆるダムが決壊するような形で、より悪化して病気というフェーズになってしまいます。

この病気の状態が続くと、仕事ができないようなパフォーマンス状態になる、休職、離職という仕事においての悪影響が付属されます。

組織においてのメンタルの考え方は3つあります。

これが一次予防、二次予防、三次予防と言います。2020-06-09_15h41_13

一次予防というのは、そもそもストレスがたまらないように、メンタル不調にならないようにしましょう、二次予防というのは、ちょっとなりかけてても早く見つける会社、組織にしましょう、三次予防というのは、体調不良が出た人に対してのフォローアップをしていきましょうといったようなものです。

この一次予防、メンタル不調にそもそもならないようにしました、というのは個人での対応の場合ですね。

あくまでも自己管理になるんですが、今回は会社としてっていう話もありますので、会社として何ができるか?というと情報の提供と場の提供の2つがあります。

もちろん会社が個人の健康を最後まで面倒見るという責任はないですが、働く上で、皆さんが心地よく、もっと言うと健康障害にならないように、働くことを継続してもらうために、そういったことが会社としても義務ではあります。

ですので、会社として、個人のセルフケア、つまり自己管理を向上させるためには、一般的にこういうことを気をつけなさい、こういう考え方です、場の提供は、リモートだったら会社の中でそういうコミュニティというのをzoom上でやるとかそういった場の提供ということが必要になってきます。

二次予防とは、メンタル不調を早く見つけましょうというものです。

メンタルというのはなかなか周りから見ても分かりにくいし、定量化されない、つまり、血液検査で尿酸が高い、血圧が高いのようにちょっと見て分からないです。

ということは、早く発見することがそもそも困難です。

その中で、何に気を付けたらいいかというと、「いつもと違う」ということ、いつもとの変化がポイントになります。

右の黄色いところは、典型的ないつもと違う基本10項目になります。2020-06-09_16h25_56

例えば洋服が乱れている、表情があまりない、こういったこともよくあるんですけれども、これは、いつもと違うというところを指標にしてください。

いつも洋服が割と乱れている人がいたら、その人がある日洋服が乱れていてもこれはいつも通りです。

ただ、いつも几帳面な人が洋服が乱れている、これは明らかに変化になります。

こういった普段との変化をいち早くチェックする、という体制が必要になります。

ここでぜひ産業医と連携をして欲しい、連携と言いますかむしろ活用してほしいなと思っています。

産業医というのは2つ仕事をしていて、個人個人に対応すること、あとは会社の組織としての健康管理体制を作る、この2つをやっています。

個人の対応というのは、身体、心の不調者に対して指導していったりとか、適切な対応を教えていくということで、難しいのは組織に対してです。

細かいことはいったん置いておきますと、人事管理職にどういう風にメンタルを早くみつけるポイントを教え込むか?とか、ルールづくりとかそういったところをお手伝いしていきます。

ですので、いわゆる産業医さん、お医者さんっていうところで、体調悪い人を見とけばいいよねって思うんですけれども、実はこういった組織作りによってストレスをそもそもなくしましょうとか早く見つけましょうと言った手前のところも一緒に連携してお手伝いすることができます。

大きな概念的な話なんですけれども、先程、ストレスが溜まって病気になって離職してしまうという流れがあったように、人材の流れとして多分会社としては採用して教育してで定着をしてもらうって何かしらがあると、先程のストレスが溜まって離職をしてしまうということがあります。

この定着というところは意外と見過ごされがちで、これをぜひ産業医と連携してほしいと思います。

メンタルで1人休職をすると440万、離職が起きると約1,000万円分損失が起きるといわれています。

これは人材採用の分だけじゃなくて、周りの人に負担が行くとか、仕事には来てるけど、仕事を全くこなせてない等、休んでしまう前後のことも全部含めるとこのぐらいの損失が起きると言われています。

ですので、経済的にも個々の定着が重要、つまり健康面からの人材投資をすることは非常に経済的にも重要だということが言えます。

ちょっと大きな話でまとめてしまったですけれども一旦前回の振り返りとしては以上になります。

渡邊 ありがとうございます。ディスカッションに入る前に、今聞いていて、僕から質問を一つさせていただきたいと思うのですが、一次予防で止められたらそれに越したことはないじゃないですか。

先程、その一次予防のところで、情報の提供だったり場の提供だったりというのが、会社としてできることだ、と記載があったと思うんですが、鈴木さんの知る中でこういう対応をしてうまく行っているところがあるよ、とか、ベストプラクティスみたいなものってあったりしますか?

鈴木 結構業態によるのですが、例えば、ブルーワーカーに近いような会社様は、かなり頻繁に皆さん集まる機会を作ってました。

渡邊 それは従業員がってことですか?

鈴木 従業員同士で集まる機会です。

もちろん上長もいますけれども、それでも飲み会やイベントをやってみようというものが定期で出ていて、2か月に1回ぐらい開催していたようです。

定期でやっていくと、そこでコミュニケーションを取ったら発散ができるという場になっていたようで、逆に今回のテレワークでこれがばさっとなくなってしまったのでそこに結構不安を覚えていて、新たなリモートの取り組みができないかっていうか悩みというのがありました。

渡邊 なるほど。
実際リモートワーク中、特にフルリモートワークとかでそういう場の提供って僕自身も今模索中だなって気がするんですけども、何かその辺ってなんか良い事例とかって耳に入ってますか?

鈴木 私が知る限りだと、やっぱりzoomみたいなテレビ電話上での集まりの機会というのが非常に多くあります。
例えば、花見の時期だったら、後ろをそういう背景にしてみんなで集まるという定期的な機会を作ったりとか、人事主導の所もあれば、イベント担当みたいな役割を社員に与えてしまって開催してくっていうところもありました。

渡邊 なるほど。

とにかくみんなで集まれる場とか、人間関係を築くきっかけづくりみたいなものが、一次予防としては第1であるってことですね。

鈴木 集団としてはそうですね。

個人としては、運動しましょうとか音楽聞くとかそういう個人のリフレッシュはありますが、組織としての一次予防的な話になってくると仕事だから集まるというよりは、コミュニティ的な要素でいかに接点を作れるかなと思っています。

渡邊 なるほど、ありがとうございます。

 

(続)

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