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COVID-19の世界的流行を契機に、企業活動においてはテレワークが今までにないスピード感で実装・運用され、その他「3密」を避けるために様々なことが「オンライン」上で行われるようになりました。


新型コロナウイルスの感染拡大に伴う政府の緊急事態宣言発令以降、多くの企業においてリモートワークや在宅勤務といった「出社をしない」新しい働き方が急速に広まっていきました。

世の中の人事、経営の尽力により、ここ数ヶ月の短い間で必要なツールやセキュリティ、その他新しいワークスタイルの実現に必要なサポートはある程度整って来ましたが、一方で議題に上がるのは従業員の生産性について、です。

もちろん出勤がなくなり、通勤ストレスなどを排除できたことは大きな恩恵ではありますが、一方でオフィスではなく自宅で働くが故に「公私の境」が曖昧になり、従業員の皆様が今までないストレスを感じていることも事実。

こうした状況が続けば、中長期的な経営数値に悪影響を及ぼす可能性もありますし、個々人において言えば離職や休職などの追い込まれてしまう事態も容易に想像できます。

今回のセミナーではこうした課題に対して「睡眠」というソリューションでアプローチする専門家集団「ニューロスペース」様をお招きして議論を深めて行きたいと思います。

【登壇者情報】
2020年9月3日(木)
9/3 「睡眠の日」開催!リモートワーク中の生産性を向上させる睡眠戦略とは?

■スピーカー
小林孝徳
株式会社ニューロスペース
代表取締役社長

■モデレーター
渡邊 大介
株式会社ヒューマンキャピタルテクノロジー(Geppo)
取締役

 

2_質の良い眠りとは



小林 睡眠というもの自体、無駄な時間と考えている方も多いんですけれども、決してそんなことはなくて、寝てる最中の特に前半は脳と体の休息が行われていて、後半は特に心の休息が行われています。
特に前半、ノンレム睡眠というものが多くなりますけれども、成長ホルモン、メラトニンというホルモン分泌が行われていて、疲労回復、痩せる、免疫力の向上などといった役割をしっかりと果たしています。
一方、後半の心の休息、特にレム睡眠が多くなってきますけれども、嫌なことをちゃんと戦略的に忘れられるかどうかということ、気持ちの整理ができるかというのが睡眠の後半、レム睡眠中に行われています。
皆さんも体感としてあるかもしれないですが、夜寝る前とか仕事終わって夜の時間帯とかでそうそうポジティブなこととかって考えにくいと思うんですね。
朝からずっと起きていて、今日あった事実に対して感情がこれが嫌だった、これが良かったというのが一緒になっている状態なんですね。
ただ、レム睡眠をとることで、事実と感情を切り離すことが行われているので、冷静な事実に基づいた判断ができるであったりとか、ケアレスミスが少なくなったりします。
感情のコントロールという観点であれば、慢性的に睡眠不足になると、怒りっぽくなったりとか他責思考になったりするんですが、そういったところが良い眠りが取れるということで改善していくことができるということになります。

いくつか脳の仕組みをご紹介できればと思うのですが、睡眠不足になると扁桃体というところが過剰反応してしまって、怒りっぽくなったり、それは私の責任じゃありませんというコミュニケーションをしやすくなってしまいます。
それは別にその人の人格がどうとかそういう話ではなくて、睡眠不足によって脳の原理としてそうなってしまうということがです。
こういう状態になってしまうということは、仕事上のコミュニケーションであったりチームワークにダイレクトに関わってくることになってきますので、明らかに生産性に関わるポイントだと思っております。

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また、睡眠不足によって、目の前の事実とか数値とかそういったものに基づいた情報処理をする部分の働きが低下して、過去の記憶や経験を元にした情報処理を主にするようになって、目の前の事実確認がしづらくなり、ケアレスミスが多くなる、実際私自身も睡眠に困ったときに何が起きたかというと、メールでお客様に対して「お疲れ様です」とよく送ってしまうことがありました。
それは睡眠不足によって明らかに起きていたということがあるので、こういったことが良い眠りを取ることによって起きなくなる、起きづらくなるということがあるんじゃないかと思っております。

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睡眠というのは、先ほどの所でお話したように、深い眠り、浅い眠り、レム睡眠等あるのですが、良い眠りというのは深い眠りでの前半3時間に現れてくるものなので、いかに寝始め3時間に深い眠りが実現できたかどうかというのが非常に重要な指標、その日の睡眠が成功したか失敗するかの分かれ目になってきます。

渡邊 なるほど。先ほどの睡眠のステージというか前半どちらかというと、疲労を回復していくみたいな意味合いが強くて、後半心のケアというか忘却作用だったりとか精神面のフォローになっていくと思うんですけれども、これって睡眠時間が短い場合は、この2段階か3段階かがぎゅっと濃縮されるわけではなくて、疲労が抜けるくらいのフェーズの時に睡眠が終わってしまっているということなんですね。

小林 そういうことです。
睡眠時間が阻害されるということは、心の休息までいかないんですね。
ですので、ストレスに弱くなるとか、そういう状態が起きてきて、よりメンタル不調とかになりやすくなります。

渡邊 なるほど。思い返してみると、誇れる話でもないんですけれども、僕がサイバーエージェントという会社に入社したのが、2005、2006年の頃のタイミングで、結構みんな苛烈に働いていて終電に帰れたイメージがないという記憶があるんですけれども、その時はベンチャー企業だからそうだと思っていたんですがいろんなところでみんなが怒っていたんですよね。
ベンチャーっぽいといえばそうなのですが詰め文化というか怒る文化が結構多くあった記憶がすごいあって、今はそんなことはないのですがもしかしたら睡眠とかが起因しているのがあり得るかもしれないということですよね。

小林 そうですね、そういうことだと思います。
かつ、人のモチベーションという観点で言うと、詰めてやらせるという恐怖心に訴えてやっていく事ということでは、基本的にモチベーションは長続きしないんですね。
いかに自発的にさせるかとか、自分からポジティブな感情にさせるかということをマネジメントとして促していく、そのためにもちろん睡眠は重要になっていくし、冷静な判断とか余裕を持った気持ちに脳をさせるために睡眠というのは必須になってくる要素となります。

渡邊 なるほど。良い睡眠の条件みたいなものでいうと、まず1つ上がっていた時間的な問題があるわけですよね。
短すぎてはいけないし、逆に睡眠的な話で言うと議論に上がりがちな話だと思うのですが、ホワイトカラーとかであれば、目安としてどれくらい寝られていればいいかとか、時間で示唆できることとかあるのでしょうか。

小林 良く一般的には平均的に7時間くらいとか8時間くらいが理想といわれると思うんですが、あれはあくまで平均値です。
人それぞれ適正睡眠時間であったりとか、深い眠りとかレム睡眠の適正割合というのは違っているんですね。
さらに、朝型なのか夜型なのかということ、これも人それぞれ遺伝子レベルで違っていることなんですね。
なので夜型の人に対して朝9時に出社してください、というのはかなり辛いことなんですね。
そういった方に対してはどちらかというと夜活動する方が生産性は確実に上がるので、その人それぞれの睡眠のパーソナリティをちゃんと見極めてそれを尊重していくということが、人事、マネージャー、リーダーの方に非常に重要な要素になっていくというのがあります。
自分に適正な夜型、朝型というクロノタイプを見極める方法は、後程私が書いた記事がありますので共有させていただければと思います。

渡邊 クロノタイプというんですね。

小林 はい、クロノタイプというものがあります。
朝型なのか夜型なのか中間型なのかというのがあるので、それもぜひみなさんもご体感いただければと思います。
あと、朝型夜型以外に、適正睡眠時間がどれくらいかということに関しては、まず平日と休日で明らかに睡眠時間の違う方は、現状の適正な睡眠時間が取れていないと思ってください。
平日無理しているから土日に2度寝している、寝だめしてしまっているということがポイントとしてあるので、まずそういった状態が起きていたら適正睡眠時間が取れていないと思っていただきたいです。
良い眠りが取れている時の目安としては、デバイス等を使わなかったとしても、主観的に知る方法として主に3つあります。
1つ目は、起きたときのすっきり感で、快適だったかだるいと感じずに起きれたか、ということになります。

渡邊 主観的な尺度でよいということでしょうか。

小林 そうです、主観的な尺度です。
2つ目は、昼間眠くなったかどうかということです。
適正睡眠時間がとれていると昼間感じる眠気というのが非常に少なくなってくるし体も自分が思うように動いていくので、それが2つ目の目安です。
3つ目は、ちゃんと夜眠くなるかということです。
なかなかベッドに入っても眠くならないような方もいるかと思うのですが、そういった方はリズムができてなかったりするということもあるので、しっかりと夜眠気を感じれるかということは非常に大事です。
客観的な指標ではないのですが主観的な目安として、自分は今達成できているかということを見ていく、土日と睡眠時間が大きく違っていないかということを見極めていく事が非常に重要なポイントとなっていきます。

渡邊 確かに。デバイスを使って正確に測ろうというと人事が関わるので若干ハードルの高さを感じると思っていたのですが、主観的尺度である程度測れるのであれば、まずは試しに測ってみるというのがファーストアプローチとしてはやりやすそうですね。

小林 そうですね。

渡邊 なるほど、ありがとうございます。
ちなみにこれは僕の単なる興味本位ではあるのですが、ショートスリーパーというのはあり得る話なのでしょうか。
例えば、タレントの武井壮さんとかって1時間も寝ないみたいなことをテレビとかで言ったりもしていて、そういう検証動画みたいなものもやっていたと思うのですが、あり得るのかどうかというか、たまに寝てない人ってそれこそどや顔で3時間しか寝てないけど俺全然いけるわとか僕も言ってたりするんですけれども、会社目線でいった時に、その人の睡眠タイプであるからそのままにしておいていいのか、強がってるだけなので早急にアプローチした方がいいのか。

小林 わかりました、ありがとうございます。結論から申しますと、ショートスリーパーは実際にいます。
ただ、それは遺伝子レベルで決まっていることでもあるので、決して隣に座っている人がショートスリーパーだとか、上司がショートスリーパーだからということで真似をしてはいけないことです。
なんちゃってショートスリーパーの方とかは3時間でやれていると言っていても、昼間仮眠していたり土日に10時間とかまとめて寝ている方は、本当のショートスリーパーではないです。
ショートスリーパーは先天的な何か等で実際にいますが、そういった方は3時間とかでも昼間全く眠気が感じないとか、朝すっきり起きれるとかそういった方は実際にいます。

渡邊 割と特殊能力というか、本当に少ない可能性でいるくらいで、基本的には7時間8時間付近が最も良さそうというか。

小林 そうですね。

渡邊 なるほど、わかりました、ありがとうございます。
理想的な睡眠状態みたいなところでまとめると、一番最初に表示いただいた睡眠時間中に訪れる体の回復から心の回復といったステップをきちんと踏めている状態が理想的、生産性を良くするであろうというような睡眠であって、かつ、それをある程度主観的に測る方法が先ほど言っていただいたような、きちんと眠くなれているかとか、睡眠した後に眠気というかすっきりしているかどうかとかそういったもので図っていけるとある程度理想的な睡眠の輪郭が見えてくるということですね。

小林 はい、そうですね。

渡邊 ありがとうございます。


同セミナー記事は 睡眠と生産の関係 をご覧ください。
同セミナー記事は 理想的な睡眠状態を実現するために、会社もしくは人事ができることと測定方法 をご覧ください。

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