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新卒または中途採用で入社する新規入社社員の早期離職を防ぎ、短期的かつ効率的な即戦力化と定着を図るために行うオンボーディング。

一般的に入社してから行うこの施策は、入社する前から始めればより有利に進められそうです。

入社前と入社後、それぞれにフォーカスし、重要なポイントを押さえながら効果的な施策を構築していきましょう。

 

より良いオンボーディング施策は入社前から

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今、多くの企業で実施されている「オンボーディング」。

新たに入社した(新卒・中途)社員が早期に離職することを防いで組織への定着化を促し、既存の社員と並ぶ戦力へ成長してもらうために行われる施策です。

 

ここからは、新卒採用からの入社社員=「新入社員」と呼称し、主に「新入社員」にあてはまる内容についてフォーカスしてみましょう。

 

厚生労働省が毎年行っている「雇用動向調査※」によれば、1年間で入社した人材のうち7人に1人が離職し、24歳以下の若手では約4割が離職しています。

その理由として8割以上を「個人的理由」が占め、事業所側の理由はわずか1%以下です。

この「個人的理由」で早期離職する新入社員を、どうすれば引き留められるのか、人事担当者が頭を悩ませるところではないでしょうか。

 

もし採用した新入社員に早期離職の傾向が強いという場合には、次の二つのポイントに着目してみると良いかもしれません。

 

  • 採用段階に潜む問題の解決へ

企業側にも新入社員側にも何ら問題がないのであれば、単に企業と新入社員のミスマッチにより自社に合わない人材を採用してしまった、あるいは自分に合わない会社に入社してしまっただけという場合もあるかもしれません。

採用したのが自社に合う人材であれば、先輩社員たちが協力して新入社員を育てていこうとするオンボーディングが効果を発揮しますが、そもそも合わない人材であれば何をしても劇的な効果は期待できません。

採用段階で問題がある場合は、「採用する人材のターゲットを明確化する」など、オンボーディング以前の施策を構築する必要があります。

教育プログラム・施策よりも先に、採用過程における齟齬の理由を突きとめ、それを解決するところから始めると良いでしょう。

 

  • 採用後入社までにできる施策

内定・採用から入社までに行う施策としては、「既存社員との交流」が効果的です。

新入社員が思い描いているイメージと、実際の自社の様子をすり合わせてギャップを解消しておくことで、「入社してみたら自分のイメージと違ったから退職したい」となることを防ぐことにつながります。

双方のイメージするお互いの姿を一致させておき、入社後スムーズに研修や業務を始められるようにすることも、オンボーディングの重要な施策の一つです。

 

入社後のオンボーディング施策

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入社日までにミスマッチの解消をめざす施策ができたら、入社後は本格的にオンボーディングに入ります。

企業または所属する組織・チームによっても異なりますが、入社日から実施するオンボーディングには、たとえば次のような施策があります。

 

  • 担当業務と付帯業務のリスト化

新入社員が入社してから担当する業務とともに、備品の保管場所やプリンターの設定など、付帯業務についてもリスト化しておくことで、「これは誰に聞けばいいのかわからない(から困る)」という事象に陥ることを防ぎ、新入社員が組織に対して抱く不安感を解消することにもつながります。

 

  • 新人研修、オリエンテーション

新人研修やオリエンテーションは「オンボーディング」という言葉が認識されるより前から行われてきましたが、これらもオンボーディングの一部です。

企業の全体像を知り、所属する組織について教わり、どの業務をどの部署のどの人が担当しているのかを学ぶ機会は、業務が始まってしまうと忙しくなり、なかなか設定しづらくなります。

この機会に企業全体について知ってもらうことは、企業への帰属意識を養うことにもなります。

 

  • メンター制度

メンター制度は、所属する組織の上長・上司とは別に、先輩にあたる社員が「メンター」として新入社員をサポートする制度です。

メンターは業務においての疑問・質問だけでなく、困ったことや上司に直接相談しにくいことも話せる存在です。

メンター制度によって新入社員が気軽に相談できる場を提供することで、新入社員の悩み・課題を早期に解決に導くとともに、メンターを通して新入社員の悩み・課題を上司と企業が共有する働きも期待できます。

 

  • 相談窓口の設定・共有

メンター制度と並行して、「新入社員用相談窓口」のようなものを設定しておくと、メンターにあたる人物が不在であった場合も悩み・課題を解決すること、不安感を解消することにつなげられます。

窓口は対面対応に限定せず、メールなど非対面対応もできるようになっていると、より相談しやすい環境になるでしょう。

 

  • 短期的な目標の設定

上司・教育担当者と新入社員自身とで目標を設定することも、オンボーディングの施策の一つです。

新入社員の戦力化を図るために、「1カ月後」「半年後」と期間を区切り、短期的な目標を設定します。

なお、この際に、初めから壮大な目標を掲げて突き進んでもらうよりは、小さな目標を達成する体験を積み重ねてもらったほうが、社員の継続的な意欲向上に役立ちます。

 

  • 教育方針の共有

部門の上長、上司、先輩等の教育担当者が新入社員に期待することや取るべき態度などを共有しておくことは必要です。

組織全体で新入社員を受け入れる環境が整うことで、組織と新入社員の間にギャップが生じることを防ぐことができます。

 

  • 歓迎会

歓迎会のように既存社員と対面でざっくばらんに話す機会を設けることもオンボーディングにおいては効果のある施策の一つです。

いわゆる「飲みニケーション」に限らず、新入社員にとって「この組織に入ることを歓迎してもらっている」「自分の存在が仲間と認識され認められている」と感じられることは、企業への帰属意識を高めることにつながります。

対面での集いが難しい場合には、オンラインツールなどを活用する方法もありますので活用してみてください。

歓迎会は、入社してからまだあまり日数がたたないうち、入社後間もない時期に開催することをおすすめします。

また、「あの人が入社したときは開催されたのに、自分が入社したときはなかった。

不公平な扱いをされているのでは。」ということがないように、記録を残して管理したり、スケジュール調整をしっかりしておくことも大切です。

 

ここまで挙げた以外にも、効果的な施策はさまざまです。

企業の体質や雰囲気などに適したオンボーディングを実施していきましょう。

 

 

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オンボーディング施策実施時のポイント

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さまざまな施策を実施しても、有効なものでなければ、ただ実施しただけで終わってしまいます。

オンボーディングを実施する際に押さえておきたいポイントとしては、以下が挙げられます。

 

  • 実施→見直し→課題解決を繰り返す

多額のコストをかけてオンボーディングを実施しても、自社にそぐわない施策では効果が出ません。

また、早期離職が相次ぐままでは、採用にかかるコストがかさむばかりです。

オンボーディングは、実施して結果を検証し、検証によって生まれた課題を解決することの繰り返しで継続的に改善させていく、いわば「PDCAサイクル(plan-do-check-act cycle)」の対象の一つです。

オンボーディングそのものが継続的にプログラムを行う性質のものですが、見直しと検証も同様に継続して行っていくことが、オンボーディングをより良いものにしていく重要なポイントです。

新入社員にオンボーディングを実施しながら、「自社の状況に適しているか」「社員の成長段階に合わせているか」など、定期的に内容や結果の見直しを重ね、課題を抽出したら解決策を適用させて改善する、その繰り返しを継続することによって、自社に適した低コストかつ短期間で効果的なオンボーディングがつくられていきます。

 

  • 施策は新卒と中途のそれぞれをケアするものに

さて、ここまでは主に新卒採用者=「新入社員」を対象としたお話でしたが、中途採用者にもお話を広げます。

 

オンボーディングは、新卒採用者も中途採用者も対象にし、それぞれにフォーカスした施策として実施することが重要です。

企業にもよりますが一般的には、新卒採用者は受け入れのノウハウが積まれていることが多く、企業側の手厚いケアが行き届くことが多い傾向にあります。

一方で、中途採用者の受け入れは、所属する組織の状況に大きく左右される傾向にあります。

中途採用は即戦力を求める場面が多く、その現場は業務と並行していて忙しいため、受け入れ実績の少ない組織では中途採用者への十分なケアができず、結果として定着不全へとつながってしまうこともあります。

したがって、中途採用者にも、業務に関する入念なケアと人間関係の構築も含めた適切なオンボーディング施策を行うことが求められます。

企業によっては、新卒採用者の同期にあたる存在をつくれるように、部署を横断して開催するランチミーティングやイベントなど、中途採用者にも横のつながりを持てるような機会を設けているところもあります。

 

  • 信頼関係を構築できる内容にする

オンボーディングの目的の一つに「企業への帰属意識を醸成することで離職を防ぐ」ことが含まれます。

帰属意識が高まることによって、新規入社社員は企業への貢献意欲を高め、結果として高いパフォーマンスを発揮するようになります。

帰属意識は企業との信頼関係が構築できて初めて生まれるものです。

新規入社社員が、「自分が受け入れられている」と感じるところから始まり、「この企業は、安心して所属して業務を遂行できる場所である」と実感できるよう、オンボーディング施策で導いていくことが大切なポイントです。

 

オンボーディングは、新規入社社員のためのプログラムでありますが、同時に、新規入社社員を受け入れるためにふさわしい組織であるかどうかを見直す良い契機となるものでもあります。

施策の実施を通して組織が抱える課題を見いだし改善していくことで、新規入社社員のスムーズな成長と定着を促すとともに、企業も一緒に成長していくことを目指したいものです。

 

「愛着」と「定着」のためのオンボーディング施策

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新規入社社員が、企業風土に馴染んだり、社内のルールを迅速に理解したり、業務に適切に取り組める状態にすることを目的として実施するオンボーディングですが、実は、「あること」が獲得できれば、さまざまな問題・課題は格段に解決しやすくなります。

その「あること」とは、企業に対する「愛着」。帰属意識を高めるためにオンボーディングを行うことは先に述べましたが、この帰属意識は企業への愛着が前提であり、愛着は企業に「定着」しようとする、つまり帰属する意識の素地になります。

新規入社社員に企業への愛着が備わっていれば、オンボーディングの過程で発生する多少の辛さや苦しさは乗り越えられますが、愛着がないままであれば、どんなにオンボーディングの施策を進めても、その社員にはいずれ離職してしまう可能性が残ります。

特に新卒採用者に関しては、3割前後が1年以内に退職するというデータもある現代において、人事担当者にとって新入社員が企業に愛着を持ち定着するための施策は、重要なものとなっています。

 

オンボーディングによって丁寧なフォローを受けることで、新規入社社員が「わからないことや悩みが相談できる環境にある」「企業と自分、業務と自分との良好な関係が構築できる企業である」と思うことができれば、企業に対する信頼感が醸成され、いわゆる「居心地のよさ」を感じることにつながります。

居心地の良い企業で長く働こうとする「愛着」と「定着」に至る施策を行うことが有用なオンボーディングといえます。

 

  • 企業規模や風土に合わせた有用なオンボーディング施策を

たとえば、新卒採用が中心である大手企業と、急成長に伴って中途採用者を多く募り即戦力としていくベンチャー企業とでは、企業の性質が違うため、「愛着」が湧き「定着」に至るまでの過程も、有用な施策も異なります。

自社の性質を見極めたうえで、現場の社員の声を聞いたり新規入社社員と関係者の反応を見たりしながら、自社に適した施策を行うオンボーディングにしていくことで、新規入社社員だけでなく、受け入れて育てる立場である企業側も成長していくことができます。

 

新規入社社員の受け入れに関わる存在のすべてが、愛着を高めて定着し、成長していくことができるようなオンボーディング施策を目指しましょう。

 

※厚生労働省 「平成30年雇用動向調査結果の概況」

5.離職理由別離職の状況

https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/19-2/dl/gaikyou.pdf

 

 

【監修者プロフィール】

 

吉田 寿

HRガバナンス・リーダーズ株式会社 

指名・人財ガバナンス部 フェロー 

BCS認定プロフェッショナルビジネスコーチ

 

早稲田大学大学院経済学研究科修士課程修了。

富士通人事部門、三菱UFJリサーチ&コンサルティング・プリンシパル、ビジネスコーチ常務取締役チーフHRビジネスオフィサーを経て、202010月より現職。

“人を基軸とした企業変革の視点から、人財マネジメント・システムの再構築や人事制度の抜本的改革などの組織・人財戦略コンサルティングを展開。

中央大学大学院戦略経営研究科客員教授(2008年~2019年)。

早稲田大学トランスナショナルHRM研究所招聘研究員。

主要著書『働き方ネクストへの人事再革新』(日本経済新聞出版)等多数。

 

 

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