2018年8月、当時株式会社リクルートテクノロジーズで導入し、トライアルから長く活用中。
現場の組織長と連携をしながら人事ができることを提示し、どのようにGeppoを活用しているのか。株式会社リクルート プロダクト人事統括室/スタッフ人事統括室の部長/グループマネージャー黒田 亮達様にお話を伺いました。
1.Geppoを導入したきっかけ
2.運用体制
3.課題点と活用ポイント
1.Geppoを導入したきっかけ
―――Geppoを導入いただいたきっかけを教えてください。
黒田様:Geppoをトライアルで導入したのは2018年の8月でした。リクルートグループのプロダクト開発を担う、リクルートテクノロジーズという機能会社の頃です。その当時、体調不良のエスカレーションが前年把握していたものよりも多くなっていた印象があります。
そんな状況に対して人事として何をすべきなのか。実は「コンディション不調者数を減らす」というより、少しでも早く気づいてフォローできることが重要だと考えています。
そこで「早期に従業員のコンディション不調を検知してフォローができる仕組み」を用意することで、従業員や組織長などが一定の安心感を感じられる取り組みができるのではないかと考え、Geppoを導入しました。
―――Geppo導入にあたって懸念点はあったのでしょうか?
黒田様:正直に言いますと、当初は導入を見送るといった意見が強かったです。
導入にあたっての懸念点としては3つありました。
①「設問が多いサーベイではなく、3問のお天気マーク形式の回答だけで我々のやりたいことができるか」
②「新しくサーベイを導入すると従業員の負荷が増えることになるが問題ないか」
③「運用を機能させ、意味のあるフィードバックができるのか」
最終的には「やってみないことには分からない」ということもあり、まずはトライアルとして導入。正式導入の是非については3か月間の試験運用を経てから判断しようとなりました。
3か月という期間を設定したのは、回答者の不調の兆しや「どういった取り組みが改善に至ったのか」などを判断するのに必要な期間として必要だと考えたからです。
また導入をするからには「Geppoを使ったことでどういう兆しが見えたのか」また「良い取り組みに至ったのか」といった結果を現場に共有するという観点も踏まえ、3か月間というスケジュールを設定しました。
―――導入にあたってボードメンバーからはどういった意見があったのでしょうか?
黒田様:まず、未回答者へのリマインド回数が従業員の負担を考えると月4回は多いという意見がありました。そのため月2回に減らす運用にしました。現在の運用体制も考えると、結果的に減らしてよかったと感じています。
他には「サーベイをやりっぱなしにならないように」という意見をいただきました。サーベイを実施するだけで何も対応をしないと意味がなくなってしまうことは、当然認識していました。
また「人事が新しい仕組みを導入したいだけなのでは?」と誤解される懸念もあったので、サーベイ実施後の運用体制(実施後の対応方法や報告・共有フローなど)を入念に設計したうえで、決裁を仰ぐようにしました。なお運用フローについては、Geppoのマニュアルを参考にしながら、自社の状況を踏まえて独自に設計しています。
結果として、決裁時には概ねボードメンバーからのネガティブな反応はなく、承認をもらうことできました。
―――Geppo以外にも、コンディション不調者を減らすことへの打ち手となる人事施策はありましたか?
黒田様:以前から、長期休暇明けの従業員に人事からメールを送ったり、組織長向けの研修パッケージに人事が出て説明をしたりしていました。
従業員に向けては「直属の組織長に言いにくいことがあれば人事にご相談ください」と伝えるなど、草の根活動を行っていました。 Geppoはその次のステップであり、従業員の自発的な回答を尊重しながら、人事が早めにフォローするための施策として位置づけています。
―――年に1回、ストレスチェックを実施していると伺いました。このチェックを通じて何かしらの傾向は見えていたのでしょうか?
黒田様:私個人としては、ストレスチェックからは、結果としての全体傾向を掴んでいました。
ただコンディション不調者の数を減らしたり、ストレスチェックの値を改善したりするというのは一過性のものだったりもするので、ストレスチェックについてはあくまでも「結果」を把握するための指標として捉えていました。
一方で、Geppoについては1年を通じて「(起きた結果ではなく)いかに早く従業員の不調の兆しを捉えられるか」という点にフォーカスして運用することにしています。
2.運用体制
―――現在の運用体制を教えてください。
黒田様:まずサーベイ対象となる従業員数ですが、導入時に600名ほどであったものが現在では2,500名ぐらいの規模感となっています。
全体管理者は人事の数名に絞っており、回答者にもその旨はお伝えしています。回答内容を細かく見られるよう、管理画面ではなく回答データを別ファイルで管理しています。
人事内で毎月、および、これまでの回答内容の変化を見るようにしています。現場に対しては状況に応じて人事からメールなどでお声がけをして、場合によっては面談を実施しています。この対応は導入当時から変わりません。
―――Geppoの運用にかける時間は、毎月どのくらいですか?
黒田様:全体管理者は、事前準備~回答データの確認~従業員への対応含めて、毎月30~40時間程度は工数を掛けていますが、回答内容に一通り目を通すこともあって、月によって工数は上下します。
前述の通り、回答内容を一通り目を通した上で従業員にはメールなどでお声がけをして、場合によっては面談をすることもありますが、基本的には1か月ですべての対応が終わるように業務が設計されています。 また、回答内容は現場の一定以上の役職の人間が見ることもできますので、回答内容を見てもらった上で現場の上長からお声がけいただくこともあります。
―――Geppoの運用は人事が主体的に動かしているようですが、現場への権限移譲も考えているのでしょうか?
黒田様:施策として、どのような立ち位置でGeppoの施策を置くのか、というのは常に見ています。
私たち人事としては、3年以上の運用を継続してきた中で細かいところを磨きこみながら、今の施策にまで至っているところがあります。回答の開示範囲を守りながら、従業員の方が困ったときに書き込みやすいような施策として続けていきたいと思っています。当面は現在のような業務体制を継続していきたいと考えていますが、施策の立ち位置を考える中で現場の方にもっと委ねることも選択肢の1つだと思います。あくまで施策の有効性の観点で判断していきたいと思います。
黒田 亮達様
3.課題点と活用ポイント
―――Geppo活用の中で課題に感じているポイントや、活用ポイントを教えてください。
黒田様:活用という観点で、従業員コミュニケーションをどう進化させるか、ですね。
例えば、面談1つをとっても、以前は対面で、現在はオンラインで面談を行っていますが、30分という限られた時間の中でどう質問を切り出すか、どこに向けて着地をするのかなど、当然人によって感じている課題がちがう上にケースバイケースのコミュニケーションになるので難しいと感じています。
ただ、人事として何を伝え、どうコミュニケーションを取るべきなのか。誰にエスカレーションしたら良いかといった、人事が出せる提案はしっかり出して着地させること。あとは提案が限られているので、過度な期待をしてもらわないようにするということは意識しています。
現場の組織長でないと対応が難しいような内容に関しては、直接相談した方が良いと背中を押してあげることもありますし、人事から伝えることも行っています。
Geppoは設問3問+フリーコメントに回答いただくツールに過ぎないと思っています。導入当初からそのツールの特性を見極めて、どのように活用していくかがポイントになると考えていました。毎月の回答と面談などを通じて、インタラクティブなツールに進化していけるものだと感じています。Geppo側のツール改善もそうですが、人事として従業員の皆様に安心して回答いただく状況を維持しながら運用面での進化を探っていくことが大事ではないかと考えています。
―――本日は大変貴重なお話ありがとうございました。