調剤薬局チェーンを中心に医療・介護サービスを展開する、株式会社アモール。創業地の富山県を中心に、全国で30近くの薬局を運営しています。
全国の約300社の薬局企業が加盟する、日本保険薬局協会(NPhA)理事および富山県薬剤師会理事も務める代表取締役社長・橋場元さんは、「Geppoで検知した不満に対処し、少なくとも3人の従業員の離職を防いだ」と語ります。これは、薬剤師一人を採用するために150万円ほどの費用がかかる薬局業界において、450万円ほどのコストカットに相当します。
全国で働く社員の声を聞き出すために、いかにしてGeppoを活用されたのか。導入以前に抱いていた課題感、導入後の変化から薬局業界特有の課題に対するGeppoの活用方法まで、「風通しの良さ」を維持するための秘訣を伺いました。
■マネジメントの限界を突破し、「風通しの良さ」を維持したい。チェーン展開の企業がGeppoを選んだ理由
ーまず、Geppo導入に至った経緯をお伺いさせてください。導入前は、従業員管理の面でどのような課題をお持ちだったのでしょうか?
橋場さん:社員数が増えるにつれ、弊社の強みである「風通しの良さ」を維持することが難しくなりつつありました。
橋場さん:もともと、私が定期的にすべての部署を巡回し、全社員から直接意見を吸い上げていました。一人ひとりと丁寧にコミュニケーションを取ることで、風通しの良い環境を作り上げていました。しかし、社員数が200人近くまで増え、日本保険薬局協会(NPhA)や富山県薬剤師会の理事など薬剤師・薬局のための業界活動への参画機会が増えると、さすがに私一人で全社員とコミュニケーションを取っていくスタイルには限界が見えはじめました。
そこで、各エリアの部長に私の代わりに巡回してもらうスタイルに変更しました。ただ、コンディションをチェックするためのスキルは属人的で習得が難しく、このやり方も継続するのが難しいことは予測でき、「このままだと、どんどん風通しの悪い組織になってしまうのではないか」と危機感を覚えていました。
ー社長自ら巡回されていたのですね。その他に従業員のコンディションをチェックする仕組みはありましたか?
橋場さん:毎日、各部署から、フリーコメント形式で日報をFAXしてもらっていました。それらに目を通すことで、漠然とではありますが各部署の雰囲気が経時的に掴むことができます。しかし、各店舗の管理者がメインに書くことになるので、個々の社員の状態を可視化するには限界があります。特に、積極的に自分の話をしたがらないタイプの人のことは見過ごされがちになっていました。
ーそういった課題を感じている中でGeppoに出会い、導入を決めてくださったのですね。
橋場さん:実際にツールを使う社員に負担をかけずに済みそうだった点が導入の決め手でした。答える側は1ヶ月に一度、3つの質問に答えるだけですし、管理者側もGeppoのオペレーターが回答を見やすく分類したものをチェックするだけで事足ります。これくらい負担が軽ければ、無理なく継続して使い続けられるだろうと思いました。
また、フリーコメント機能があった点にも惹かれました。この機能があれば、個々の社員の隠れた意見を、以前よりも引き出せるんじゃないかと感じました。Geppo導入前は、部長の巡回か管理者の日報しかコミュニケーション経路がなかったので、意見を表明するハードルが高くなっていました。
ー逆に、導入を検討する際に懸念されていたことはありますか?
橋場さん:きちんと社員の理解を得られるかどうかが不安でしたね。もともと社員にメールアドレスを付与していない店舗もありましたし、PCやスマホなど電子機器の扱いが苦手な社員もいるので、Geppo導入に向けた技術的なハードルが高かった。また、管理者を中心に、Geppoの回答データが評価に使われてしまうのではないかと懸念する声もあがりました。そういった懸念は丁寧に導入意図を説明することで、取り除いていきましたね。
■従業員のコンディションをシャープに可視化。3人の離職を防いだGeppoの危険察知能力
ー実際に導入してみて、どういった点にメリットを感じていただけましたか?
橋場さん:まず、「仕事満足度」「人間関係」「健康」と情報が分類されている点がありがたかったです。今までは、雑談などを通してその人が困っているポイントを感覚的に探っていたのですが、Geppo導入後は「この人は健康面に不安があるのだな」とシャープに分かるようになりました。それに応じて、「体調どうですか?」といったピンポイントで的確な質問をできるようなりました。
また、想定以上にポジティブなフリーコメントが多くて驚きました。不平不満がたくさん書かれると想像していたのですが、意外に感謝の言葉などを書いてくれる人が多くて、組織にポジティブな影響を及ぼしているのを感じます。
ーネガティブな不平不満を解決する形と、逆の活用方法もあったんですね。
橋場さん:想定通りに、今まであまり声をあげていなかった人の声も拾えるようにもなりました。直属の上司には言いにくいようなことを、吐き出せる窓口ができたのは大きいですね。
ーGeppoによって浮かび上がった課題への対処方法は、なにかルールを決めたりしていますか?
橋場さん:Geppoはあくまでも対話のきっかけを与えてくれるツールなので、課題への対処方法はその都度検討しています。Geppoの結果だけをもとに、配置転換などを実施することはありません。Geppoで不満の芽を感知したら、不満の原因を直接の対話により、じっくりと聞いてあげて、ケースに応じた最適な対応策をとっています。
ーGeppoの回答がきっかけで、離職につながるトラブルを防げたことはありましたか?
橋場さん:現時点までで、少なくとも3人はGeppoのおかげで離職を防げたと思います。薬剤師を一人採用するために平均で150万円ほどかかりますが、Geppoが全従業員200名で使っても月10万円程度で済むことを勘案すると、かなりのコスト削減につながっています。
■チェーン展開やM&Aが多い薬局業界こそ、Geppoによるガバナンス強化が必要
ー続いて、日本保険薬局協会や富山県薬剤師会などでの活動も行われている橋場さんに、業界ならではのお話も伺いたいです。薬局業界特有の課題に、Geppoはどのように役立つのでしょうか?
橋場さん:業界全体で、人材不足には悩まされています。特に、資格を保有している薬剤師がなかなか採用できない。しかしGeppoがあれば、「うちの会社は、こうしたツールでしっかりと従業員のコンディションをケアしています」と求職者にアピールできますし、何より離職率が下がります。最近は採用強化ではなく、辞める人の数を減らす方向性での人材確保が主流となりつつあります。
また、患者さんの命を預かっている職種ゆえに感じる、強いプレッシャーへのケアにも役立ちます。ストレスを感じやすい職種だからこそ、しっかりと従業員のコンディションをケアしなければいけません。もちろん、公的機関が定めたストレスチェックテストもありますが、あれは個人の詳細について、会社側は結果を見られないんです。Geppoはストレスチェックテストの簡易版や代替物としても活用できますね。
ー薬局業界は、従業員の女性比率が高い点も特徴だと伺っています。
橋場さん:おっしゃる通りです。女性社員へのケアという観点からも、Geppoが役立っています。特に既婚女性は、家庭内のトラブルを抱えていることが多いと、フリーコメントを通じて明らかになりました。導入前には埋もれていた内容であり、健康面や精神面に問題を抱えていることはわかっても、その原因が家庭にあると申告してくれる人はなかなかいませんでした。
ーGeppoという吐き出し口ができたことで、プライベートな悩みも可視化されるようになったのですね。
橋場さん:また、薬局業界はチェーン店が多いのですが、それゆえにガバナンス強化が求められます。全国に広がっている店舗を、しっかりと統率しなければならない。そういう状況で、Geppoが役に立ちます。これからは薬局の経営環境が厳しくなることが予想されます。求職者も、経営が安定する企業を志向するようになるでしょう。
ー薬局会社間でのM&A事例も増えていますよね。
橋場さん:おっしゃる通りです。M&Aをすると、従業員はこれまでと違った風土やルールに晒されるため、ストレスや不満が溜まりやすい環境になる。そこで、Geppoのようなツールが有効と考えられます。
■フリーコメントへの洞察を深め、Geppoをフル活用したい。従業員の私生活にまで寄り添う経営をするために
ー今後さらにGeppoを活用していくために、どのような点に課題を感じていますか?
橋場さん:フリーコメントへの対処方法は、まだまだ改善できる余地があると思っています。社員のコメントの裏にある意図をもっと正確に汲めるようになりたいですね。たとえば「家を買おうと思っている」というコメントがあったとして、それをただ「プライベートなことまで書いてくれて面白い」と片付けるのではなく、「賃貸の時に出していた家賃補助がなくなって家計が苦しくなるから、何かしら手当が欲しいと思っているのではないか?」などと深く洞察することで、真の課題が見えてきます。また、少数の経営陣だけで毎月全員分のフリーコメントを読んでいくオペレーションにも限界があるので、組織体制ももっと整備する必要があるでしょう。
あとは、他のGeppoユーザーさんから活用ノウハウを学んでいく機会もほしいと思っています。実際に会いにいくのでもSNS上でもいいのですが、お互いの事例を共有すればもっとうまく活用できるようになるはずです。
ー最後に、Geppoはどんな企業におすすめできるツールか、お伺いしたいです。
橋場さん:弊社のように少人数の店舗を多数抱えている企業や、ワンフロアで100人以上の従業員がいるような大規模な企業におすすめです。そのくらいの規模になると、なかなか従業員の顔を見てコンディションを判断することが難しくなってくると思うので。
また先ほども触れましたが、女性社員が多い企業にもおすすめです。家庭内での悩みは、仕事とは関係ないと思って会社では明らかにしない人が多いですが、実は業務のパフォーマンスに直結する。Geppoを使うことで、そういった悩みも炙り出すことができ、プライベートな悩みも話しやすい空気を醸成できます。