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COVID-19の世界的流行を契機に、企業活動においてはテレワークが今までにないスピード感で実装・運用され、その他「3密」を避けるために様々なことが「オンライン」上で行われるようになりました。

通勤のストレスなどが軽減する一方で、対面コミュニケーションや物理的な運動時間の減少により、「強制在宅」で働く従業員には見えないストレスが蓄積していると言われています。

一方で、そのような「強制在宅化」で出勤を余儀なくされる従業員にもまた、今までにないストレスがかかっております。

今回このような多くの人間が初めて目の当たりにする「新しいストレス社会」に対する対応について考えるべく、日本の働き方を考える健康経営推進産業医会、Geppo(ヒューマンキャピタルテクノロジー)の二社による共催という形で本セミナーを開催いたしました。

【登壇者情報】
2020年6月4日 (木)
産業医に聞く!テレワーク時代のメンタルマネジメント

■スピーカー
鈴木 健太
株式会社Dr. 健康経営
代表取締役・医師

■モデレーター
渡邊 大介
株式会社ヒューマンキャピタルテクノロジー
取締役

テレワーク中のメンバーとの面談時において
気を付けておくべきこと


渡邊 ここからディスカッションに移っていきたいと思うのですが、話を聞きたいという意見が多かった「テレワーク中のメンバーとの面談時において気を付けておくべきことは何か?」についてお伺いできますか?

 

鈴木 人事と従業員の場合、面談に来てもらいやすくするということが何よりも大事だと思います。

社内の人間関係を気にして、すぐに言わないという方が多いです。

オフィスがある場合だと、面談する部屋に行くこと自体がネガティブに見られることがありましたが、リモートワーク中はリアルにそこに足を運ぶ必要がなくなったので、面談をすることの追い風になっているかもしれません。

また、産業医とのパイプという意味では、人事は今回この時間を取った背景や目的、今回の面談のゴールの認識共有をするファシリテーター的な役割をやったほうが良いと思います。

今後リモートワークが進むと、これまで「場の雰囲気」で何となくそうだよね、となっていたことが減ってきます。

こういう前提でこう思っています、だからこういう話をしましたという自分の考えを整理して伝えるという能力を上げないとなかなか難しいんじゃないかなと思います。

会社は仕事スイッチを提供する


渡邊 付随して1つお聞きしたいのですが、リモートワークになったことでメンバーに対して注意をすることへの難易度が上がってきていると感じていて、対面して空気感を共有できない相手に対して適切に注意を促す良い方法はありますか?

 

鈴木 少なくとも前提として注意をしてほしいのは、(ハラスメントのような)センシティブな話にも結び付きやすいので、お互いの理解を深めるためにも(顔を出した状態)テレビ会議でやったほうがいいと思います

対面で得られる情報を100%とすると、テレビ会議だと75%に、文字だけだと33%に落ちると言われています。

全身の仕草が見えなくても、上半身が移って表情が見えるだけである程度はお互い分かるので、せめてテレビ会議にしたほうが良いです。

 

渡邊 なるほど。

受講されている皆さんにお聞きしたいのですが、皆さんの会ではテレビ会議の時、従業員の皆さんは顔出ししてくれますか?

もし、顔出ししてくれるよっていう会社さんは挙手をお願いします。

(ぱらぱら)

あ、全然手が挙がらないですね。40人中8,9人しか挙がらない・・・やはり「顔出し」は各社ハードルが高そうですね。顔を出すと音声や画質が悪くなると行った環境要因によってしまうところもあるのかもしれません。

私自身の悩みで言うと、例えば顔を出すために身だしなみを整えなければ行けないとか、女性であればお化粧をしなければならない、とか結構顔を出すことが「手間」だと思われる方が多いな、という点です。そういうことを考慮してしまうと、なかなか顔を出して、と言いづらい部分があるんですよね。

例えばそういう場合、何か良い仕掛けで顔を出してもらえるような方法があれば教えていただきたいです。

 

鈴木 義務というか、リモートワーク上のルールとして設定してしまうのは一つ手だとは思います。

文字ではOKと言っているけれど、悩みを抱えている場合、顔を見ればわかるケースはやはりあります。そういったベネフィットを強調してルールを敷いていくのがやはり王道でしょうね。

また、顔が見えるということは仕事に行くというスイッチを入れることになるので、メリハリとしても私は良いと思っています。

 

渡邊 3回に1回は顔出しをすることをルール化している会社があったり、発話する時だけは顔を出したほうがいいですよね、という意見が寄せられています。

強制力を持ってルール化するというのも途中からだとやりづらいなというのは少しあると思うのですが、一方で仕事のスイッチを入れる儀式みたいなものを会社から提供するというのはありだなと思いました。

例えば、朝会で15分でいいから今日のアジェンダとかを一瞬顔を合わせてやるとか、そういうきっかけが必要だと思っています。

今までは出社という、移動時間とか朝シャワーを浴びて身なりを整えて、出社した後も休み時間が一緒だったり就業時間がきっちり決まっていたりするので、それが仕事スイッチになってメリハリがついていたのが、リモートワークになるとこれが無くなってしまう。個人のリフレッシュ環境などに対しても会社側から提供してあげるというのは確かに有効かもしれませんね。

 

鈴木 人によっては、熱々のシャワーを浴びるのがスイッチだったり、こだわりはあると思うのですが、会社としてはまずは軽めの負荷で何か強制力を持たせたほうが良いかなと思います。

モチベーションを維持するためのコツ


渡邊 図らずも、2つ目の質問の回答を聞けてしまったのですが、次に多かった質問「テレワーク時のモチベーションを維持し続けるためのコツ」をお伺いしてもよろしいでしょうか?

 

鈴木 Whyの部分をちゃんと突き詰めているか、というのが私の考えです。

リモートワークになり、目の前の仕事が忙しくなると、なかなか自分で整理したり、思考したりできなくなっていきます。

ただ今だからこそ、定期的なリフレッシュが必要なのですが、これを自分で出来る人はごく限られた人なので、第三者の人事または上司がやってあげるべきだと思っています。

実際は仕事の評価だけしかないので、そもそもなんで今の仕事をしているのか?どういう風なキャリアがあるのか?どういう風に人生を過ごすのか?ということから、だから今この会社でこういうことをやっているんですよね、ということを一つのストーリーとして示していかねばなりません。

これが1番のモチベーションの源泉だと私は思っています。

 

渡邊 今お聞きして、リモートワークという枕詞がなくても非常に重要なことだなと感じたのですが、逆にリモートワークという環境固有の欠点や、在宅ワークだからこそフォローしてあげなければならない点などはありますでしょうか?

 

鈴木 やはり先ほどの定期的な接点です。

対面で見えない部分や気付けないところに対して、それでも気付けるようにするためにはどうするかっていうのが、言語化だったり、定期的な接点という風に考えています。

私としては、リモートワークだからこそ、という飛び道具的なものはなかなか無いのではないかと思っています。

 

渡邊 このあたり、もう少ししつこく聞かせてください。

目標設定をしっかりと行ない、Whyの部分を定点観測して導いてあげるというのは、リモートワーク関係なく、マネジメントの仕事として大事だと思っていて、どんな環境でも不変なものだと思っています。

ただ一方で、リモートワーク環境下になりオフィスが無くなったりすると、なんかあの人上手くいってないなとか、最近目標に対して燃えていないなとかが分かりづらくなっていていると思います。

例えば、オフィスでメガホン持ってみんなで頑張ろう!と言ってれば何とかなったものが、リモートワークでメガホンを持っても隣にいい迷惑なだけなので、何か別の手段でやらなくてはいけないと思っています。

 

鈴木 細分化だと思います。

メガホンの話っていうのは、全員が同じ環境にいたことで、目標も理念も実際の業務も全て共有できていたけど、リモートワーク環境下だとそれができなくなっているということですよね。

例えば、会社の理念だったら、こういう世界作りたいよねっていうことはWebにあげて誰でも見れるようにするとか、モチベーションだったら、メンターがしっかり聞いていますかということを固めていく必要があります。

 

渡邊 なるほど、ありがとうございます。

サイバーエージェントでも、役員レベルの人間がメッセージ配信をしていたり、何か変化が起きた時に1番最初に対応するのが役員レベルだったりして、まさに率先垂範、その姿勢が社員のモチベーションにつながっているようにも思います。

見えない環境、だからこそ、見える化の努力はとても大切ですね。

産業医にどんどん頼る


渡邊 最後に、私自身人事をやっているときに産業医の方と直接触れ合う機会ってほとんどなかったなと思っていて、産業医の方とうまくやっていくために何かコツみたいなものがあれば教えてください。

 

鈴木 産業医の先生と一緒に協働する、という風に、会社の考え方を変えることが必要です。

先ほどの話のように風土醸成みたいな、気軽に相談していいんだよっていことは社内にどんどん周知をして、そういう安心できる場を作っていってほしいなと思います。

 

渡邊 私もなかなか頼っていいのか、難しいところがあったので、そのようなことを産業医サイドから言っていただけると非常に嬉しいなと思います。

本日はありがとうございました。

(終)

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