「仕事にやりがいが感じられない」「仕事のやりがいが見つけられなかった」と言って辞めていく社員。
なんとなく使ってしまう「仕事のやりがい」という言葉ですが、では、「仕事のやりがい」とはどのようなものなのでしょうか。また、どのようなことを行えば、社員に仕事のやりがいをもってもらえるのでしょうか。社員に仕事のやりがいをもってもらうためのポイントをご紹介します。
■仕事のやりがいとは
社員は仕事のやりがいを「成果を出すために熱心に仕事をしているとき」「仕事で結果を出したとき」「お礼や感謝の言葉をもらったとき」などに実感します。
一方で、「誰でもできる仕事を押し付けられていると感じるとき」や、「割に合わない仕事をしていると思ったとき」「誰のために仕事をしているのかわからないと感じたとき」などには、仕事のやりがいは感じられません。
これらから、「仕事のやりがい」の実感は、仕事に誇りを持ち、主体的に関わって心が充実している状態や、ある種の成果が出て心が満たされている状態であるということがわかります。また、「仕事のやりがい」は「成果」や「パフォーマンス」と密接につながっているということも言えそうです。
■仕事のやりがいとパフォーマンスの関係性
「仕事のやりがい」と「パフォーマンス」との関係について、オランダのユトレヒト大学のシャウフェリ教授らが提唱した、社員の心の健康度を示す「ワーク・エンゲイジメント」という概念をご紹介します。次の3つが揃うことで、心が充実し、仕事のパフォーマンスにも影響を与えるとされています。
- 熱意……仕事に誇りや、やりがいを感じている
- 没頭……仕事に熱心に取り組んでいる
- 活力……仕事から活力を得ていきいきとしている
やりがいを感じている「熱意」がある状態が、仕事でパフォーマンスを出す前提といえそうです。さらに、ワーク・エンゲイジメントが高ければ、心身の健康が保たれるというデータもあります。パフォーマンスを高めるためにも、社員の心の健康を守るためにも、仕事に対して誇りややりがいを感じることが重要なのです。
■仕事のやりがいと働きやすさ
仕事を行う上では、「仕事のやりがい」と「働きやすさ」も、密接に関わってくるものです。詳しく見てみましょう。
●仕事のやりがい+働きやすさ=働きがい
株式会社働きがいのある会社研究所(Great Place to Work® Institute Japan)は、企業の「働きがい」を調査している会社です。
(URL:https://hatarakigai.info/)
同社では、『働きがい』を「やりがい」と「働きやすさ」が合わさったものと分析しています。
(URL:https://hatarakigai.info/library/analysis/20180712_135.html)
たとえば、「やりがい」については次のようなものと定義しています。
- 仕事に対するやる気やモチベーション
- 仕事そのものや仕事を通じた変化に起因するもの
- 経営・管理者層と信頼関係がある状況
- 仕事の誇りや連帯感を感じることができる状況
また、「働きやすさ」については次のようなものと定義しています。
- 快適に働き続けるための就労条件や報酬条件など
- ワークライフバランスや労働環境が整備されている環境
2018年版日本における「働きがいのある会社」ランキングの調査データを使用し、「やりがい」と「働きやすさ」の観点で分析した結果、売り上げの対前年伸び率については、働きやすく、やりがいもある職場が最も高い値を示し、働きやすくもなく、やりがいもない職場との間には、37%以上もの差がついています。
どちらかというと、手の付けやすく、周りからも導入したことがわかりやすい「働きやすさ」から改善しようと考える企業は多いものですが、業績の面で考えると同時に「やりがい」も上げていかなければいけないことが理解できます。
■仕事のやりがいを感じてもらうために
パフォーマンスが高く業績が向上している企業で働いている人だけが、仕事のやりがいを感じるというわけではありませんが、パフォーマンスの高い職場では、仕事への誇りや意義を実感でき、仲間との連帯感や一体感も感じられているようです。
以下、パフォーマンスの高い職場が力を入れている社員に仕事のやりがいを感じてもらうためのポイントをご紹介します。
●OJTやOFF-JTなど能力開発の活用
「段階的に高度な仕事を割り振っている」「仕事の幅を広げている」という計画的に新たな業務に挑戦させるOJTは、生産性の向上につながっているだけでなく、社員のやる気も引き出しています。
労働政策研究・研修機構「人材育成と能力開発の現状と課題に関する調査(労働者調査票)」(2017 年)では、OFF-JTの実施により、社員の感じる社内の雰囲気についても示され、次のようなものが挙がっています。
- 研修会などの仕事の知識やスキルを高める機会が多い
- 先輩が後輩を教える雰囲気がある
- 職場内で助け合う雰囲気がある
- 上司や同僚などと相談しやすい雰囲気がある
- 女性正社員が男性正社員と同じように活躍している
- 社員同士の職場外でのつきあいがある
- 育児や介護などと仕事の両立がしやすい
OFF-JTが実施されている企業では、能力開発の機会が多いことに加え、先輩が後輩を教えたり、上司や同僚に相談したりする、社員同士のコミュニケーションが円滑な環境にあることがくみ取れます。
ON/OFF問わず、専門性や創造性を磨く能力開発の機会、職務の幅を広げる機会が十分であることで、社員は成長実感を得ることができるでしょう。
●人材マネジメントの積極的な取り組み
雇用管理に積極的に取り組んでいる企業では、その施策が効果を表すだけでなく、仕事に対するモチベーション、労働生産性の向上にもつながります。
モチベーションの向上につながる雇用管理の施策について、労働政策研究・研修機構「多様な働き方の進展と人材マネジメントの在り方に関する調査(企業調査票・正社員調査票)」(2018 年)では、次のようなものが挙げられています。
- 長時間労働対策やメンタルヘルス対策
- 仕事と育児の両立支援
- 能力、成果等に見合った昇進や賃金アップ
- 人事評価に関する公正性、納得性の向上
- 優秀な人材の選抜、登用
- 職場の人間関係やコミュニケーションの円滑化
働きやすさを念頭に置いたものもありますが、仕事の成果に応じて「昇進や賃金アップ」「公正な評価」「選抜や登用」など会社が社員を「認める」ことにより、達成感や満足感が生まれ、やりがいを実感してもらう機会になります。
●目標設定と人事評価
仕事の目標設定や人事評価もまた、社員のモチベーションに影響を与えます。
労働政策研究・研修機構「多様な働き方の進展と人材マネジメントの在り方に関する調査(企業調査票・正社員調査票)」(2018 年)によると、「従業員の目標設定があり、人事評価に満足している」という人は、仕事に対するモチベーションが向上している従業員の割合が高くなるという結果がでています。
一方、「従業員の目標設定があるが、従業員が人事評価に満足していない」「従業員の目標設定をしていない」では、仕事に対するモチベーションが低下している従業員の割合が高くなっています。
また、目標管理や指導の頻度も、仕事のモチベーションに影響します。
「半年・年に1度」の頻度で目標指導・管理が実施されている場合、モチベーションが向上している従業員の割合は高くなっています。そして、目標指導や管理の頻度が「週に1度」「毎日」と高まるほど、上司や管理層との信頼感が生まれ、仕事に対するモチベーションが向上している従業員の割合が高まります。一方、目標設定はされているけれど、指導・管理されていない場合、仕事に対するモチベーションが低下している従業員の割合が高くなっています。
会社の業績にもつながる仕事のやりがい
社員のやりがいやモチベーションを向上させる施策をご紹介しました。社員のやりがいは、職場全体のやる気やモチベーションにも影響を与え、会社の業績にもつながります。良い影響の連鎖となるように、社員の能力開発や目標設定など、仕事のやりがいをもってもらうポイントをぜひ見直してみてください。