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仕事相手の口から出た「エンゲージメントを高めて……」というフレーズ。

なんとなく頷いたけれど、実はどういう意味なのかよくわからなかったなんてことはないでしょうか?

この記事では「エンゲージメント」のそもそもの意味、最近よく耳にするビジネス用語としての使い方や注目されているポイントなど、「エンゲージメント」の使い方についてご紹介します。

 

「エンゲージメント」のそもそもの意味は?

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  • 本来はさまざまな「約束ごと」を表す言葉

辞書によると、「エンゲージメント」の意味は以下のように記載されています。

 

1 約束。契約。協約。

2 結婚の約束。婚約。

小学館「デジタル大辞泉」より)

 

 

エンゲージメントリング(婚約指輪)などを思い浮かべるとわかりやすいでしょう。

また、別の辞書によると、以下のような意味でも使われていたことがわかります。

 

 

冷戦期の「封じ込め」に代わる、米クリントン政権によるポスト冷戦の政策。

朝日新聞出版発行「知恵蔵」より)

 

  • 現在の「エンゲージメント」はビジネス用語として使われることが多い

現在では、「エンゲージメントはビジネス用語として使われることが多くなっていますが、マーケティングや人事、投資などといったビジネスの分野によってその対象や概念は異なります。

では各分野で「エンゲージメント」は具体的にどのような定義で使われているのか、以下で具体的にご紹介します。

 

 

1)マーケティング

広告などの各種マーケティング活動において、顧客の興味や注意を引きつけ、企業と顧客の結びつきを強めること。

小学館「デジタル大辞泉」より)

 

 

2)人材マネジメント

「エンゲージメント」とは、従業員の会社に対する「愛着心」や「思い入れ」をあらわすものと解釈されますが、より踏み込んだ考え方としては、「個人と組織が一体となり、双方の成長に貢献しあう関係」のことをいいます。

HRビジョン「人事労務用語辞典より)

 

 

3)投資

機関投資家等が投資先企業や投資を検討している企業に対して行う「建設的な目的をもった対話」のことを指す。投資家が中長期的な視点から経営の改善に働きかけることで、企業の持続的な成長と企業価値向上を促すことを目指す。エンゲージメントの手段としては、経営者との直接対話や、株主総会での議決権行使や株主提案などを通じた対話などがある。

野村證券「証券用語解説集」より)

 

 

こうしてそれぞれ見てみると、対象や働きかけ方は異なっているものの、「エンゲージメント」の根底に「絆、信頼関係を重んじる」という大前提があるところは共通していることがわかります。


 

マーケティング分野・投資分野における「エンゲージメント」の意味と使い方は?

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  • マーケティングでは企業が顧客との「エンゲージメントを築く」

先述したように、マーケティング分野におけるエンゲージメントは「顧客の興味や注意を引きつけ、企業と顧客の結びつきを強めること」とされています。

具体的には「顧客との関わりを強めるための施策を講じる」ことを指して「エンゲージメントを築く(高める、強化する)」といったりします。

 

  • 「エンゲージメント率」という使い方も

マーケティング分野における「エンゲージメント」の評価指標は「エンゲージメント率」が一般的です。

SNSなどのマーケティングにおいて、1投稿へ対して、ユーザがいいね・シェア・コメントなどをする割合を指数化したものです。

投稿に対するユーザのアクションの数や割合を表す指数なので、ユーザから企業へのエンゲージメントを把握する目安となるのです。

 

  • 投資分野では投資家が企業に「エンゲージメントを行う」

投資分野でのエンゲージメントは「機関投資家等が投資先企業や投資を検討している企業に対して行う『建設的な目的をもった対話』」とされています。

つまり「投資家が企業価値を高めようとして行う対話」であり、それ自体を指して「エンゲージメントを行う」ということもあります。

 

人材マネジメント分野における「エンゲージメント」の意味使い方は?

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  • 人材マネジメント分野では企業と従業員が「エンゲージメントを高める」

人材マネジメント分野における「エンゲージメント」は、辞書が示す通り「従業員の会社に対する愛着や思い入れ」といった意味で使われることも多いようです。

しかし、それは実は表層的な使い方です。会社経営の観点では、「個人と組織が一体となり、双方の成長に貢献しあう関係」という意味で使うことが本質的な使い方です。

 

「個人と組織が一体となり、双方の成長に貢献しあう関係」は、個人と組織の間にしっかりとした絆や信頼がないと成り立ちません。

この絆や信頼関係を深めることを指して「エンゲージメントを高める(向上させる、強化する)」といいます。

 

  • 土台から築き上げていく「エンゲージメント経営」

人材マネジメント分野では「エンゲージメント経営」という表現もありますが、これは先述の個人(従業員)と組織(企業)がしっかりとした絆や信頼関係を築くことに重きを置いた経営手法です。

エンゲージメント経営と一言でいっても、その実践方法はさまざまです。

 

たとえば、会社経営の目的を果たし、企業としてのビジョンを実現していくための施策というと、一般的にはまず組織を変えたり、人事制度を変えたり、社員教育を行ったりすることが思い浮かぶかもしれません。

 

では、エンゲージメントを高めることに特化した組織や人事の改革を行ったり、社員教育を施したりするのがエンゲージメント経営かというと、ちょっと違います。

実は、こうした改革や教育を成功させるための土台となっているものが「エンゲージメント」の強化なのです。

ここでの「エンゲージメント」は組織の絆、信頼というような意味合いになります。

要は、企業と従業員の絆がしっかりしていない、信頼関係がないまま、組織や人事、教育だけを改革しても、思うような効果は得にくく、ビジョンを実現するのも難しいということです。

そういう意味では、エンゲージメントは従業員が安心して働くための土台、インフラといってもいいでしょう。

それがなければ、従業員たちは十分な活躍ができないというわけです。

 

ここでのエンゲージメントの構成要素には大きく3つ、「会社への愛着」「仕事に対する誇り」「成果への貢献意欲」があります。

この3つをバランスよく、うまくマネジメントしていくことが、エンゲージメントの向上につながると考えられています

これは「働き方の理想形」を考えれば自明なことで、会社に愛着をもって働けているし、今やっている仕事にも誇りをもっている、それだけでなく、成果に対してもちゃんと貢献できているという状態は、まさに「働き手として充実している」といえます。

土台となるエンゲージメントも重要ですし、もちろん土台だけではなく、そのうえに載ってくる要素も重要です。

具体的には会社の組織、人事の仕組みがきちんと整っていること、そこで一般社員から中間管理職、経営層まで、それぞれが自分の置かれた立場でどう会社に貢献しているかといったことが挙げられます。

 

人事や組織といったハードの改革、人員の意識や行動といったソフトの改革が車の両輪のようにバランスよく成立していることで、初めて会社の目指姿がハッキリしていくと考えられます

 

つまりここでいうエンゲージメント経営とは、会社・組織の目指すビジョンを明らかにして、社員へのビジョンの浸透度や共感度測定も含めてエンゲージメント調査(後述)を実施し、ハードの改革とソフトの改革を実行していくこと。

エンゲージメントはその土台になるものなのです。

 

  • 「エンゲージメント調査」で「エンゲージメント指数」を割り出す

1)エンゲージメント調査とは

エンゲージメント経営の方針に大きく関わるのが「エンゲージメント調査(エンゲージメントサーベイ)」です。

これは主に従業員へのアンケート調査を行い、その結果を数値化することでエンゲージメントの状態を可視化する手段です。

従業員が自社へのエンゲージメントを形成するのに重要な項目を調べるこの調査は、一見すると「従業員満足度調査」と似ているように思われるかもしれませんが、ヒアリングして導き出したいポイントが異なります。

従業員満足度の調査で質問されるのは、たとえば「給与や福利厚生に満足しているか」「労働環境や勤務時間は適正か」「キャリア開発や教育制度などに満足しているか」といった、会社から与えられている待遇・環境に関するものです。

 

一方、エンゲージメント調査の質問は、たとえば「会社に対する愛着や思い入れはあるか」「今取り組んでいる仕事は働きがいがあるか」といったもので、会社と信頼関係を築き、前向きに仕事に取り組めているかを問う内容になっています。

 

 

2)エンゲージメント指数とは

エンゲージメント調査によって数値化された評価指標は、「エンゲージメント指数(エンゲージメントスコア)」と呼ばれます。

調査の手法などにもよりますが、各項目については5点満点、総合点は100点満点とされるケースが一般的です。

エンゲージメントの主な使い方である「エンゲージメントを高める、向上させる」といった言い回しは、この指数(スコア)を上げていくこととも関連しているわけです。


 

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なぜ今ビジネスで「エンゲージメント」が重んじられるのか?

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  • マーケティングでは「ブランディング」から「エンゲージメント」へ

マーケティング分野では、ICTInformation and Communication Technologyの略)=情報通信技術の発展によって、広告などの施策の反応が事細かに測定、数値化できるようになりました。

このことにより、今まで企業から一方向的に顧客に対して発信してきたマーケティング手法ではなく、顧客の「反応」をベースにした双方向的な手法、いわゆる「エンゲージメントを築く」施策が可能になり、成果を挙げはじめています。

 

  • 投資分野ではコーポレートガバナンス改革の施策として注目

投資分野では、金融庁と東京証券取引所が上場企業の経営規範ともいえる「企業統治指針」(コーポレートガバナンス・コード)を策定して以降、企業のコーポレートガバナンス改革が進みつつあります。

投資家と企業との建設的な対話であるエンゲージメントも、この改革の施策の一つとして注目されています。

 

  • 人材マネジメント分野では「エンゲージメント」が低成長時代のビジネスモデルに

人材マネジメント分野においては、これまで高度経済成長期の成長ベースのビジネスモデルが採用されてきました。

待遇や労働環境、キャリアコースといったいわゆる「ハード面」を整えていくことで、従業員のモチベーションを維持する従来のモデルです。

経済も会社も成長しているフェーズであれば、待遇や労働環境、キャリアコースなどの改善を進める従来型モデルは、従業員のモチベーションアップにつながることはおおいに期待できます。

 

 

しかし労働人口が減り低成長時代を迎えている現代においては、ハード面の改善にリソースを割くことが難しいため、従来型モデルは行き詰まりをみせています。

そのような時代において「エンゲージメント」型のビジネスモデルは、ソフト面を重視し、企業と従業員がお互いに貢献し、信頼関係を構築することを後押しするとともに、生産性の向上を図り、限られたリソースのなかでも安心して働ける土台を築くことを目指します。

こうして安心して働ける土台ができることによって、ハード面の改善も目指せるようになり、待遇や労働環境も含めたソフトとハードのバランスが取れた経営を実現できるようになるわけです。

 

 

今回は「エンゲージメント」という言葉について、その言葉の意味、ビジネス領域での使われ方、そのなかでも特に人材マネジメント分野での使われ方や位置づけについてご紹介しました。

エンゲージメントを高めて社員のモチベーション向上を図るには、まず社員一人ひとりとのコミュニケーションを大切にし、それぞれのコンディションを把握することが大切です。

 

ぜひこれをきっかけに、人材マネジメントにおけるエンゲージメントの向上に取り組んでみてください。

そして、信頼関係のうえに成り立つ、社員とともに成長できる企業を実現していきましょう。

【監修者プロフィール】

 

吉田 寿

HRガバナンス・リーダーズ株式会社 

指名・人財ガバナンス部 フェロー 

BCS認定プロフェッショナルビジネスコーチ

 

早稲田大学大学院経済学研究科修士課程修了。

富士通人事部門、三菱UFJリサーチ&コンサルティング・プリンシパル、ビジネスコーチ常務取締役チーフHRビジネスオフィサーを経て、202010月より現職。

“人を基軸とした企業変革の視点から、人財マネジメント・システムの再構築や人事制度の抜本的改革などの組織・人財戦略コンサルティングを展開。

中央大学大学院戦略経営研究科客員教授(2008年~2019年)。

早稲田大学トランスナショナルHRM研究所招聘研究員。

主要著書『働き方ネクストへの人事再革新』(日本経済新聞出版)等多数。

 

 

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