モチベーションが高く、いきいきと働いている人と仕事をするのは楽しいものです。また、モチベーションが高い人は、生産性も高く、企業に貢献している人が多いように感じられます。そのような人がたくさんいると、企業にも好循環が生まれます。そこで今回は、仕事のモチベーションアップのための方法や効果をご紹介します。
■仕事のモチベーション
●モチベーションとは
「モチベーション」とは、やる気を起こして一生懸命に取り組んでいく気持ちのことを指します。目標を達成するために行動し、目標を達成するまで行動を継続させる心の動きのことです。
「動機づけ」とも言いい、興味や関心など自分の心の中から湧き出てくる感情から行動へつながる「内発的動機」と、報酬や地位を得たり、ペナルティを与えられたりなど外からの刺激によって行動させる「外発的動機」の2つの「動機づけ」があります。
一般的には、「外発的動機」は短期的には有用ですが、中長期的に意欲を持ち続けることは難しいと考えられています。一方、「内発的動機」は、自身の心の内側からの意欲や欲求のため、自身の「やりたいことがやれている」状況を作り続けられる限り、モチベーションは持続すると考えられています。
●モチベーションの管理は企業経営の大切な要素
モチベーションの高い従業員は、定められた目標を達成するために、工夫して積極的な行動をとるため、従業員個人の成長につながります。
従業員のモチベーションを高め、維持し続けるためには、成長に伴う個人の変化を見る必要があります。例えば、ボーナスや賞与は、モチベーション向上の戦略として若手には有効だとされますが、すでに十分な給与を得ている人材に対しては、それほどモチベーションが上がる要因にはならないこともあります。
特に大手企業ともなれば、年齢や国籍をはじめ多種多様な人材が働いていますから、どの属性に向けての人事施策なのか、その施策をネガティブにとらえる人はいないか、などを考慮しさまざまな施策を整える必要があります。
また、モチベーションが高い従業員が目標を達成すると、企業の生産性向上にも貢献します。終身雇用が崩壊しつつあり、雇用の流動化が進んでいる現在、従業員のモチベーションを向上させることができない企業は企業全体の生産性が上がらないばかりか、どんどん人が離れてしまいます。
逆に、従業員のモチベーションを向上させることができる企業では、従業員が生産性の高い仕事をし、長く働き続けます。さらに、そのような職場で働きたいと思う人からの応募が多くなるでしょう。
したがって、魅力的な企業、魅力的な職場をつくることで、モチベーションが高く、優秀な人材が集まり、生産性もアップするという好循環が生まれるのです。
■モチベーションアップによる効果とモチベーションダウンによる影響
●モチベーションアップによる効果とモチベーションダウンによる影響
東京労働局の「『働き方改革』推進の取り組み」には、多様な人材が活躍できる職場づくりに取り組むことで、働く人々のモチベーションの向上や時間意識の高まり、健康の確保が図られ、生産性の向上につながると書かれています。さらに、良い人材の確保・定着は企業イメージにもプラスとなり、ひいては企業の成長につながることができるということが記載されています。
裏をかえせば、従業員のモチベーションが低いことによって、生産性や業務効率が低下し、離職者が増加するというような影響があるということが理解できます。
●モチベーションが低くなる原因
厚生労働省「平成20年度版 労働経済の分析」には、モチベーションが低下した従業員の理由が記載されています。そこでは「賃金が低い」「評価の納得性が担保されていない」という理由が、ほかの「職場のコミュニケーションが円滑でない」や「昇進に対する展開が乏しい」「仕事を通じて学べるものが少ない」「労働時間が長い」という理由に対し、2倍近くの差をつけて挙げられています。
給与に関しては、生活に不可欠なお金に関することですから敏感になるテーマです。
厚生労働省が毎年発表している「国民生活基礎調査」や「賃金構造基本統計調査」は、ニュースによく取り上げられ、転職情報サイトなどでも職種別や年代別の平均年収がとりあげられています。自身の給与が同年代や同職種と比べてどの水準なのか、容易に比較ができることから、自身が受ける評価や報酬としての賃金には敏感になりやすいものです。
目標設定と評価、報酬はモチベーションの高低に深くかかわっています。「評価」や報酬としての「賃金」について納得がいかない場合は、従業員のモチベーションは下がってしまうでしょう。
■モチベーションアップのための方法
それでは、従業員のモチベーションをアップするために、人事担当者や企業はどのようなことをすればよいのでしょうか。
同省の「平成 30 年版 労働経済の分析―働き方の多様化に応じた人材育成の在り方について―」には、「正社員の仕事に対するモチベーションの向上につながる雇用管理」について掲載されています。仕事に対するモチベーションが向上している企業では、次のようなテーマに積極的に取り組んでいるということがわかりました。
- 労働時間の短縮や働き方の柔軟化
- 職場の人間関係やコミュニケーションの円滑化
- 本人の希望を踏まえた配属、配置転換
モチベーションを上げる対策は、ほかにもありますので、それぞれ詳しく見ていきましょう。
●ワークライフバランスを充実させる
- 入園式などの行事参加ができるように育児目的で利用できる休暇制度の導入
- テレワークや在宅勤務制度の導入
- フレックスタイムの導入
やりがいや充実感を感じながら働き、責任感のある仕事を行う一方で、子育てや介護、家庭に費やす個人の時間を持てるような生活を誰もが求めています。政府も、社会全体で仕事と生活の双方の調和の実現をしていかなければならないと、「ワークライフバランス」の推進をするために働きかけています。
●本人の希望をかなえた配属、配置
- ジョブローテーション
- 社内公募、社内FA制度
- 昇格試験制度
- 地域限定正社員制度
配属や配置の変更直後は、一時的に生産性の低下が見られる為、大企業では、割と実行しやすいものの、中小企業では難しい場合もあります。
一方、多彩な業務を経験することによって、仕事に対する理解が深まり、モチベーションがアップし、生産性の向上につながることがあります。すべての従業員を希望する部署へ配属したり配置したりすることは難しいでしょうが、社内公募や社内FA、昇格試験など公平な機会を準備しておくことが重要です。
●スキルアップ、能力開発の拡充
- キャリアに合わせた階層別研修
- カフェテリア型の研修制度
- OJT、OFF-JT、自己啓発の実施
- 書籍の購入、セミナー受講の補助金制度
能力開発が企業のパフォーマンスに与える影響について、厚生労働省が分析を行った結果、翌年の売上高や労働生産性を向上させる効果があることがわかりました。企業による能力開発の積極的な実施は、従業員の仕事に対するモチベーションの上昇につながり、さらには離職率の低下にもつながります。
●目標管理と人事評価
- 全社集会(キックオフ)の開催し方針や目標の周知
- 公正、透明性のある評価制度
- インセンティブ制度の設置
- 360度評価の導入
厚生労働省の調査によると、従業員の目標設定があり、且つ、人事評価に満足している企業では、仕事に対するモチベーションが向上している従業員の割合が高いということがわかっています。また、上司から目標の指導があるほど、モチベーションが向上している従業員が増えているということもわかっています。
多様な人が働いている会社では、モチベーションアップの方法を設定しておき、個人個人に適合したモチベーションの上げ方を上司や会社は理解しておくとよいでしょう。
従業員のモチベーションアップで好循環に
モチベーションが高く、いきいきと働いている従業員は生産性も高く、企業の業績に貢献しています。そのような企業にはモチベーションの高い人が入社し、定着しているということがわかりました。自社に合うモチベーションアップのための施策を実施し、従業員のモチベーションアップにお役立てください。