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エンゲージメントとは約束、雇用、婚約、契約などさまざまな意味を含んだ言葉のこと。

ビジネスの分野では、従業員の会社に対する愛着や思い入れ、働きがい、一体感などといった意味で用いられます。

このエンゲージメントという考えは、経営にも影響する指標として、近年日本でも大きな注目を集めています。

 

エンゲージメントが期待されている背景とは

  • エンゲージメントは「働きがい」

「エンゲージメント」という言葉さまざまな意味を含んでいることから、人事領域における「エンゲージメント」もまた、「働きがい」や「会社への愛着」など、人によって解釈が分かれがちです

 

 

この記事では、エンゲージメントを個人の側面から、『仕事そのものに対してての働きがい』、及び、会社と個人の方向性が合致しているかどうかの側面からの『会社のビジョン・目標達成に向けて、従業員自発的な貢献意欲』2側面で定義し、解説していきます。

 

後者は、会社が立てた目標に対し、従業員も共感・賛同している、つまり会社全体として同じ方向を向いているような状態であればあるほど「エンゲージメントが高い状態」ということ。

エンゲージメントが高い状態では、従業員はただ言われたことをやるのではなく、目標を達成するために、やりがいをもって自発的に行動を起こすようになります。

 

  • 従来の指標が抱える課題を解決すると期待される「エンゲージメント」

近年、注目を集めている「エンゲージメント」という指標ですが、ここまで注目されている理由はどこにあるのでしょうか。

その背景には、これまで「会社を内部から改善する」ために用いられてきた指標が抱える課題があります。

 

 

エンゲージメントが注目される前に、社員の状態を見える化する指標として注目を集めていたのは、会社への「ロイヤルティ(Loyalty)」や「従業員満足度」などでした。

 

しかし、会社への「ロイヤルティ」は、以前は機能していましたが、終身雇用制度が崩壊しつつある現在、難しくなってきており、また「従業員満足度」はある程度まで達してしまうと、会社の業績向上につながらなくなることがわかってきています。

 

 

こうした課題を解決する指標として、エンゲージメントが注目を集めるようになります。

特に、会社と従業員の方向性が合致しているかどうかの側面を表す、後述の「従業員エンゲージメント」は、従業員の目標達成意欲や主体性を測る指標として効果的であるだけでなく、従業員エンゲージメントが高まれば企業の業績向上にも効果があるようです。

 

 

アメリカの大手調査会社であるギャラップ社が行った2017年の調査※によると、従業員エンゲージメントが高い企業は、顧客評価が10%、生産性が17%、売上高が20%、利益率が21%増加したという結果が出ています。

 

 

グローバル企業ではすでに従業員エンゲージメントが組織・人事面の重要業績評価指標(KPI)となっています。

また、管理職もいわゆる業績だけではなく、部下のエンゲージメントが高いということを求められるようになってきています

 

人事領域のエンゲージメントの種類と関係

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人事領域では、「エンゲージメント」と一口にいっても、正確には「ワークエンゲージメント」と「従業員エンゲージメント」の2種類があります。

それぞれの定義や、2種類の関係性について説明していきます。

 

  • 仕事にフォーカスする「ワークエンゲージメント」

「ワークエンゲージメント」は学術的な内容で使われることが多いため、定義もある程度しっかりしています。

たとえば「仕事に対しての活力」「働きがいをもって仕事に没頭している度合いという定義・意味合いです。

 

  • 会社にまで視点を広げる「従業員エンゲージメント」

「従業員エンゲージメント」は、ワークエンゲージメントもそこに含みつつ、さらに「会社」という違う視点が入ってきます。

たとえば「この先もこの会社に残りたいか」「会社の方針に共感しているか」といった項目のように、従業員個人の仕事に対してだけでなく、会社への思いのような「会社視点」が加わります。

 

  • 日本企業にとっての「エンゲージメント」は

日本企業は元々、年功序列や終身雇用などに見てとれるように、会社が社員を守るといった、会社側が上下関係の上の立場という関係性が強かった影響や、自己評価を低くつける日本人の傾向から、従業員エンゲージメントは世界的に見ると、かなり低い数値になっています

従業員側にも、会社に守ってもらうという意識が依然として強く、優秀だが主体性がなく、言われたことしかやらないなど、いわゆる「ぶらさがり社員」が多いといわれてきました。

 

しかし、近年の「働き方改革」をきっかけとして、「社員はどう思っているのか」「従業員の幸せは大事だ」という考えが生まれてきたことで、会社側が、現在の体質を改善しようと考えるようになりました。

こうした変化やニーズに、エンゲージメントはマッチしており、日本でも急速にエンゲージメント向上を求める動きが見られるようになりました。

 

従業員満足度、ロイヤルティとの違いは?

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エンゲージメントとよく似た意味で使われる言葉として、先述した「従業員満足度」や、「ロイヤルティ」という言葉があります。

どれも似たような文脈で使われることが多い言葉ですが、その違いは何なのでしょうか。

 

  • ロイヤルティは会社への貢献意欲に必ずしも結びつかない

ロイヤルティは「忠誠」や「忠実」という意味の言葉で、人事領域でいえば「会社への忠誠心」を測る指標となっています。

エンゲージメントの場合、会社と従業員が対等な関係にあるのに対し、ロイヤルティは、従業員側からの一方的な従属関係を指しています。

 

たとえば、高度経済成長期のように、企業も社会も成長していくような時代においては、従業員が会社から言われたことを忠実に行うことで、「ロイヤルティが高い=会社の成長」へとつながる部分がありました。

しかし、景気が低迷している時代においては、必ずしも業績に寄与するとは限らなくなりました。

むしろ、従業員は会社に守られているという意識によって、仕事はそこそこにこなして、ただ辞めないだけ、という状態を表してしまっている部分すらあります。

 

ロイヤルティはあくまで会社という、主(あるじ)に対する忠誠心ですから、「自発的に貢献しなくても、会社が守ってくれる」というような、ある種の依存的な感覚に陥りがちになってしまいます。

 

まさに、年功序列や終身雇用といった古き良き日本企業における会社と従業員の関係性として、かつて重要であった指標といえるでしょう。

 

  • 従業員満足度ではいつか会社側の限界が来てしまう

従業員満足度もやはり似た言葉として比較される指標の一つ。

従業員満足度は、従業員が給与や待遇、福利厚生など会社の環境にどれだけ満足しているかを測る指標です。

エンゲージメントが自発的な貢献意欲であることとは異なり、従業員満足度は、あくまで与えられたものに対する満足度です。

顧客満足度が企業の業績に影響するように、従業員満足度も高ければ業績につながるだろうと考えられ、注目されるようになりました。

 

しかし実際のところ、従業員満足度はある程度まで達すると、それ以上改善したとしても、必ずしも業績向上につながらないことがわかっています。

人間はある一定の水準までだと「待遇がもっとよくなるようにがんばろう」と考えますが、そこを超えると満足する感覚が麻痺してきます。

つまり「現状は当たり前。むしろもっと与えられてもいい」という感覚になり、がんばらなくなってしまうのです。

むしろ会社と社員がお互いに「こんなにやってあげているのに……」と不満を覚えるようになって、対立するような構造にもなりかねません。

 

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従業員エンゲージメントを高めるメリット

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先でも少し述べましたが、大きなくくりとしての「従業員エンゲージメント」のなかに、「ワークエンゲージメント」がある、という関係にあります。

 

ここからは多くの会社が目指している会社業績との連動を実現するという観点で、「エンゲージメント」=「従業員エンゲージメント」を指すものとして解説していきます。

 

  • 「与える」のではなく「共に目指す」ことで成長路線を着実にキープ

従業員満足度やロイヤルティではなく、エンゲージメントが重要視されるようになった背景には、先述したようにエンゲージメントがその他の指標とは異なり、業績に直結していることが大きな理由になっています。

 

では、エンゲージメントが向上すると、どのような効果があるのでしょうか。

 

エンゲージメント向上の詳細なメリットについてご紹介します。

 

1)離職率の低下

人材不足が叫ばれる昨今、人材流出の程度を表す離職率はどの企業でも気になる数値です。

エンゲージメントが向上することで、この離職率を低下させることができるといわれています。

 

エンゲージメントが高い状態は、企業のビジョンや目標に対して共感している状態であるため、待遇や労働環境の充実以上にその会社にとどまろうとする気持ちにつながるのです。

 

2)生産性向上

エンゲージメントが高い従業員は、会社の目標に対して貢献する意欲が高いため、自発的に行動することが多くなります。

 

従業員一人ひとりが目的意識をもつことで、業務への取り組み姿勢や、業務改善への意識が高まり、業務の品質を高めることにつながっていきます。

 

従業員満足度やロイヤルティが、企業から与えられるものを基準としていた点とは異なり、エンゲージメントは社員が会社のビジョンや目標に対して、主体的に貢献したいと思える状態。

つまり上から下への関係ではなく、パートナー関係にあることで、社員の主体性が高い状態となり、結果的に業績が伸びていくわけです。

 

エンゲージメントを高めるポイント

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  • 人によってエンゲージメントが高まるポイントは違う

仕事を選ぶ時に重視するポイントが人によって違うのと同じように、エンゲージメントが高まるポイントも人によって違います。

チャレンジングな仕事をさせてもらえることでエンゲージメントが高まる人もいますし、人間関係が良いことや、給与が高いということでエンゲージメントが高まる人もいます。

「これさえやれば、みんなエンゲージメントが高まる」という秘策はないということをまず意識しましょう。

 

  • 社員が重視しているものは何なのかをまず知る

人によってポイントが違うということは、エンゲージメントを高めるために、各社員のポイントがどこにあるのかをまず知る必要があります。

社員が会社に求めていることや、働くうえで重視しているものは何なのか、本音を引き出すアンケートやインタビューを行い、どんな結果も受け止める姿勢が重要です。

 

  • 社員が求めるものと現状のギャップがどこにあるかを知る

社員が重視していることのなかには、現状としてそれを満たせていないものあるかもしれません。

そのギャップを埋めようとしないままでは、自発的な貢献意欲をもってもらうことは難しいと言わざるを得ません。

まず、どこにギャップがあるのかについて知っておくこと重要です。

 

  • 経営者、管理職のマインドセットを変える

エンゲージメントを高めようと施策を重ねても、たとえば経営者や管理職に「上司に言われたことをやるのが部下の仕事だ」「上司に逆らうとはけしからん」「業績だけ出していればいい」といった価値観がまかり通ったままでは、ポジションにとらわれない対等な関係や、本音で話し合える場を築くことはできません。

 

上は号令や押印だけ……ではなく、自らも「部下の話を聞くこと」「目標についてきちんと説明すること」「明確な指標をもって評価すること」などについて学び、マインドセットを変えていく必要があります。

 

  • 「自分たちが会社を変えられる」という感覚を育てる

経営者やマネージャーだけではなく、社員のマインドも育てる必要があります。

 

ロイヤルティや従業員満足度とは違って、エンゲージメントは会社が与えてくれるものではないこと。

 

その一方で、いち社員といっても決して無力ではなく、自分たちで会社を変えていけるということを伝えていきましょう。

 

「声を上げても何も変わらない」「上司の言うことには逆らえない」というあきらめは、主体性を損ない、エンゲージメントを下げていきます。

 

そういった社員側のマインドセットを変え、リーダーシップを養っていくのです。

 

 

エンゲージメントは企業と従業員が対等な立場で、同じ方向を向いていくという、これまでにない新たな指標です。

 

これまでの日本企業はここまで述べてきたように、会社側は従業員を従えることが当たり前であり、従業員も会社に依存している部分が多々あったように思います。

それは、世界的に見て日本のエンゲージメントが低いことからも明らかです。

 

しかし、景気が低迷し、会社が必ずしも従業員を守りきれなくなり、同時に働き方改革により、働き方の意識が大きく変わってきています。

そして、コロナ禍という社会変化を経たことで、働き方はまた変わり始めています。

 

新たな働き方が模索されている今、エンゲージメントはこれからの企業を強くするために必要不可欠な指標となるでしょう。

 

今回ご紹介したお話を元に、エンゲージメントを高め、企業も従業員も双方にとって幸せな働き方を見つけていきましょう。

 

 

※State of the Global Workplace - Gallup Report (2017)

 

 

【監修者プロフィール】

監修者(森田英一氏)のプロフィール画像 

森田 英一

beyond globalグループ(シンガポール、タイ、日本)

President & CEO

 

大阪大学大学院 卒業。外資系経営コンサルティング会社アクセンチュア(当時、アンダーセンコンサルティング)にて人・組織のコンサルティングに従事。2000年にシェイク社を創業し、代表取締役社長に就任。主体性を引き出す研修や、部下のリーダーシップを引き出す管理職研修や組織開発のファシリテーションに定評がある。現在は、beyond globalグループのPresident & CEOとして、エンゲージメント向上プロジェクト、企業文化変革、経営者育成、組織開発、次世代リーダー育成、HRテック導入支援、各種プロジェクトを行っている。主な著作「3年目社員が辞める会社 辞めない会社」(東洋経済新報社)「一流になれるリーダー術」(明日香出版)「会社を変える組織開発」(php新書)等。日経スペシャル「ガイアの夜明け」 「とくダネ!」 等メディア出演多数。

 

 

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