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よく耳にする「従業員エンゲージメント」という言葉。

「エンゲージメント」といえば、一般的には婚約指輪(エンゲージリング)などがすぐ思い浮かぶかもしれませんが、ビジネスの場では従業員や顧客との関係性を示すものとされています。

この記事では、人事領域におけるエンゲージメントを対象に、それを向上させることでどのようなメリットがあるのか、また、具体的な施策についてご紹介します。

 

従業員エンゲージメントとは?

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  • 会社と社員が対等な立場で意識する「一緒に歩んでいきましょう」という約束

「エンゲージメント」で一般的に連想されやすいのは、「エンゲージリング」に代表される「婚約」のイメージではないでしょうか。

エンゲージリングは「これから一緒に人生を歩んでいきましょう」と約束をする証。

つまり上下関係ではなく、対等な立場での約束です。

人事領域においても婚約におけるエンゲージリングと同じで、会社と社員が対等な立場でもつ「一緒に歩んでいきましょう」という約束意識のことをエンゲージメントといいます。

 

  • 会社のビジョン・目標達成に向けて、従業員が自発的な貢献意欲をもっている

しかし、この「従業員エンゲージメント」という言葉は、人によって解釈が分かれます。

特に人事領域で使われる場合、全体的なイメージとしては「会社と社員で共に歩んでいく意識」ではありますが、その原動力を「働きがい」だと解釈する人もいれば、「会社への愛着」だと解釈する人もいて、さまざまな要素が含まれているのです。

 

この記事では、従業員エンゲージメントを、『会社のビジョン・目標達成に向けて、従業員がもつ自発的な貢献意欲』であると定義して解説していきます。

 

これは目標やビジョンは会社が掲げているけれど、それに社員も共感して「達成したい」、そういう意味で「一緒に歩んでいきたい」と考えている状態であればあるほど「エンゲージメントが高い状態」ということです。

会社はもちろん、社員もただ単に「言われたから」という受け身ではなく、自発的に同じところを目指している状態であるかどうかについてエンゲージメントは関わってきます

 

※エンゲージメントの定義については下記の記事でも詳しく解説しています。

ご参考ください。

【専門家監修】エンゲージメントとは?その種類と重要性を解説

 

従業員エンゲージメント向上で得られるメリットは?デメリットはある?

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  • 従業員エンゲージメント向上のメリットは数多い

会社にとって、従業員エンゲージメントが向上することには多くのメリットがあります。

その会社のビジョンに共感して主体的に動く人が増えるため、複数の効果が期待できす。

 

1)生産性向上

仕事への意欲が高まることはもちろん、業務改善の提案なども自発的に行われるため、生産性が高まります。

 

2)離職率の低下、採用費の低減

会社へ貢献したいという意欲が高い状態のため、当然ながら離職率も低下します。

欠員補充のための採用費の低減にもつながります。

 

3)戦略実行度の向上

経営陣が打ち出す戦略に社員が納得して、または納得できるまで議論を深めてから取り組むことにつながるため、結果に反映されやすく、戦略の実行度が高まります

 

4)顧客満足度向上

社員が仕事に前向きに取り組むため、商品やサービスの向上にもつながり、顧客満足度も向上しやすくなります。

 

  • 考え方によってはデメリットを感じる可能性もある

このようにエンゲージメントの向上は企業の業績向上のうえではメリットばかりです。

しかし、これまでの日本企業と従業員の関係は、圧倒的に会社が上で、従業員はそれに従うという上下関係が存在していました。

また、従業員もどこか会社に依存していて、主体性に欠ける部分があったことも否めません。

 

そのため、人によっては、エンゲージメントという考え自体が受け入れられないという場合も考えられます。

 

 

たとえば、あくせくせずのんびり働きたい、言われたことだけやれば済む働き方が好き、などと思う従業員などがいた場合は、従業員エンゲージメントを求められ、「より主体的に行動しろ」などと言われると居心地が悪くなる場合もあるかもしれません。

 

経営者や管理職側としても、主体的に会社をよくしようと働く部下をもつということは、自由闊達に意見が出てくるため、場合によっては自分の意見を否定されることにもつながります。

 

ワンマンな考え方をもっている人にしてみれば、部下の反論と向き合う姿勢になかなかシフトできないという場合もあるでしょう。

 

 

このようにエンゲージメントを高めるためには、まず社内の意識改革が必要になる場合も多々あります。

 

現在の企業を取り巻く環境は、業務改善をせずそのままの状態でいれば、競争を勝ち抜くことは難しいですし、管理職や経営者にしても、年功序列制度が失われ、実力主義が浸透してきた昨今では、その地位も安泰とはいえず、さらなる努力が必要になってきます。

 

こうした現状を共有し、エンゲージメントを高める必要性について会社全体から理解を得ることが、エンゲージメント向上には必要不可欠となってきます。

 

こうした施策で変われる人は残りますし、変われない人は去ってしまう……という痛みを伴うことあるかもしれませんが、必要なことなのです。

 

 

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従業員エンゲージメント向上のために知っておくべきこと

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従業員エンゲージメントを上げるためには、まずは自社のエンゲージメントがどのような状態にあるかを把握する必要があります。

エンゲージメント向上の阻害要因となるポイントを見つけ、それらを改善していくことが大切です。

 

 

健康診断で結果が良くない項目があると、その項目の改善方法を調べて「水をこまめに飲もう」「睡眠時間をもっととろう」「タバコはやめよう」といった改善策を実践することはよくあるかと思います。

従業員エンゲージメント調査も会社の健康診断のようなもの。

結果が良くない項目に合わせて「ミーティングのやり方を変えてみよう」「レクリエーションをしよう」といった改善策を考え、実践していくことが重要です。

 

ここでは、従業員エンゲージメントのレベルを測るうえで把握しておきたいことをご紹介します。

 

  • 企業理念やビジョンは浸透しているか

エンゲージメントが高い状態とは、従業員が企業のビジョンや目標に共感している状態です。

では、そもそも、従業員に対して自社の理念がどれほど浸透し、従業員に共感されているでしょうか?

 

共通の理念やビジョンが浸透・共感がない状態では従業員エンゲージメントの向上は難しくなります。

まずは自社の理念・ビジョンの浸透度合いを調査しましょう。

 

  • 仕事へのやりがいは感じられているか

従業員エンゲージメントを向上させるために、仕事に対するやりがいは重要な要素です。

仕事へのやりがいが感じられなければ、個人の強みと業務内容が合っていない、仕事がマンネリ化してきていて成長が感じられないなど、なにかしら問題があるということになります。

 

  • 社内コミュニケーションはどうなっているか

従業員が自発的に行動しても、その行動が上司や周りに安易に否定されたり、素直に発言できない環境になっていては意味がありません。

自発的に行動した結果、その行動が認められる環境がなければ、エンゲージメントは向上しません。

素朴な疑問や上司に対する反論、新しい提案、は受け入れやすいコミュニケーションがあるかどうかも重要なポイントです。

 

  • 社内風土はどうなっているか

どの企業にも脈々と築き上げてきた風土や慣習があるもの。

こうした慣習はエンゲージメント向上にも役立ちますが、悪しき慣習は別の話。

 

上司が部下にダメ出しするだけで褒める文化がない、失敗したときに上司が守ってくれるのではなく、部下に責任を押し付けるなど、従業員に負担をかける悪習はないか、触れてはいけない問題として放置されているものはないか、さまざまな角度から企業の風土や慣習を見直しましょう。

 

  • ワークライフバランスは取れているか

従業員が前向きに自発的に業務に取り組むことと、寝る間も惜しんで仕事をし続けることは違います。

まして、それが無理やり詰め込まれたものだとしたら大きな問題です。

従業員が適切に休息を取って、余裕をもって働ける環境でこそ、エンゲージメントは高まります。

 

 

その他にも知っておきたい項目はありますが、大事なことは立場にとらわれず、あらゆる視点から企業の現状をチェックすること。

上下関係のない、対等な立場に立つためには、さまざまな角度からチェックしなくてはなりません。

 

従業員エンゲージメント向上のための7つの施策

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前述により、エンゲージメントを向上させるために事前に把握すべきことがわかったら、次は具体的な改善施策を練り、実行していきます。

 

ここでは、具体的な従業員エンゲージメント向上施策についてご紹介します。

 

  • 成功体験で社員のリーダーシップを育てる

「自分が何かしても、会社はどうせ変わらない」という思い込みは、社員のエンゲージメントを下げてしまいます。

そのため、たとえば経験の浅い若手社員であっても、意見を述べてそれを受け止めてもらえた、聞いてもらったことで改善した、という成功体験をもたせることが重要です。

 

「自分が動くことで何か影響を及ぼせるかもしれない」と思わせることは高いエンゲージメントにつながります。

ある種のオーナーシップ、リーダーシップを社員にもってもらうことが大事です。

 

  • それぞれの個性に合わせたタレントマネジメントを

適材適所はかなり重要なことです。

自分に合った仕事をすることは、その人の貢献感を高めることにもつながっていきます。

 

社内にどんな人材がいるかをきちんと理解・整理して、ふさわしい業務を割り振ることが大切です。

 

 

また、自分に合う仕事で高いエンゲージメントを保っている人でも、長期間同じことしかやらせてもらえなかったら、エンゲージメントは下がってしまうかもしれません

本人の資質や希望を見極め、キャリアプランまで意識して、「誰に、いつ、何をやってもらうか」という戦略的なタレントマネジメントを行っていきましょう。

 

  • 会社の方針実現したいビジョンを発信する

従業員エンゲージメントを高めるためには、会社のビジョン・目標に対して社員に共感してもらうことがポイントになります。

認識してもらうだけでなく、共感を得るまでには一度見せるだけでは不十分です。

会社がどこへ向かっているのか、何を実現したいのか、そのためにどういう戦略をとっているのかということについて、折りに触れて何度も発信をすることや、従業員側からの疑問や質問に丁寧に答えていくことが大事です。

 

  • 11で「部下のためのミーティング」の時間を取る

より開放的な人間関係を築くための施策として、11での「部下のためのミーティング」の時間を取ることを勧めています。

 

これは「1on1ミーティング」などといわれ、上司があれこれ指示を出したり、仕事の進捗確認をしたりするミーティングではなく、部下が話したいこと、悩んでいることや困っていること、上司に知っておいてほしいことなどを聞くミーティングです。

緊急性は低いかもしれませんが、部下の成長や会社と従業員のベクトル合わせのためには重要な機会です。

一度きりではなく定期的にセッティングして、業務の都合がつかないときにもパスではなく、リスケジュールで対応するようにしましょう。

 

  • 管理職に対して「360度フィードバック」を取り入れる

上司だけではなく、部下や同僚からのフィードバックも得られる「360度フィードバック」も有効な施策です。

匿名アンケートで行うのが一般的ですから、たとえば部下から「あなたは仕事への責任感は強いが、自分で仕事を抱えすぎて我々部下を信用していないのではないか?」や、「表面的には優しいが業務指示がやや雑で丸投げが多くて困る」といった忖度のないフィードバックも出てくるわけです。

今まで、フィードバックといえば上から下へ一方的に行われることばかりでしたから、こうして同僚や部下のフィードバックが目に見えることによって、管理職本人の意識が変わるきっかけになるでしょう。

 

  • 自ら仕事が選べるような仕組みを作る

上司は「部下を見込んで仕事を任せる」つもりでも、部下本人は「自分で選んだ仕事でもないし」と消極的で、エンゲージメントが高まらないといったことも実際はあります。

そこで、社内公募制などを立ち上げて「今このポストが空いています」「こういった人を募集しています」といった案件に社員自ら応募できる仕組みを作るのも良いでしょう。

ちなみに、従来の異動希望のように上司を通す必要がないシステムにしておけば、人間関係に悩みを抱えている人も応募しやすくなります。

自分で主体的に仕事を掴み取れる仕組みがエンゲージメント向上には重要です。

 

  • 人間関係を円滑にする「ちょっとしたインセンティブ」を

従来の賞与のように会社から支給するのではなく、従業員間で贈りあう「ピアボーナス」もエンゲージメント向上に良い影響を与えます。

ピアボーナスは、「Peer(仲間や同僚)」と、「Bonus(報酬)」で構成された言葉で、たとえば同僚の業務サポートに対してポイントや社内通貨などの少額の報酬を贈り、受け取った側はそれを景品と交換したり、換金したりできるシステムのことです。

 

感謝の気持ちを示すことで人間関係を円滑にしたり、他の社員から人事評価には表れない評価をしてもらえたりすることで、金額を超えたインセンティブが生まれ、エンゲージメントを高めていくことにつながります。

 

 

従業員エンゲージメント向上を図ることで、企業の業績アップはもちろん、従業員の業務に対する満足度も向上し、それがまた業績アップや顧客満足度の向上へとつながるなど、ポジティブな連鎖が起きていきます。

 

しかし、そのためにはさまざまな面での企業の改善が必要になってきます。

従業員のエンゲージメントを高めるためには、まずは上司や経営者が従業員のことをしっかり見て、従業員のために行動することが大切です。

エンゲージメントを高めるポイントを学び、対等な立場で企業の成長を図っていきましょう。

 

 

【監修者プロフィール】

監修者(森田英一氏)のプロフィール画像 

森田 英一

beyond globalグループ(シンガポール、タイ、日本)

President & CEO

 

大阪大学大学院 卒業。外資系経営コンサルティング会社アクセンチュア(当時、アンダーセンコンサルティング)にて人・組織のコンサルティングに従事。2000年にシェイク社を創業し、代表取締役社長に就任。主体性を引き出す研修や、部下のリーダーシップを引き出す管理職研修や組織開発のファシリテーションに定評がある。現在は、beyond globalグループのPresident & CEOとして、エンゲージメント向上プロジェクト、企業文化変革、経営者育成、組織開発、次世代リーダー育成、HRテック導入支援、各種プロジェクトを行っている。主な著作「3年目社員が辞める会社 辞めない会社」(東洋経済新報社)「一流になれるリーダー術」(明日香出版)「会社を変える組織開発」(php新書)等。日経スペシャル「ガイアの夜明け」 「とくダネ!」 等メディア出演多数。

 

 

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