事業に大きく貢献し、会社が必要とする社員が退職してしまうと、会社は非常に大きなダメージを負うため、できれば会社に留まって欲しいものです。
そこで今回は、辞めて欲しくない成果を上げていた社員が辞める理由を考察し、辞めて欲しくない人に長く働いてもらうための対策をご紹介します。
■辞めて欲しくない人が辞めてしまう理由
株式会社リクルートマネジメントソリューションズは、「若手・中堅社員の転職意向実態調査」を行い、「若手・中堅社員515名に聞く、転職に踏みきった理由・踏みとどまった理由」として考察しています。
この調査結果から、成果を上げていた社員が転職を検討したときの理由がわかりました。
●成果を上げていた社員の退職理由
調査対象となったのは、25~32歳で従業員300名以上の企業の正社員、入社4年目以降の若手・中堅社員です。そのなかで、成果を上げていた社員の退職理由を見てみましょう。
<退職の理由>
1位 仕事の領域を広げたかった(42.7%)
2位 生活の変化に応じて働き方を見直したかった(35.6%)
3位 会社の将来に不安を感じた(31.4%)
それぞれの退職理由に対するコメントは、次のとおりです。
○「仕事の領域を広げたかった」と回答した人のコメント
・同領域の業務を5年担当したので、他の業務領域も広げたい(情報処理・ソフトウェア/男性)
・専門的な知識を身につけたので、別の世界で生かしてみたい(金融・保険/女性)
・ある程度の満足を得ており、他業界で次のスッテプを踏みたい(金融・保険/女性)
○「生活の変化に応じて働き方を見直したかった」と回答した人のコメント
・子供ができたので、土日休みが良いと思った(その他サービス/男性)
・夫の転勤があっても、転勤先で働ける地域限定の職種に転職したい(金融・保険/女性)
○「会社の将来に不安を感じた」と回答した人のコメント
・会社の上司の考え方に賛同できず業界の今後に不安を覚えたから(その他製造/男性)
・経営方針の転換や、属していた部門が時勢もあり今後縮小、廃止の方向性だったため(建築・設備/女性)
成果を上げていた社員の転職の理由の1位は、自分の可能性を高めたいというものやスキルアップをしたいというものでした。そして2位にはライフスタイルの変化による理由が挙げられています。
これらを解消できれば、辞めて欲しくない社員に自社で働いてもらうことができます。近年では、働き方改革とともに、企業ごとに、さまざまな対策が取られています。下記で詳しく見てみましょう。
■辞めて欲しくない人に長く働いてもらうための対策
会社にとって辞めて欲しくない人材の退職は企業にとって大きな痛手です。企業としてはなんとしてでも引き止めたいところですが、本人のステップアップのためだと考えると、無理に引き止めることもできません。
そこで、もっとこの会社で働いてみたいと思わせるような対策を講じることが必要となります。
●社員とのコミュニケーションをとる
まずは、社員がどのようなことを考えているのかを把握することが大切です。対策を講じるにも、社員が「新しいことに挑戦したい」と思っているのか、「働き方を見直したい」と思っているのかで、まったく変わってきます。
また、相談を受けるにしても、日頃のコミュニケーションがなければ、社員が本心を話してくれることはありません。社員に長く働いて欲しいと思うのであれば、日頃のコミュニケーションをおろそかにしないようにしましょう。
●社員を新たなことに挑戦させる
「新たな領域に挑戦したい」「別の業界を経験してみたい」という理由で退職する社員に有効です。社内で別の部署に異動させる、兼務として新たな仕事に挑戦させる、新しいやりかたを試してみることで、他社に人材が流れることなく、社員の要望に応えることができます。
最初は慣れない仕事で苦戦するかもしれませんが、別の仕事をすることによって新たな気づきが生まれ、新たなビジネスチャンスにつながる可能性もあります。
●多様な働き方を受け入れられる環境をつくる
社員自身も辞めたくはないものの、家庭の事情から、今の会社の規則のなかで働くことが難しいという場合があるかもしれません。
本当に辞めて欲しくない社員がいるならば、その社員がどうしたら会社を辞めずに、高いパフォーマンスを発揮できるかを考えてみましょう。近年では、システム的なサポートができれば、リモートワークやフレックスなどで働く環境や時間を選択できるようになってきています。
日頃のコミュニケーションで社員の考えを把握しよう
成果を上げている辞めて欲しくない社員の退職は、自身のキャリアアップやステップアップを考えているケースが多いことがわかりました。そういった優秀な人材は、自身と会社の将来を見通し、日々さまざまなことを考えているものです。
「前兆がなく突然の退職の申し出」で驚いてしまった、引き止められなかったとならないよう、日頃からコミュニケーションをとることを意識しましょう。社員の考えやコンディションを把握していれば、退職の前兆にも気づき、また退職の意向を示されても、適切な対応で企業にとって大きな損失を回避することができるでしょう。