優秀な社員は、企業の収益を大きく左右する存在と言えます。しかし、優秀な社員ほど早く辞めてしまうと嘆いている人事担当者や経営者も多いのではないでしょうか。
それでは、なぜ、優秀な社員が辞めてしまうのでしょうか。優秀な社員の退職理由や退職の兆候を確認しておきましょう。
■特に優秀な社員が辞める理由
終身雇用が崩壊し、雇用の流動化が叫ばれています。企業側も、社会の変化に合わせ、新しい技術やサービスを取り入れていかなければなりません。そのため、即戦力として活躍してくれる優秀な社員を募集しているという企業が増えているということもあり、優秀な社員ほど現在の会社を辞めても次の選択肢が多くあるといえそうです。
そのようななか、特に優秀な社員が辞める理由としては、次のようなものが挙げられます。
●やりたいことができる環境に移りたいから
社員のなかで、知識やスキルの違いから、職場内で特定の社員に仕事が集中してしまうということが発生します。周りの社員や上司も甘えて、厄介な仕事は優秀な社員に任せてしまうということが多くなり、ほかの社員と仕事を分担したり、交代したりすることができない状況が発生してしまいます。
すると、特定の社員にだけ仕事が増え、長時間労働を強いられることになってしまいます。本来ならばチャレンジングな仕事に時間を使いたいと考えていたところ、その時間も奪われてしまうことになり、優秀な社員はもっと働きやすく、やりたい仕事ができる環境に移ろうと決意することになります。
●ヘッドハンティングされ、魅力的な仕事を提示されたから
優秀な社員は、取引先や関係する企業からも優秀な人だと認められていることがあります。業績を残しているため、他社から見ても客観的な数字で優秀さを測ることができます。そのため、ほかの企業や人材紹介会社からヘッドハンティングされる可能性も高まります。優秀な社員に来てもらえるように、誘う側の企業は、良い条件や働きやすい環境を用意しています。
優秀な社員は、現在の仕事がこなせるようになったからといって満足することはありません。たとえば、次のようなポジティブなことを考えている人が多いのが特徴です。
- よりスケールの大きな仕事をしたい
- より専門的な知識やスキルを習得したい
- 新たな仕事にチャレンジしたい
プライベートだけでなく、仕事にも「満足」を感じたいと思う優秀な社員ほど、「キャリアアップ」に関する理由により退職を決意します。
また、スキルのある優秀な社員ほど他の会社からも必要とされており、社員自身も同じ環境で同じことを続けるのではなく、あたらしい知識や技術を身に付けたい、より成長したいと思うため、退職を考える可能性があるようです。
■社員が会社を辞めることを考えたときにとる行動
社員が退職を考えている時には、次のような兆候が見られます。
- 定時で帰ることが増える
- 遅刻や早退、有休の消化が明らかに増える
- 私用の電話など離席することが増える
- 同僚や後輩への仕事の共有が増える(引継ぎ)
- スーツやジャケットなどを着用して出社することが増える
- 会議での発言、同僚との会話が減る
これまで熱心に仕事をしていた社員が、定時で帰ることが増えたり、休みがちになったりした場合、転職活動を行っている可能性があります。また、あきらかに積極性がなくなり、「仕事に集中していない」「モチベーションが下がっている」というように態度に表れることもあります。
社外に気になる企業や関わりたい仕事を見つけたサインかもしれません。上司や同僚は、普段の言動との違いに気づけるように、日頃のコミュニケーションをとることが必要です。
■優秀な社員を辞めさせないための対策
優秀な社員を逃さないためには、社員が企業に求めていることを把握し、環境を整えることが必要です。社員が企業に求めていることと企業ができる取り組みについて解説します。
●社員の求める項目
○会社貢献に応じた評価
優秀な社員は、成果や貢献度を踏まえ、昇給や昇進などを検討する合理的な評価制度の導入を求めています。
シンプルでわかりやすく、評価基準や評価項目、評価対象などが公開されていることが最低限必要となります。また、社員からの異議申し立てができるように、評価再検討委員会などを設ける必要もあります。
○仕事の幅の拡大、成長の機会
一つの職務だけでなく、たとえば開発と人事職、企画と営業職という部署を掛け持ちしたり、複数のプロジェクトに携わったりすることで、幅広い視点を持ちたいという社員もいます。
複数の仕事に挑戦させ、成長の機会を与えましょう。キャリアアップの希望を叶えるために、セミナーへの参加費用の負担や資格手当の導入など、さまざまな施策を行うことも大切です。
○裁量権の付与
仕事において、裁量権を与えられ、自分の考えた内容や意見をもとにプロジェクトを進め、自分の力を試してみたいと考えている社員もいます。
社員にある程度の裁量権を与えることで、モチベーションアップにつながり、社員の成長につながるということもあります。
社員の退職の兆候や理由を理解して改善を
企業の成長や業績にもかかわる優秀な社員は、企業で長く活躍してほしい人材でもあります。優秀な社員に長く働いてもらうために、退職を考えている社員の兆候や退職理由を理解し、社内で改善できるポイントはないかを人事担当者は考えてみる必要があります。