カテゴリー: 人事基礎知識

毎年様々な書籍が発売され、話題を集めます。今回はAmazonが選出するビジネス書大賞に注目し、今、人事が読むべきビジネス書について紹介します。ここ最近忙しく、あまり読書ができていないという方、また、仕事に役立つ読み応えのある本を探しているという方、参考にしてみてください。

【Amazonビジネス書大賞2019】に受賞作・ノミネート作として選出されたのは8冊。そのなかで、今人事が読むべき1冊は『ティール組織』です。

Amazonビジネス書大賞とは

「Amazonビジネス書大賞」は1年間を代表するビジネス書を選出・表彰する日本初のビジネス書アワードです。

「ビジネス書のプレゼンスをさらに大きなものとすることで、出版業界の活性化に貢献するとともに、日本のビジネスパーソンの成長、ひいては日本のビジネス界の発展に貢献する」ことを目的に、2009年10月に創設されました。

2010年に第1回を開催し、以後年に1度、業界をあげての賞イベントとして実施されています。今回注目する2019年は、第10回目の開催となりました。

 

※この賞におけるビジネス書とは「ビジネスパーソンにとって学びや気づきがある本」と広く定義し、単行本・新書等の体裁や実用書・文芸等のジャンルにはこだわらないとしています。賞の選考は、経営者、書店員、書評家、出版社、マスコミの代表と一般読者の投票によって行われます。

 

▼上記文章の出典およびAmazonビジネス書大賞についての詳しい情報は下記をご覧ください。

https://www.amazon.co.jp/b?ie=UTF8&node=5026826051

 


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②受賞作&ノミネート作紹介

受賞作とノミネート作について、見ていきましょう。受賞作の紹介では、まず【大賞】と【読者賞】を紹介。【経営者賞】に関してはのちほど取り上げます。

●【大賞】AI vs. 教科書が読めない子どもたち

新井紀子(2018)『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』 東洋経済新報社

 

AIとGeppo

新井紀子氏(国立情報学研究所教授)によるAI関連の書籍がAmazonビジネス書大賞2019、大賞を受賞しました。ちまたで騒がれている憶測のAI進化論に振り回されるのではなく、文章を読む力を失いつつある現代の子どもたちの学力低下に向き合うべき、という問題提起をしている1冊です。

著者である新井氏は東大の入試を突破できる知能を持つAIを開発するなかで、AIの限界が「読解力」にあることに行きつきます。しかし、そのかたわらで行った全国の中高生に対する読解力テストで、子どもたちの読解力が著しく衰えていることが明らかになったのです。

新井氏は将来、人の仕事がAIにとって代わられるのは、AIが進化するからではなく、人間が読解力を失うからだと訴えています。この本では、私たちがAIの進化よりも先に直視すべき問題が取り上げられています。

 

<Amazonページ>

https://www.amazon.co.jp/gp/product/4492762396/

 

●【読者賞】the four GAFA 四騎士が創り変えた世界

スコット・ギャロウェイ(2018)『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』(渡会圭子訳)東洋経済新報社

GAFAとGeppo

いつ頃からかつかわれるようになったGAFA(Google, Apple, Facebook, Amazon)という言葉を全世界に広めたといえる1冊。今ではこの書籍を追随する形で「GAFA」を並べ、解説する書籍が書店に数多く並んでいるほどです。

本のなかで触れられているのは「GAFAはなぜ、これほどの力を得たのか」、「GAFAに共通するものとは何か」、「GAFAは世界をどのように創り変えたのか」、そして、「GAFAに続く5番目の存在は現われるのか」ということです。

著者はニューヨーク大学スターン経営大学院教授で、シリアルアントレプレナー(連続起業)としても有名なScott Galloway(スコット・ギャロウェイ)氏。世界経済を牛耳る4つの巨大企業の形を再認識できる1冊は、多くの読者からの支持を集め、読者賞を受賞しました。

 

<Amazonページ>

https://www.amazon.co.jp/gp/product/4492503021

 

●ノミネート5作

・伊藤羊一(2018)『1分で話せ 世界のトップが絶賛した大事なことだけシンプルに伝える技術』 SBクリエイティブ

プレゼンや対人コミュニケーションにおいて、「1分で話す」ということがいかに重要かをまとめた1冊。著者はヤフーアカデミア学長やグロービス講師を務める伊藤羊一氏。

<Amazonページ>

https://www.amazon.co.jp/dp/4797395230

 

・落合陽一(2018)『日本再興戦略』 幻冬舎

研究者、メディアアーティスト、実業家などさまざまな肩書きでメディアの注目を集める落合陽一氏の著作。テクノロジー、政治、経済などのテーマを切り口に、日本のあり方を見つめなおす1冊。

<Amazonページ>

https://www.amazon.co.jp/dp/4344032179

 

・ユヴァル・ノア・ハラリ(2018)『ホモ・デウス : テクノロジーとサピエンスの未来』 河出書房新社

全世界での発行部数が1200万部を突破した『サピエンス全史』に続き、Yuval Noah Harari(ユヴァル・ノア・ハラリ)氏が世に送り出した未来予測。記されているのは、「人類がどこへ向かうのか」。

<Amazonページ>

https://www.amazon.co.jp/dp/4309227368

 

・樺沢紫苑(2018)『学びを結果に変えるアウトプット大全』 サンクチュアリ出版

精神科医で作家である樺沢紫苑氏がアウトプットの重要性を説く1冊。新たに学んだことを自分のものにするには、アウトプットが必要だということ、また、その練習法が示されています。

<Amazonページ>

https://www.amazon.co.jp/dp/4801400558

 

・株式会社アンド(2018)『ビジネスフレームワーク図鑑 すぐ使える問題解決・アイデア発想ツール70』 翔泳社

ビジネスで使える70種のフレームワークが収録されているツール図鑑。手がけたのは企画立案コンサルティングなどを行う株式会社アンド。購入者はフレームワークをPPTデータでダウンロード可能。

(無料ダウンロード・要出版社ページでの会員登録)

<Amazonページ>

https://www.amazon.co.jp/dp/4798156914

 

③人事が読むべき1冊は『ティール組織』

ここまでAmazonビジネス書大賞2019の受賞作およびノミネート作を紹介してきましたが、人事が読むべき1冊として注目したいのは【経営者賞】を受賞した『ティール組織――マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現』です。

経営者から多くの票を集めたという1冊ですが、組織づくりに関わる人事にとっても必読の1冊です。

 

●【経営者賞】ティール組織――マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現

フレデリック・ラルー(2018)『ティール組織――マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現』(鈴木立哉訳、嘉村賢州解説)英治出版

 

ティール組織とGeppo

この本を記したのはFrederic Laloux(フレデリック・ラルー)氏。マッキンゼーで10年以上にわたり組織変革プロジェクトに携わったのち、エグゼクティブ・アドバイザー、コーチ、ファシリテーターとして独立した組織づくりのスペシャリストです。

著者は変化の激しい時代における組織のあり方を色で定義し、新しい組織論として再構築しました。そしてその内容がまとめられた著書のなかで、新しいマネジメント手法を採用する組織のことを「進化型組織/ティール(青緑色)組織」と名づけたのです。

今回はその内容から特に人事に関わりの深い内容を一部抜粋し、紹介します。

 

●変化する組織モデル(第1章 変化するパラダイム より)

ティールに至るまでに人類は6つの組織モデルを経験してきました。それらは下記のような流れをたどって、最良の形であるティールへと進化したのです。

 

▼無色

▼マゼンタ(神秘的)/世界の中心は自分であり、物事の因果関係が不明確で神秘的な組織。

▼レッド(衝動型)/力・恐怖により支配された組織。単純な因果関係により物事が成立。

▼アンバー(順応型)/時間の流れを理解したことで、計画が可能になった組織。

▼オレンジ(達成型)/科学技術の発展と、実力主義の誕生。効率的で複雑な階層組織。

▼グリーン(多元型)/多様性・文化・平等を重視するコミュニティ型組織。ボトムアップ式。

▼ティール(進化型)/自己経営と全体性、存在目的を重視する生命体型組織。

 

●ティールとは(第3章 進化型 より)

上記のような流れを経て、たどり着いたティールとは一体どんな組織なのか。同書のなかでは次のように説明されています。

ティールでは、意思決定の基準が外的なものから内的なものへと移行する。(中略)ティールパラダイムでは、内面の正しさを求める旅を続けると、自分が何者で、人生が何か、という内省に駆り立てられる。(中略)ティールパラダイムでは、人生とは自分たちの本当の姿を明らかにしていく個人的、集団的工程と見られている。

    ※『ティール組織――マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現』P73-76より引用。

 

さらに同書のなかでは、ティールは自分の内側にある正しさを意識することで、自身のエゴからも外的評価からも解き放たれることだと説明されています。また、ティールでは個ではなく全体性(ホールネス)という要素が重視されるとしています。

周りからの評価に振り回されることはない一方で、自分という個に固執することでもない。そのような考えのもと、自分が所属する組織を1つの大きな生命体として捉えることで、個としても集団としても成長していける進化型(ティール)組織になれるとまとめられています。

 

●ティール的人事(第5章 全体性を取り戻すための努力/人事プロセス より)

1つの生命体であるティール組織において、人事の仕事はどのようなものになるのでしょうか。同書のなかでは、採用やオンボーディング、キャリア・プランニングといった人事分野の項目についても触れられています。具体的な内容としては次の通りです。

・ティール組織は採用プロセスにおいて、企業と求職者、互いが本来の姿を見せあえるように努力している。採用プロセスに多くの時間が費やされ、人事は求職者に己を知る機会を提供する。

・オンボーディングは新入社員にとって全体性(ホールネス)を養う時間。ときには1ヶ月間~4ヶ月間をかけて、新メンバーは会社全体を知る。人事は新メンバーが全体の一部になれるよう、情熱を注ぐ。

・キャリア・プランニングにおいて人事が担うのは、職務内容や役職を個人から引きはがすこと。型にはまったやり方や肩書きを遠ざけることで、各従業員は自分の方法を考えて仕事に取り組み、他のだれでもない自分の存在価値を発揮できるようになる。

 

上記のようにティール組織における人事の役割は従来の組織で取り組んできた内容とは明らかな差異があります。しかし、上記のような働きは今所属している組織においても好影響をもたらす予感を感じさせるものではないでしょうか。ティールは新しい考え方であり、普遍的な価値観なのです。

 

④まとめ

今回は「Amazonビジネス書大賞2019」の受賞作およびノミネート作を紹介し、なかでも経営者賞を受賞した『ティール組織――マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現』について、フォーカスしました。

 

『ティール組織』のなかに度々登場する「個」と「全体」を行き来する表現は、人材1人1人と組織全体を見渡す人事にとって、ある意味でなじみ深いものかもしれません。人事個人として、また、企業の一員として、新しい組織のあり方を学ぶのに最適な1冊になることでしょう。


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